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「TOKIO-BA、福島と歩んだ5年の軌跡――終わりではなく、未来への種まき」

福島の復興の象徴「TOKIO-BA」――地域とともに歩んだ挑戦の軌跡

かつてテレビ番組「ザ!鉄腕!DASH!!」を通して多くの人々に知られることになった、福島県西白河郡西郷村にある体験型施設「TOKIO-BA(トキオバ)」。その施設が2025年3月末をもって閉園することが、2024年6月22日に明らかになりました。

TOKIO-BAは、人気グループ「TOKIO」がプロデュースに携わり、2019年から活動を開始した体験型ファーム施設です。福島の豊かな自然の中で、農業や林業、DIY体験を通して、人と人、人と地域、そして人と自然がつながる場として、多くの来場者やファンに愛されてきました。この記事では、TOKIO-BAの歩み、福島との関係、閉園に至る背景、そしてそれでもなお続く地域活性化への思いについて振り返っていきます。

TOKIO-BAとは何だったのか?

TOKIO-BAの立ち上げは、2011年の東日本大震災の復興支援活動と密接に関係しています。TOKIOのメンバーたちは、震災直後から福島の地に足を運び、番組を通じて様々な復興支援活動を行ってきました。その延長線上にあったのが、この施設の誕生です。

施設は西郷村の山林や田畑を利用し、木材加工、農作業、狩猟体験、さらにはクラフト作りなど、多様な体験アクティビティを提供しており、子どもから大人まで楽しめる学びの場として機能していました。「DASH村」などを通じて、生きる力や自然との共生を体験してほしいというTOKIOの願いが込められた場所でもあります。

加えて、TOKIO-BAでは、福島県産の食材を使った料理や、地域ならではの自然文化に触れることもでき、来場者にとっては「もう一つのふるさと」として親しまれていました。

閉園の理由は?

今回発表された閉園について、運営会社である株式会社TOKIOからの説明によると、「施設の今後のあり方を検討する中で、2025年3月末をもって現段階の形での運営終了を決定した」とされています。具体的な理由については明言を避けつつも、「体験型施設として達成すべき役割を一定程度果たした」ことや、「社会全体の環境変化による運営体制の見直し」などが考慮されたと述べられています。

これまでに訪れた多くの来場者や、施設の意義を理解し応援してきたファンにとっては、残念な発表となりましたが、同時に5年間にわたる実りある活動への感謝の気持ちも込められていました。

また、TOKIOのメンバーたちによるコメントからも、単なる終わりではなく「一つの区切り」として受け止め、今後も福島との関係を続けていく姿勢がうかがえます。

福島との絆はこれからも――TOKIOの発信力

TOKIOと福島との関係が始まったのは、震災より前の2000年頃から放送されていた「DASH村」がきっかけです。そのDASH村も、2011年の原発事故によって立ち入りが難しくなりましたが、彼らはその後も福島の地に足を運び続けました。

2017年には、DASH村の精神を引き継ぐ形で都内近郊に「DASH島」などを展開し、視聴者に自然と向き合う暮らしの大切さを伝えています。そして満を持して2019年にオープンしたTOKIO-BAは、復興・再生・交流をテーマに、地域発展の担い手としての役割も果たしてきました。

そうしたTOKIOの活動は、福島県の住民や関係者にとっても大きな励みとなっており、「芸能人が関わる一過性のプロジェクト」に終わらず、地域との信頼関係を築いてきた稀有な例でもあります。

閉園を受けて、福島県民やファンからは「寂しいが感謝しかない」「福島の本当の魅力を教えてくれた」「また違う形で復活してほしい」といった声がSNSなどで多く寄せられています。

地域に残った「種」はこれからも芽吹く

TOKIO-BAは閉園という形を取りながらも、その活動には「終わり」ではなく「変化」の意味があります。この5年間で築かれた地域との信頼や、体験を通して培われたノウハウ、人々の心に宿った自然とのつながりは、今後も様々なかたちで受け継がれていくことでしょう。

自治体と連携した新たな取り組みや、地元企業・団体とのコラボレーション、そして次世代を育てる教育的プログラムへの昇華など、TOKIO-BAが蒔いた「種」は、やがてそれぞれの場所で花を咲かせていくと期待されています。

また、地元住民の中には、これまでに得た経験を生かして独自に施設を運営したり、地域活性化の担い手として活動を始めた例も報告されています。

これからの「地域と芸能人の関係性」

今回のTOKIO-BAの閉園は、「芸能人が地域活性に本気で関わったらどうなるか?」というモデルを私たちに提示してくれた貴重な事例でもありました。単にPRやイベント出演ではなく、土地に根を張り、泥にまみれ、地域住民と肩を並べて作業をする――その誠実さこそが、多くの共感を呼び起こしてきた理由の一つです。

今後、地方創生や人口減少、過疎化などの課題に立ち向かう中で、こうした「共感型」の取り組みが増えていくことが望まれます。芸能人の知名度や発信力を地域の側がどう活かすか、また芸能人自身が長期的な視点を持ってどう地域に寄り添うか。それは、これからの日本社会における大きなヒントになるかもしれません。

おわりに

TOKIO-BAの閉園は、一つの活動の終着点でありながら、新たな地域支援の形を模索する始まりでもあります。変化は寂しさとともにあるものですが、それをどう次に生かすかが未来をつくります。

福島とTOKIO、そのつながりは、これからも変わることなく続いていくでしょう。私たちもまた、今回の閉園のニュースをきっかけに、地域との関わりや自然との向き合い方、大切な人とのつながりについて、少しだけ考えてみる――それが、TOKIO-BAが私たちに遺してくれた最大の贈り物かもしれません。