2024年6月、法律事務所アディーレ法律事務所が公表したある声明が多くの関心を集めています。その声明は、これまで全国で複数件報告されてきた「弁護士をかたる詐欺被害」に対して発せられたもので、被害者に対する寄り添いの姿勢を強調すると同時に、被害者に対して責任を問うような見方を否定する内容になっています。特に「被害者に落ち度はない」という明言は、多くの共感を呼び、再び「なりすまし詐欺」問題に対する社会的関心を高めるきっかけとなりました。
今回は、この問題の背景、アディーレ法律事務所が出した声明の意義、そして今後私たちが何に注意していくべきかについて、詳しく掘り下げてみたいと思います。
なりすまし詐欺の新手口:弁護士を装う巧妙な罠
近年、SNSやインターネット、電話を通じたなりすまし詐欺が後を絶ちません。中でも特に悪質なのが、実在する弁護士や法律事務所を名乗り、法的手続きや債務整理、トラブル解決を装って個人情報を聞き出す、または金銭を要求する手口です。
こうした方法は、被害者にとって非常に信ぴょう性が高く映るため、疑いを持たずに対応してしまうケースが多いのが特徴です。たとえば、正式な口調で「アディーレ法律事務所の◯◯弁護士ですが…」と名乗られると、それだけで安心感を抱いてしまうのも無理はありません。
このような詐欺手法は、法律の専門知識を持たない一般人にとって極めて見破りにくいものであり、十分に注意をしていたとしても騙されてしまう可能性があるのです。
アディーレ法律事務所の声明:被害者を責めないという強い姿勢
こうした背景の中で、アディーレ法律事務所は公式ウェブサイト上で「なりすまし詐欺被害者に関する声明」を発表しました。その中で最も印象的だったのが「被害者に落ち度はありません」という一文です。
この一言には、「被害者にも注意不足などの責任があるのでは?」といった無言のプレッシャーや偏見に対して、明確にNOを突きつける意志が込められています。つまり、悪いのはあくまで加害者であり、騙された側が責められるべきではないという、極めて当たり前ではあるものの、社会的に重要な価値観を再確認させてくれる内容でした。
さらにアディーレ法律事務所は、詐欺事案について適切に警察などと連携し、必要な対応を行っていることや、今後も同様の被害を未然に防ぐための取り組みを強化していくことを述べています。これにより、同事務所が単なる「被害回避の喚起」だけでなく、より広い視野で社会的責任を果たそうとしている姿勢がうかがえます。
被害者非難という二次被害の問題
今回の声明で強調された「被害者を責めない」という姿勢は、現代社会が抱えるもう一つの深刻な問題に光を当てています。それが「二次被害」と言われるものです。
例えば、詐欺に騙されたことを告白した人に対して「なんで騙されるの?」「そんなの注意すれば防げたでしょ?」といった無自覚な言葉を投げかける人が少なくありません。しかし、これは無意識のうちに被害者を再び傷つける行為であり、詐欺の被害を周囲に相談しにくくする風潮の一因ともなっています。
本来、犯罪の責任を負うべきは加害者であり、被害者が社会的に責任を追及されたり、羞恥心を植え付けられるべきではありません。アディーレ法律事務所の声明は、この当然の社会的原則を改めて確認させてくれました。
これから私たちができること
近年、特殊詐欺は手口が多様化・巧妙化しており、自分自身だけでなく家族や身近な人々にも危険が及ぶ可能性があります。誰もが「自分は大丈夫」と思いがちですが、どれだけ注意していても完全に防ぐことが難しい状況です。
そのため、私たち一人ひとりができる対策としては、以下のようなことが挙げられます。
1. 法律事務所や金融機関など名乗る連絡が来た場合、必ず公式ウェブサイトなどで連絡先を再確認する
2. 電話やSMS、メールで個人情報の入力を求められたら、その場で対応せず一度冷静に考える
3. 怪しいと感じた時は、一人で判断せず家族や専門機関に相談する
4. 受け取った情報が正しいかどうか、複数の情報源で確認する習慣を持つ
また、大切なのは、実際に被害にあった人に対して「責めるのではなく寄り添う」ことです。被害者本人はもちろん、その家族も深く傷ついていることが多く、私たちの何気ない言葉や態度が、支えになることもあれば新たな傷になることもあるのです。
より安心できる社会に向けて
アディーレ法律事務所の声明は、単なる「なりすまし詐欺への警鐘」だけではなく、私たちの社会全体がどうあるべきかという価値観にも一石を投じるものでした。
犯罪に巻き込まれるリスクは誰にでもあります。だからこそ、被害者を責めるのではなく、「どうすれば再発を防げるか」「どうすれば支えられるか」といった前向きな議論と行動が求められています。
今後も法律事務所や関係機関、そして私たち市民一人一人が、連携しながら知識とモラルを育て合い、安心して暮らせる社会を築いていくことが何よりも大切です。
アディーレの今回の声明が、そういった思いやりと責任感を育む第一歩になればと心から願います。