梅雨の季節、体調不良とどう向き合う?「朝起きられない」その不調の原因と対策
湿気が多く気温の変動が激しい梅雨の時期。毎年このシーズンになると、「朝なかなか起きられない」「体がだるい」「気分が沈みがち」といった声をよく耳にします。ただの寝不足や疲労と片付けてしまいがちですが、もしかするとこれらの不調は「気象病」や「季節性うつ」と呼ばれる医学的な状態とつながっている可能性があります。
2024年6月現在、Yahoo!ニュースで取り上げられた『朝起きられない 梅雨時期に病悪化』という記事では、梅雨の時期に起こる不調のメカニズムや、専門医による見解、そして症状の対策について詳しく紹介されていました。本記事では、その内容をもとに、梅雨時期の心と体の不調について分かりやすくまとめ、私たちが日常生活の中でできる予防・対策方法についても触れていきます。
なぜ梅雨の時期になると体調が悪くなるのか
梅雨といえば長く続く雨、ジメジメとした湿気、そして曇りがちな空模様。これらの気象条件は、私たちの体と心へ大きな影響を与えます。特に以下の点が関連していると、専門家は指摘しています。
① 気圧の変動
梅雨時期は低気圧が滞留しやすく、日々の気圧の変動が激しくなります。この変化は、自律神経に影響を与えるとされており、「だるさ」「頭痛」「眠気」「肩こり」「めまい」といった症状を引き起こしやすくなります。このような気圧による体調不良は「気象病」とも呼ばれます。
② 日照時間の減少
連日の曇天や雨によって日照時間が減ることで、体内時計が乱れやすくなります。人間の脳は、朝に太陽光を浴びることで、セロトニンという神経伝達物質を分泌し、覚醒状態を促進します。しかし、日光が足りないとセロトニンの分泌が低下し、結果として「朝起きられない」「日中も眠い」「気分が沈みやすい」という状態になります。
③ 湿度の高さ
湿度が高いと汗が蒸発しづらく、体温調節がうまくいかなくなります。これにより、倦怠感や集中力の低下を感じやすくなります。また、湿度が高い環境ではカビやダニが増え、アレルギー症状を引き起こすこともあり、体の負担がさらに増してしまいます。
症状が悪化しやすい人の特徴
記事によると、梅雨時期に体調不良を訴える人の中には、もともと自律神経系が乱れやすい体質の方や、精神的ストレスを抱えやすい傾向の方が多いという傾向があることがわかっています。また、もともと起立性調節障害(OD)などを抱える子どもや若者では、この時期に症状が悪化することも少なくありません。
ODとは、主に10代を中心に多く見られる疾患で、自律神経のバランスが崩れ、立ち上がった時のめまいや倦怠感、朝の低血圧など、さまざまな症状をもたらします。梅雨時の気候はこの病状を悪化させ、登校が困難になる子どもたちも多いといいます。
心の不調にも注意が必要
気圧や日照不足によって心にも変化が現れることがあります。特に梅雨の時期には抑うつ状態や不安感が強まる「季節性のうつ(季節性情動障害)」も報告されています。本来なら活発に過ごせるはずの生活が、天候によって制限され、ストレスや閉塞感に繋がることで、気分の波が大きくなるのです。
また、近年はコロナ禍以降の生活スタイルの変化により、在宅時間が増えて生活リズムが乱れている人も少なくありません。このような状況も、梅雨時の精神的な不安定さに拍車をかけていると考えられています。
私たちにできる対策―心と身体を守るために
では、梅雨の時期に感じるこの不調を緩和し、できるだけ健やかに過ごすためにはどうすればよいのでしょうか。以下に、日常生活で実践しやすい対策をいくつかご紹介します。
1. 朝の光を意識的に浴びる
曇りの日でも、外の自然光は室内の照明よりも十分明るいものです。朝起きたらカーテンを開け、できれば10〜15分でも窓際に立ち、光を全身で感じることが大切です。これにより睡眠ホルモンのメラトニンが抑えられ、脳が覚醒状態に入りやすくなります。
2. 規則正しい生活リズムを心がける
決まった時間に起きて、決まった時間に寝るという生活リズムは、自律神経のバランスを整えるためにも重要です。特に朝食を抜かず、体内リズムをリセットする行為を日々続けることで、身体が「今日も一日が始まった」と感じやすくなります。
3. 軽い運動を取り入れる
雨で外に出づらい時期ですが、室内でできる軽いストレッチやヨガ、ダンスなどを取り入れることで、血行が促進され、自律神経の働きも良くなります。また、軽い運動はセロトニンの分泌を促し、気分を明るくする効果も期待できます。
4. 湿度管理と空気の清浄
部屋の湿度が高くなるとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギーの原因に。除湿器やエアコンの除湿機能を活用して、快適な室内環境を保ちましょう。また、換気をこまめに行うことで、空気もリフレッシュされます。
5. 食事の質を大切にする
体調を整えるためには、栄養バランスの取れた食事が非常に重要です。梅雨の時期は食欲が落ちやすい方も多いですが、たんぱく質やビタミンB群、鉄分、オメガ3脂肪酸など神経や血流に関与する栄養素を意識して摂ることがポイントです。
子どもたちへのケアも忘れずに
特に思春期の子どもたちは、自律神経のバランスが不安定な時期。前述した起立性調節障害や、気圧による不調、そして学校生活のストレスなどが重なることで「朝起きられない」「学校に行けない」といった状態になりやすくなります。
このような場合、「怠けている」とは決して決めつけずに、症状を理解し、専門機関への相談を検討するなど、家族や周囲のサポートが必要です。医師の診断があれば学校への配慮を求めることも可能になりますし、子供自身も「自分だけではない」と安心感を持つことができます。
まとめ
梅雨は、私たちの体と心にとって予想以上に大きな影響を及ぼす季節です。しかし、その影響は個人差があり、「気の持ちよう」では片付けられない、本格的な不調に悩んでいる方も少なくありません。
大切なのは、自分の体や心からのサインを見逃さないこと。そして、やれることから少しずつ対策を講じていくことです。気象病や季節性うつといった言葉が広まり、社会的な理解も進んできています。この梅雨を、少しでも明るく、健やかに乗り切るために、日々の生活を少し見直してみてはいかがでしょうか。
一人ひとりが自分の健康に目を向け、心と体を丁寧にいたわることが、雨の季節を快適に過ごす第一歩につながるのです。