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「“出産の恨み”は愛の裏返し──本多未佳さんが語る母のリアルと夫婦のかたち」

お笑い芸人・しゅんPさんの妻である本多未佳さんが、出産にまつわる複雑な感情を告白し、SNS上で多くの共感を呼んでいます。その体験談は、子育て中の母親だけでなく、パートナーと共に家族を築くすべての人々にとって、非常に考えさせられるものでした。

未佳さんが発信したのは、「出産をめぐる“恨みあるある”エピソード」です。一見、笑い話のように聞こえる「恨み」という言葉ですが、その裏には妊娠や出産、育児に向き合う女性のリアルな感情と苦労が凝縮されています。ここでは、未佳さんの告白を通して、妊娠・出産をめぐる“気持ちのすれ違い”や“男女間の理解の差”についてみていきたいと思います。

■「出産の恨み」は愛情の裏返し? 産前産後に感じたモヤモヤとは

未佳さんによると、第一子の出産を終えた直後、夫であるしゅんPさんへ複雑な感情を抱いたそうです。それは「感謝」の気持ちと同時に、「どうして私だけがこんなに大変な思いをしているの?」という疑問や不満に起因する“恨み”とも言える感情でした。

たとえば陣痛に苦しんでいる最中、夫が「頑張って!」と応援してくれたものの、その言葉が逆にプレッシャーになったり、自分の辛さを十分に理解してくれないと感じた瞬間があったといいます。こうした想いは決して夫への攻撃的な気持ちからくるものではなく、自分が置かれている過酷な状況と、その中で孤立感を感じずにはいられない母親のリアルな心理です。

「これは産んだ女性にしかわからない、心と身体を張った体験なんです。」

未佳さんの言葉には、多くの母親が経験してきた「共有できない痛み」と、それゆえに生じるパートナーとのすれ違いがにじんでいます。

■気づかぬうちに積み重なる“産後のズレ”

妻が出産を経験して家庭に戻ると、多くの夫にとっては「育児が始まった」というタイミングかもしれません。しかし、出産を終えたばかりの妻にとっては、心身ともに極限状態のまま、休む間もなく育児という新たな試練に突入した厳しい時期です。にもかかわらず、夫が変わらぬ生活スタイルやテンションのまま接してくると、育児を“他人事”と思っているように感じられてしまうこともあります。

未佳さんはそうした違和感やイラ立ちを、「些細なズレ」として受け止めながらも、心の中に少しずつ「恨み」が溜まっていったと語っています。生後間もない赤ちゃんの夜泣きや授乳、睡眠不足など、過酷な日々の中で、自分だけが“置き去り”にされているような孤独感がそうさせるのかもしれません。

■「恨み」を笑いに変える勇気と、夫婦の対話

未佳さんがすばらしいのは、こうした自身の体験を“笑い”という形で発信し、夫のしゅんPさんもそれに応える形で自身の視点からの育児話を発信している点です。二人の間にはおそらく、産後の危機や衝突もあったはずです。それでも、互いの視点や体験を尊重し、言葉にして発信する過程そのものが、夫婦としての成長に繋がっているといえるでしょう。

しゅんPさんもSNS上で、「当時の自分の無神経さを痛感している」「今では妻の頑張りに気づけてよかった」といった発言をしています。こうしたやりとりは、他の夫婦にとっても、自分たちの関係性を見直すヒントになるのではないでしょうか。

■同じ“子育て”をしていても、見えている景色は違う

出産や子育ては夫婦二人三脚で行うべきものですが、実際にはその苦労の多くを女性が抱えがちです。それが“当然”という社会的な風潮や、実家や親戚に「昔はもっと大変だった」と一蹴されてしまう環境など、妊産婦に向き合う環境にはまだ多くの課題があるのが現状です。

しかし、それぞれの立場や体験を「違い」として受け入れ、夫婦で分かち合いながら子育てをしていく姿勢は、これからの家庭において何よりも大切なのではないでしょうか。

未佳さんのように、ありのままの感情を表現することは、決して“文句”ではなく、自身の心を守るための大切なメッセージであり、それを受け止めるパートナーの姿勢もまた、家庭に安定をもたらす鍵となるのです。

■“産む人”も“支える人”も、尊重し合える社会へ

近年ようやく、産後うつや育児ストレス、出産のトラウマなどが社会的に取り上げられるようになってきました。それでも、「パパが育児するだけで偉い」とされてしまう風潮や、「子供を持つと女は強くなる」という決まり文句が、母親の苦労を軽視している場面もしばしば見かけます。

本多未佳さんの発信が多くの共感を集めた背景には、そういった女性たちの“見えにくい感情”に光を当てたからこそだと言えるでしょう。

これから親になる人、すでに育児をしている人だけでなく、社会全体として「命を育む過程」がどれほど尊い仕事であるかを再認識し、それに寄り添う文化と価値観を育んでいくことが求められているのではないでしょうか。

■おわりに

しゅんPさんと未佳さんの夫婦は、発信を通じて互いの価値観をすり合わせ、育児に対するリアルな姿勢を共有しています。その中で笑いがあればなおよし、涙があっても不自然ではない、そんな夫婦のかたちが感じられました。

“出産の恨み”は、決して暗い話ではありません。むしろ、そこに秘められた苦労や思いやりが語られることこそが、よりよい家族関係を築く第一歩になるのです。

子どもが健やかに育つには、母親の心が健やかであること。そのために、周囲の理解、特に最も身近なパートナーの存在がどれほど心強いかを、あらためて考えさせられるエピソードでした。

出産は一人では乗り越えられません。パートナーとの“分かち合う努力”こそが、育児という長い旅路の力強い出発点になるのです。