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“行列の先にあるご褒美”——ミスドが仕掛ける進化系ドーナツの魅力とは

2024年春、ミスタードーナツ(以下、ミスド)が新商品の登場によって再び話題を呼んでいます。SNSでは「並ばないと買えない」「早朝から人が並んでいた」などの投稿が話題となり、店舗では連日長蛇の列ができています。ドーナツ専門店として長年愛されてきたミスドが、今再び若い世代を中心に注目を集め、躍進している理由は何なのでしょうか。この記事では、ミスドが好調な背景、新商品開発に込められたこだわり、そして消費者の期待に応え続ける企業姿勢について深掘りしていきます。

■ミスドの「プレミアム」戦略が功を奏す

2024年、ミスドが話題の中心となったきっかけは、新たに展開された“プレミアムシリーズ”のドーナツです。特に注目を集めたのは、パティスリー界でも名高い「トシ・ヨロイヅカ」こと鎧塚俊彦シェフとのコラボレーションで発表されたラインナップです。高級感あふれるドーナツは、これまでのミスドのイメージを良い意味で覆し、多くの顧客がその特別感と味わいに惹かれて店舗に足を運んでいます。

このプレミアムシリーズでは、厳選された素材と、食感・香り・バランスのすべてにこだわったドーナツが提供されており、価格設定も通常の商品より高めに設定されています。それにも関わらず“ご褒美ドーナツ”として消費者から受け入れられており、まさに「ちょっと贅沢したい日」の選択肢として定着しつつあります。

■なぜ今、ミスドなのか?時代に合った提案力

消費者のライフスタイルや価値観は、ここ数年で大きく変化しています。生活者の多くが“モノよりコト”“質の高い消費”を求めており、食に関しても「安くてお腹が満たせれば良い」という時代から、「自分へのちょっとしたご褒美」「SNSでシェアしたくなる体験」にシフトしつつあります。

ミスドはその流れにいち早く対応しました。例えば、商品ラインナップの幅を広げ、高価格帯でも納得感のある品質を提供したこと。そして、パッケージや店舗デザインにも工夫を凝らし、「写真映え」する商品として若い世代の心を掴んだことも大きなポイントです。さらに、テイクアウト需要やギフト需要にも対応し、“ドーナツ=手軽なおやつ”という従来の枠組みを越えたブランドイメージを確立しつつあります。

■“温故知新”の発想が光る商品開発

今回のヒット商品の背景には、“原点回帰”と“革新”を両立させた商品開発姿勢が見てとれます。ミスドが長年愛されてきた理由の一つが、どこか懐かしさを感じさせるドーナツの味や店舗の雰囲気です。このような「慣れ親しんだおいしさ」を守りつつも、時代のニーズに応えた新しい味わいや食感を取り入れることで、幅広い世代に支持されています。

トシ・ヨロイヅカ氏とのコラボも、その一環です。彼の繊細で洗練されたスイーツの世界観をミスドのフォーマットにうまく融合させることで、まさに“ミスドの進化形”とも言える商品へと昇華させました。新規の顧客を取り込みながらも、昔からのファンも離さない絶妙なバランスは、ミスドの長年の経験とノウハウに裏打ちされたものでしょう。

■“並ぶ体験”が購買意欲を高める作用も

商品の品質やプロデュース陣の豪華さに加えて、もう一つ見逃せないのが“並ぶこと自体が話題になる”という現象です。SNS全盛のこの時代、朝から並んで限定商品を購入するという行動そのものが、「体験価値」として共有されます。

「◯分並んでようやく買えた」「やっと食べられた」「一口食べて感動」——そんな投稿がSNS上に広がることで、他の人の「自分も体験したい」という気持ちを刺激し、さらに行列ができるという好循環を生み出しています。マーケティング的にも「人が並んでいる=人気である」という印象を与えやすく、ブランド力の強化にもつながっていることがわかります。

■ファミリー層から若年層、そしてスイーツファンまで

ミスドの魅力は、世代を越えて受け入れられるところにもあります。子どもの頃に親と一緒に食べた思い出があるという大人も多く、ファミリーでの利用は依然として健在です。その一方で、おしゃれなデザートをSNSに投稿することがライフスタイルの一部になっている若年層、特に女性ユーザーも増加しています。さらに、鎧塚シェフとのコラボが話題になったことで、スイーツに詳しいグルメ層からも注目されるようになりました。

このように、ターゲットを明確に限定せず、幅広い層にアピールする戦略が奏功していることも、現在の好調の理由のひとつといえるでしょう。

■「ミスタードーナツ」というブランドの信頼感

1970年代から続くドーナツチェーンとして、ミスドは「親しみやすさ」「安心感」というイメージを大切にしてきました。使われている素材の安全性はもちろん、どの店舗でも同じ味が楽しめるという“安定感”が、リピートの要因になっています。

そして、新しい挑戦をしながらも、「お客様に美味しいドーナツを届けたい」「おやつの時間をより楽しくしたい」という思いがブレていない点に、消費者からの信頼が寄せられているのです。

■今後の展開にも期待

今回のヒットを受け、ミスドは今後も新たなコラボレーションや季節ごとの特別商品などを計画しているようです。消費者の期待値が高まる中で、次はどんなサプライズが用意されているのか、ワクワクしながら待っているファンも多いのではないでしょうか。

ドーナツという一見シンプルなスイーツの中に、無限の可能性を見出しているミスド。その柔軟な商品開発とブランド戦略は、多くの企業やマーケターにとっても学ぶべき点が多く、今後の展開がますます注目されます。

■まとめ

“いつものドーナツ”から、“驚きと高揚をもたらす特別なドーナツ”へ——。ミスドはそのブランド価値を確かに進化させ、新たなファン層を取り込みながら、長年のファンをも魅了し続けています。時代の流れを汲み取り、多様なニーズに応えるスイーツ体験を創り出すその姿勢は、まさに現代のお菓子業界における理想的な在り方の一つといえるでしょう。今後も「次は何が出るのか」と期待される企業であり続けるミスドのこれからに注目です。