経済

タミヤのロゴ制作 田宮督夫氏死去――ツインスターが教えてくれた普遍のデザイン

タミヤのロゴ制作 田宮督夫氏死去――ツインスターが示した、強く優しいブランドのかたち

赤と青のツインスター。プラモデルやRCカーの箱を前に胸が高鳴った人なら、そのエンブレムを見ただけで手のひらが当時の感触を思い出すのではないでしょうか。報道により、タミヤのロゴ制作に関わった田宮督夫氏の訃報が伝えられました。心よりお悔やみ申し上げます。ここでは、特定の立場に偏らず、あのロゴが私たちにもたらした体験と、これからのものづくりに活きる学びを静かに振り返ります。

「覚えられる」ことは、最高の機能である

優れたロゴは、装飾ではなく機能です。ツインスターは色・形・コントラストが極めてシンプルで、遠目でも判別でき、白抜きの星が象徴的な記憶のフックになります。子どもが手描きで再現できるほど簡潔でありながら、玩具の楽しさや挑戦心、信頼感まで一度に喚起する。その“覚えやすさ”こそが、長く愛される最大の理由でした。

小さくても、確かに届くデザイン

模型箱の側面やパーツ袋の隅に載っていても、ロゴは存在感を失いません。これは縮小耐性(スモールサイズの視認性)を徹底した成果です。繊細な線や複雑な色分解に頼らず、最小限の要素で本質を伝える。デジタル時代のアイコンやアプリのロゴにも通じる普遍的な原則です。

「期待」と「責任」をつなぐブリッジ

ロゴは約束のしるしでもあります。品質への期待、組み立てる楽しさ、完成させる喜び。それらを裏切らない製品体験があって、はじめてロゴは誇り高いシンボルになります。ツインスターは、作り手の責任感と使い手の期待を長く結び続けてきました。

今日から実践できる、ロゴづくり5つのヒント

  • 要素を減らす:色は2色まで、形は1〜2形状に絞る。
  • 縮小テスト:名刺幅・アプリアイコン・モノクロでの再現性を必ず確認する。
  • 記憶テスト:第三者に一瞬見せ、10秒後に描いてもらう。
  • 用途想定:箱・ウェブ・刺繍・刻印など、媒体の制約を設計段階で織り込む。
  • 物語を持たせる:ブランドの価値や姿勢を一言で言い表すキーワードを決める。

ビジネスへの示唆:ブランドは「積み重ね」の産物

象徴的なロゴが一夜にして確立されることはありません。製品の丁寧な作り、ユーザーとの対話、コミュニティの熱量、その積み重ねがシンボルに意味を宿らせます。リブランディングや新規事業でも、まずは製品と体験の質を磨き、そのうえでロゴという“旗”を掲げる順序が大切です。

個人的な記憶と、これからの学び

多くの人にとってツインスターは、はじめての工具の手触りや、家族と過ごした時間、完成したときの誇らしさと結びついています。デザインは、生活の中の小さな成功体験と結びついたとき、真の力を発揮します。田宮督夫氏の仕事から私たちが受け取ったのは、派手さではなく、長く寄り添うための誠実な設計でした。その精神を、次のデザインやプロジェクトに生かしていきたいものです。

学びを深めるためのおすすめ書籍

  • なるほどデザイン(視覚と言葉で基本がつかめる入門書)
  • ノンデザイナーズ・デザインブック 第4版(反復・整列・近接・対比の原則が身につく)
  • ロゴの見本帳 改訂版(多様な実例から発想を広げる)

上記の書籍は以下のリンクからチェックできます。ロゴやブランドづくりに携わる方はもちろん、趣味の制作でも大きなヒントになるはずです。

error: Content is protected !!