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小さな命が教えてくれたこと〜娘のドラベ症候群と向き合う家族の365日〜

娘のけいれん発作と闘う日々〜難病との向き合い方と家族の絆〜

ある日突然、我が子が原因不明のけいれん発作を繰り返すようになったら――。その小さな身体が激しく震え、うめき声を上げる姿を見ることしかできないとしたら――。それは、多くの親にとって想像するだけでも胸が締め付けられるような出来事です。

今回ご紹介するのは、難病「ドラベ症候群」と向き合いながら、懸命に日々を過ごす一家の物語です。何気ない日常の中で娘に突然起こったけいれん発作。その裏に隠されていたのは、認知度が低く診断の難しい希少疾患でした。母親は涙を流しながらも、情報をかき集め、治療法を探し、支援を求め、同じ境遇の家族と繋がろうとしています。

この記事では、都市部でもなかなか診断がつかない病気「ドラベ症候群」の実態と、その中で奮闘するひと家族の姿を通じて、私たちがこの病気や希少疾患とどう向き合うべきか、一緒に考えていきます。

突然訪れたけいれん、困難を極めた診断

お話の主人公は、現在3歳になる女の子とその家族です。発症は生後5か月、急に起きた高熱とともに、予期せぬけいれん発作が始まりました。当初は「熱性けいれん」との診断を受け、ごく一般的な乳幼児期の症状とされていました。

しかし、けいれんは予想よりも頻繁に、そして重く繰り返されました。そして8か月後には、ついに医師から「ドラベ症候群」という診断が下されます。この病気は、まれに発症する重度のてんかん性脳症で、てんかん発作に加え、知的発達の遅れや運動障害などを伴うことが多く、治療も極めて難しいとされています。

ドラベ症候群の発症率はおよそ4万人に1人と言われ、国内にはおよそ400〜500人程度の患者しかいないと見られています。症状の現れ方には個人差もあり、その稀少性ゆえに、医療機関でも早期の適切な診断が難しい側面があります。実際、このご家族もいくつもの病院を訪れ、セカンドオピニオンを求めながら1年以上をかけてようやく答えに辿り着いたといいます。

見落とされやすい希少疾患、医療体制には課題も

現在の日本の医療体制では、ドラベ症候群のような希少疾患の早期発見にはどうしても時間がかかるのが実情です。診断に遺伝子検査が必要なため、検査費用や検査までの待機期間も長く、また医師自身がドラベ症候群を初めて診るというケースも珍しくありません。小児科、神経内科などの専門性が高い領域の連携が求められる中、都市部と地方では対応に差が出ることもあります。

このご家族の場合、ようやく診断されたのちも治療薬の選定に苦慮しました。一般的な抗てんかん薬が逆に発作を悪化させることもあるため、慎重な対応が必要なのです。加えて保険適用外の薬や、海外でのみ使用されている治療法も多く、情報収集や医師との相談には終わりが見えません。

それでも両親は、娘の命を守るため、できることを慎重に、そして前向きに選び取っていきました。母親は「1日無事に過ごせたら、それだけで感謝」と話します。毎朝体温を測り、発熱の兆候があればすぐに対策をとる。人混みにはできるだけ連れて行かない。環境温度を常に一定に保つ…。そんな当たり前ではない日常を、ゆっくりと積み重ねていく日々です。

支援団体とのつながりと同じ境遇の家族の支え

ドラベ症候群の治療やサポート体制がまだ十分に整っていない中、ご家族の心の支えになっているのが、患者会や支援団体の存在です。同じ病気を持つ子どもを育てる家族が集まり、情報交換や相談、経験談の共有などが行われています。

「同じ境遇の人の話は、ネットで調べるよりもずっとリアルで、安心できる」という母親の言葉が印象的です。孤独を感じやすい希少疾患の世界で、「自分だけじゃない」と思えることが、何よりも大切なのです。

また、現在では、ドラベ症候群に関する情報が少しずつメディアでも取り上げられるようになってきています。より多くの人にこの病気のことを知ってもらい、当事者を取り囲む温かな社会的理解が広がるよう、支援団体は積極的に啓発にも取り組んでいます。

周りの理解と社会の受け入れが生きる力になる

希少疾患という言葉は、数の少なさから「非日常」に見えるかもしれませんが、実は誰にでも起こり得ることです。突然おきる病気に対応できる環境や制度、そして何より「人の理解」は、病気と闘う家族にとって大きな希望と力になります。

特に小さなお子さんを持つ家庭では、予期せぬ病気に早期に気付くためにも、日頃から子どもの変化に敏感でいることが重要です。そしてもし心配な症状があれば、自己判断せず、専門医や医療機関に相談すること。早期診断と適切な対処が、病気進行の抑制につながる可能性もあるからです。

また、地域の保育園や学校、自治体などがこうした疾患に対する知識や対応マニュアルを持つことも、当事者家族への安心感を高める要因になります。「特別扱い」ではなく「適切な理解と配慮」をもって接すること。それが、病と向き合う子どもとその家族にとって、かけがえのない支えになるのです。

まとめ:家族の絆が生み出す未来への光

ドラベ症候群と闘う家族の物語は、多くの人の心に残るものでした。小さな一歩を積み重ねながら、懸命に生きるその姿は、希少疾患という範疇を超えて、家族の在り方、人と人とのつながりの大切さを私たちに教えてくれます。

病気と診断されたとき、多くの人は不安の渦に放り込まれます。それでも、そこに支えてくれる人がいれば、前を向く力が湧いてくる。そんな力強いメッセージを持つこのご家族の物語から、私たち一人ひとりが何を学べるか。きっとそれは、「正しく知ること」「理解すること」「共感し、寄り添うこと」の大切さに気づくことなのかもしれません。

この話が、誰かの希望に繋がることを願っています。