人生をかけた野球への情熱──楽天・安田悠馬捕手の成長と挑戦の軌跡
2024年6月、プロ野球界の一角から注目を集めている一人の選手がいる。東北楽天ゴールデンイーグルスの捕手、安田悠馬(やすだ・ゆうま)。現在24歳の彼は、首脳陣からの期待も厚く、次代の楽天を担う捕手として大きな期待を背負ってグラウンドに立っている。
この記事は、安田悠馬捕手がどのような経歴を歩み、現在どんな成長を遂げているのか、そして今後の展望について迫るものである。
宮崎から上京──高校時代から光り輝いた素質
安田悠馬は2000年〈平成12年〉3月生まれ、宮崎県の出身だ。実直で温かい風土に育まれたこの地で、少年時代から野球に情熱を注ぎ、小学・中学時代からすでに頭角を現していた。やがて彼は強豪・鶴岡東高校に進学。当時からすでに体格とパワーに恵まれ、「逸材」と騒がれる存在だった。特に打撃面では早くから「高校最強クラスのスラッガー」と評され、全日本高校野球選抜にも選ばれている。
高校通算本塁打は実に35本以上。当時からインパクトのある構えとフルスイングを武器に、プロのスカウトの目にも留まっていた。
しかし、意外にも彼は高校卒業後すぐにプロ入りする道は選ばなかった。さらなる実力の向上と、捕手としての完成度を高めるため、彼は日本大学(通称・日大)に進学。ここでの4年間は、彼にとっても大きなターニングポイントになる。
大学野球で磨かれた野球観と受けの技術
日大では捕手としての技術を本格的に磨いた。強肩・強打の捕手というだけでなく、リード面、配球の読み、投手陣とのコミュニケーション……さまざまな視点でチームを支える「頭脳派捕手」への成長を彼は自らに課した。
大学ではリーグ首位打者を獲得するなど、打者としての実力も引き続き見せつけたが、それ以上にプロの世界で求められる「総合力」を意識した取り組みが続いたという。大舞台での勝負強さも見せ、大学日本代表にも選ばれている。
プロの世界へ──楽天からのドラフト2位指名
2021年のドラフト会議で、安田は楽天からドラフト2位指名を受け、晴れてプロの世界へと飛び込んだ。球団側は「将来、球界を代表する捕手になれる逸材」として高評価をしていた。特に、その強烈なスイングと、捕手としての落ち着きが評価されていた。
プロ1年目から2軍では打撃成績を残し続け、ファームでのホームラン数、打点などで上位に食い込み、一軍昇格も果たした。やがて一軍でも徐々に起用が増え、その都度、しっかりと成績で応えている。
注目を集めた「嶋基宏への想い」とキャリア形成
ここで、彼の“捕手としての成長の鍵”を語る上で欠かせない人物がいる。元楽天の正捕手にして、その後ヤクルトでも活躍した嶋基宏(しま・もとひろ)氏である。
嶋基宏氏は、楽天初の日本一となった2013年の中心人物であり、リーダーシップと配球の妙、高い野球IQを持つ球界きっての頭脳派捕手だった。その姿に憧れた安田少年は、地元・宮崎からテレビで嶋のプレーを見て、プロ野球捕手を本格的に意識し始めたというエピソードが残る。
その憧れの嶋と、楽天入団後にユニフォームを通して“間接的に”交差する──。これは彼にとって運命的な出来事だった。
数年前に現役を引退し、現在は指導者の道を進んでいる嶋氏だが、多くの若手捕手が「嶋のようになりたい」と今でも口にする中、安田も自らのリーダーシップを鍛えるべく、一試合一試合に真剣に向き合っている。
チーム内で高まる評価──正捕手候補としての存在感
2024年に入り、楽天は若手の台頭を積極的に進めている。その中で、安田が一軍の試合にスタメンマスクを被る機会が増加。投手陣からの信頼も厚くなり、特に先発投手との相性はデータ上でも安定している。
「リードの安定感が出てきた」「インサイドの攻めも恐れない」「声かけが的確で、投手が安心して任せている」──楽天の首脳陣や関係者からも、安田の成長を物語るコメントが日々増えている。
また、打撃面でも勝負強さを発揮し、「打てる捕手」としても存在感を強めている。彼のスイングには大学時代から定評があり、長打力ばかりでなく状況に応じたバッティングができるのが魅力だ。
今後の課題と目標──“嶋を越える”受け継がれる魂
もちろん、これからが本当の勝負である。捕手としてレギュラーを確立するには、年間通してのコンディショニング、怪我の管理、安定した打撃成績、投手陣との継続的な信頼構築などが必要不可欠だ。そして“嶋2世”と呼ばれるには、ただ実力を維持するだけでなく、野球を超えた「チームの象徴」としての進化も求められる。
安田自身も、インタビューで「もっともっと上を目指したい。嶋さんのように投手から信頼される捕手になれるように、一日一日を大事にしている」と語っている。
今後、彼が楽天の中心選手としてどのようにチームを牽引していくか。そしてプロ野球界を代表する正捕手への道を歩むか──それは彼のこれからの“努力の結晶”によって形作られるだろう。
眼差しは未来へ、闘志は今に宿る。楽天の背番号65番、安田悠馬の挑戦は、まだ始まったばかりだ。