近年、スマートフォンの急激な普及により、私たちの生活スタイルは大きく変化してきました。特に若年層においては、コミュニケーション、学習、娯楽と、スマホが日常生活のほぼすべての場面に関わるようになっています。しかし、便利さの陰に潜む健康リスクについて、私たちは十分な注意を払っていると言えるでしょうか。
2024年4月に報道された「スマホ急性内斜視の若年層での急増」は、多くの家庭や教育現場に驚きを与える内容でした。この記事では、急性内斜視の増加背景とその予防の重要性について、医学的な知見と共に分かりやすくご紹介していきます。
■ スマホの長時間使用が引き起こす「急性内斜視」とは？
「急性内斜視」とは、突然片方もしくは両方の目の視線が内側に寄ってしまう症状のことを指します。これは、目を動かす筋肉の調整に異常が生じることで発生し、物が二重に見える「複視」を引き起こすことがあります。特に10代から20代前半の若者に多く見られるこの症状は、スマートフォンの長時間使用と密接な関連が指摘されています。
目の筋肉は、対象物との距離に応じてピントを合わせたり、視線を調整する重要な役割を担っています。スマホの利用では、極端に近い距離で小さな画面を凝視することが多く、結果として眼球の内側への緊張が続いてしまうのです。この状態が長時間続くと、内側の筋肉が過緊張になり、正常な視線の調整ができなくなることがあります。
■ スマホ内斜視が若年層に多く見られる理由
医師によると、視力の発達がまだ安定していない若年層は、環境の変化や生活習慣の影響を受けやすく、目の筋肉も疲労しやすい傾向にあります。加えて、最近では中学生や高校生のみならず、小学生からスマートフォンを使用しているケースも多く、このような背景が急性内斜視の発生リスクを高めていると考えられています。
特に、友人とのメッセージのやりとり、動画視聴、SNS閲覧、ゲームなど、スマホを使用するシーンは多岐にわたります。中には一日あたり6時間以上もスマホ画面を見続けているという若者もいると言われ、目の筋肉への影響は無視できないレベルに達しています。
■ 急性内斜視の症状と診断
急性内斜視の主な症状は、視線が内側に向くことによる見た目の異変や、物が二重に見える複視です。本人が自覚していなくても、家族や周囲の人が「目の位置が違う」「焦点が合っていない」と気づくこともあります。こういった症状が続く場合は、速やかに眼科を受診することが推奨されます。
診断には、眼位検査や視力検査、眼球運動のチェックなどが行われ、眼科医による丁寧な問診が鍵になります。近年、スマホの使用状況について尋ねられるケースも増えており、生活習慣が診断に大きく関わっていることがわかります。
■ 予防と改善のためにできること
急性内斜視は、早期に対処することで症状の進行を防ぎ、改善することも可能です。そして、そのためには以下のような予防策と生活習慣の見直しが重要です。
1. 視線にやさしい使用方法を心がける
スマホを見る時間をできるだけ短く区切り、30分に一度は目を休めましょう。窓の外を見る、遠くの風景に焦点を合わせるなど、目の筋肉をリラックスさせる時間を意識的に取り入れることが大切です。
2. スクリーンとの距離を保つ
スマホ画面はつい顔の近くで見がちですが、目に負担をかけないよう、少なくとも30cm以上は距離を保ちましょう。ブルーライトカットのフィルターや眼鏡を使用することも有効です。
3. 姿勢を正す
長時間、下を向いてスマホを操作すると首や肩の筋肉にも負担がかかり、間接的に眼精疲労の原因になります。目と画面の高さをなるべく揃えるよう意識しましょう。
4. スマホ以外の時間を楽しむ習慣づくり
読書や手書きの日記、散歩、スポーツなど、スマホに頼らない時間を積極的に持つことで、自然と使用時間を減らすことができます。特に親子でのルールづくりや、家庭でのデジタルデトックス時間の導入も効果的です。
5. 定期的な眼科健診
目の健康は気づかぬうちに悪化する場合があります。定期的に眼科を訪れ、視力や眼球運動のチェックを受けることで、早期発見・早期対応が可能になります。
■ 親や学校関係者に求められる対応
学生たちのスマホ利用を完全に制限することは現実的ではありません。しかし、過度な使用による健康リスクを防ぐためには、親や教育関係者の理解とサポートも欠かせません。
家庭内では「使用時間の制限」や「利用のルールづくり」を通じて、子どもたちが正しいスマホの使い方を学べる環境を整えることが重要です。また、学校の授業でも、目の健康とスマホの関係について学ぶ時間を設けることで、自らの行動を見直す意識づけに繋がります。
■ 終わりに
スマートフォンは今や、現代の生活において欠かせないツールです。特に若年層にとっては、友達とつながる大切な手段であり、学習にも活用されています。しかし、その使用には健康への配慮が必要不可欠です。
「スマホ急性内斜視」は、単なる一時的な目の疲れでは済まされない重大なサインかもしれません。私たち一人ひとりがスマホとの付き合い方を見直し、目を大切にする生活を送ることが、今後の健康維持にとって重要です。子どもたちの未来のために、今日からできる目のケアを意識してみませんか？
