「給料減でも 国交省から46歳で転職」——この見出しは、一人の公務員が安定という道を手放し、新たなキャリアに挑戦した物語を象徴しています。日本社会において「安定」の代名詞ともいえる公務員。とりわけ国の省庁に勤務するキャリア官僚や技術職員は、経済的安定と社会的地位の面で高い評価を受けています。しかし、この記事では、そのような立場にありながらも人生の後半に大胆な決断をした男性のストーリーが紹介されています。今回はこの記事をもとに、「なぜ人は給与を下げてまで転職を選ぶのか」「46歳からの転職のリアル」「これからのキャリアを考える上で大切なこと」について考えていきましょう。
■ 国土交通省からの転職、46歳で選んだ新たな道
話題となったのは、長年にわたり国土交通省で働いてきた技術系職員の男性です。彼は高校卒業後、地方の建設会社での勤務を経て、建設省（現・国土交通省）に技術職として入省。現場を歩く中で多くの経験を積み、実直にキャリアを重ねてきました。そんな彼が46歳という年齢で公務員の立場を辞し、年収ベースで100万円以上のダウンとなる民間企業への転職を決意したというのです。
一見、「安定した立場なのに、なぜ？」と不思議に思われるかもしれません。しかし、彼の中にはある強い思いがありました。それは、「現場をもっと良くしたい」「今までの経験を生かして、違う形で世の中に貢献したい」という理想でした。
■ 安定よりもやりがいを求めた決断
公務員の仕事には明確な役割がありますが、制度や仕組みが厳格である分、どうしても柔軟性や即応性に欠けるという面もあります。特に技術系の現場では、もっと効率的にできるのに、制度の壁で進められない──そういったジレンマを感じることもあったそうです。
一方で民間企業では、自らのスキルをプロジェクトベースで活かしつつ、積極的に施策を提案し、実行していくことが可能です。もちろん、リスクも伴います。年齢的に転職が難しいという声もありますし、給与が下がることも事実。しかしそれでも彼は、「やりたいことを実現するには、今が最後かもしれない」と自分に問いかけ、転職を決意。制度の中で限界を感じていた自分が、外に出て挑戦することで本当に社会に役立てるかもしれないという確信を持ったのです。
■ キャリアの後半戦。「やってみたい」で動くということ
転職を決意する際には、周囲からの反対もあったと言います。「せっかくここまで地道に積み上げてきたのに」「家族の生活はどうするのか？」そんな声があって当然です。
それでも彼は、自分のキャリアを見つめ直し、「このまま定年まで仕事を続けて悔いがないだろうか？」と自問しました。それは、多くのミドル世代が向き合う問いかけでもあります。子育てがひと段落し、自分の人生ともう一度向き合いたくなるタイミング。責任も増してくる一方で、「このままでいいのだろうか？」と感じる疑問も増えてきます。
彼が伝えたかったのは、「遅すぎることは決してない」ということでした。46歳という年齢は、業界によっては転職が難しいと見られがちですが、経験とスキルを持つ人材は、企業にとってむしろ貴重な存在です。年齢に関係なく、「自分が何をしたいのか」「それによって何を成し遂げたいのか」を明確にすることが、新たな一歩を踏み出す鍵となります。
■ 民間に移って気づいたこと。キャリア視点のアップデート
現在、彼は建設系の民間企業で、インフラ整備や公共工事の効率化に関わるプロジェクトに携わっています。公共機関で培った知見は、民間企業の現場でも大いに活かされており、「ここでなら、もっと柔軟に、スピーディーに現場を改善できる」と感じているそうです。
また、民間企業ではプロジェクトごとに結果が求められる一方、その分自分の意見が反映される余地も大きいのが特徴です。自分の力で仕事を動かし、成果が実感できるというのは、大きなモチベーションになります。
もちろん、公務員として働いていたときのやり甲斐も別の角度で存在していました。それぞれの立場に良さがあり、それぞれのやりがいがある。そのうえで自分自身がこれから何を重視して生きたいかを選ぶことが、より充実したキャリアを築くためのヒントになるのです。
■ キャリアは「安定」ではなく「納得感」で選ぶ時代へ
人生100年時代と言われ、働き方や生き方が多様化している現代において、キャリア選択は以前よりもはるかに自由度が増しています。昔のように一つの会社に人生を捧げるのではなく、「どんな人生を歩みたいか」「そのためにどんなキャリアを築くのか」といった視点がより大切になってきています。
今回のケースはまさに「納得感」でのキャリア選択の一例です。給与が上がるか、ポジションが良くなるかという目先の条件だけではなく、人生単位での充実感、やりがい、価値観との適合性が重要になってきています。
これは転職を考える人に限らず、すべての働く人が意識したいポイントです。たとえ環境が変わらなくても、「本当に自分にとって今の仕事はやりたいことなのか？」「何を優先して人生を歩みたいのか？」という問いを持つだけでも、毎日の働き方や生き方が変わってくるはずです。
■ 最後に：一歩踏み出す勇気が未来を変える
46歳で転職した男性の物語は、多くの人に勇気を与えるエピソードです。年齢や経歴にとらわれすぎず、「今の自分に何ができるか」「これからの時間をどう使いたいか」を考えることで、新しい道が開ける——それを実感させてくれるストーリーでした。
私たちもそれぞれの立場で、「納得できる人生」を目指して一歩踏み出すことができます。決して無理をする必要はありませんが、変わりたいと思ったときに「遅すぎることはない」と信じる気持ちが、より良い未来への一歩となるのではないでしょうか。
