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急坂持つ「酷道」がSNSで再び脚光 — なぜ人々は魅了されるのか
日本各地には、「国道」という名前がついていながら、通るのが困難だったり驚くほどの険しさを持つ道路が存在します。そうした道路はいつしか「酷道(こくどう)」と呼ばれるようになり、一部の愛好家たちの間で密かな人気を集めてきました。そして今、SNSを中心として、その「酷道」が再び大きな注目を浴びています。
この記事では、「酷道」というユニークな存在がなぜ人々を惹きつけるのか、その魅力と背景に迫りながら、最新の盛り上がりについて詳しくご紹介します。
■ 「酷道」とは何か?
そもそも「酷道」とは、本来整備され通行が保証されるはずの「国道」でありながら、実態は通行困難、不便、不安を覚えるような道路を指して、半ば愛情を込めて呼ばれる言葉です。これは正式な行政用語ではなく、ネット掲示板やSNSなど口コミを通じて広がった、いわば俗称です。
たとえば、道幅が極端に狭く、すれ違いすら困難であったり、未舗装のガタガタ道であったり、急勾配や急カーブが続いて車の運転が困難だったりする道路が「酷道」と呼ばれます。中には、崖沿いを縫うように続く細い道も存在し、運転者には高い集中力と胆力が求められることもあります。
代表的な「酷道」としては、国道418号、157号、425号などが知られており、多くの「酷道ファン」が実際に現地を訪れ、そのチャレンジングな体験をSNSでシェアしています。
■ 再び注目を集める背景
最近になって「酷道」が再び脚光を浴びている背景には、いくつかの要因が考えられます。
第一に、SNSの発達によって、以前よりも多くの人が自らの体験をリアルタイムに共有できるようになった点が挙げられます。実際、多くのSNS利用者が、「酷道」を走破する動画やレポートを投稿し、それを見た人たちの間で「自分も走ってみたい」と興味が広がっています。
また、コロナ禍を経て人々の旅行スタイルに変化が生じたことも一因となっています。密を避け、自然の中や地元の知られざる場所を探訪する「マイクロツーリズム」が注目されるようになり、「酷道」への探索欲も高まったのです。秘境感や冒険感を味わいたいというニーズに、「酷道」はぴったり応えているといえるでしょう。
さらに、一部の「酷道」には、人の手が自然に抗うかのように無理に道を通した壮大な痕跡が刻まれており、インフラ好きや歴史好きな層にも支持を広げています。「なぜこんな場所に国道が?」「誰が、何のために作ったのか?」というロマンも、人々の心をつかんで離しません。
■ 代表的な「酷道」をご紹介
それでは、いくつかの有名な「酷道」について実際に見ていきましょう。
◇ 国道418号(岐阜県、長野県、福井県)
「酷道」の代名詞ともいえる存在。特に岐阜県八百津町から恵那市にかけての区間は、通行止めが続く中、廃道状態になりつつある部分もあります。道の両側が崖に挟まれ、ガードレールすらない箇所もあり、命がけで走らなければならない区間も。
◇ 国道157号(石川県、岐阜県)
「落ちたら死ぬ」という恐怖のメッセージが掲げられることで知られる、岐阜県能郷〜温見峠区間。豪雨での土砂崩れなども多発し、通行止めになることもしばしば。山奥の深い緑と相まって、まるで秘境の中を行く冒険者のような気分を味わえます。
◇ 国道425号(三重県、和歌山県)
全線を通して険しく、「酷道の横綱」と称されます。幅員はほとんどが狭く、カーブは連続、しかもガードレールのない高さ数十メートルの断崖絶壁が続きます。走り切った者には達成感と誇らしさが残る一方、叶わぬ場合には潔く引き返す勇気も求められます。
■ 「酷道」ブームがもたらした影響
「酷道」に注目が集まることは、観光面でも一定の効果を生んでいます。道沿いの休憩施設や温泉地、小さな宿泊施設などでは「酷道マニア」の来訪を歓迎する動きが広がっています。訪れる人がいることで地域経済への寄与も期待でき、地方創生の一助にもなっているのです。
一方で、十分な装備や知識なく「酷道」に挑み、立ち往生したり、事故を起こしたりするケースも発生しています。道路は本来、安全第一で利用されるべきものであり、無理な挑戦は大きなリスクを伴います。そのため、地元自治体や道路管理者が、必要に応じて注意喚起を行うケースも出てきています。
「無理せず、安全第一」「迷惑をかけない」の精神を忘れずに、自己責任のもとで「酷道」を楽しむ姿勢が求められているのです。
■ SNSで広がる「酷道」体験
今や「酷道」は、単なる道路探訪にとどまらず、SNSを通じたコミュニケーション手段にもなっています。X(旧Twitter)やインスタグラム、YouTubeでは、プロ顔負けのクオリティで走行動画やレビューが投稿され、コメント欄では「ここ行ってみたい!」「やっぱり怖かった!」「命懸けで走った!」といった交流が盛んに行われています。
中には「酷道グルメ」と題して、道中の隠れた美味しい食事処を紹介するクリエイターも登場するなど、「酷道」体験の幅はますます広がっています。
また、自分が見つけた新たな「酷道」候補を紹介したり、比較的安全に楽しめるコースをまとめたガイドも人気で、初心者でも挑戦しやすい環境作りが一部で進んでいます。
■ あなたも「酷道」の世界へ!
冒険心をくすぐるこの世界。「酷道」に挑む際は、まず自分の車両や運転スキルを冷静に見極め、無理なルート選択はしないことが重要です。天候や道路情報を事前に確認し、十分な装備と準備を整えましょう。
また、実際に道中で危険を感じたら、無理せず引き返す勇気も忘れずに。旅の目的は無事に帰ることです。
「酷道」は、極限の中にあるからこそ見える絶景や、人の手と自然が織りなす唯一無二の景色を提供してくれます。そして、そこにはいつも「命を大切に」という大前提があります。
安全第一で、ぜひあなたも「酷道」の世界に一歩足を踏み出してみてはいかがでしょうか。
(参考:Yahoo!ニュース『急坂持つ「酷道」SNSで再び脚光』)