2024年東京都議選、投票率47.59% 前回を上回る ― 主権者としての一票の重みを考える
2024年7月に行われた東京都議会議員選挙において、投票率が47.59%となり、前回選挙（2021年）の42.39%を上回ったことが報じられました。都政を担う議員たちを選ぶこの重要な選挙で、やや増加したとはいえ、依然として半数以上の有権者が投票に行かなかったことも事実です。本記事では、都議選の概要とその投票率に注目しながら、「投票の意義」と「市民としての関わり」について考察していきます。
■ 都議会議員選挙とは？
東京都議会議員選挙（都議選）は、東京都における立法機関である東京都議会の議員を選出する選挙で、定数127人の議員を選びます。東京都には、政令指定都市と同様、条例の制定・予算の決定など、都民生活に密接に関わる決定を行う議会が存在します。都議会で決まる政策は、福祉、教育、医療、防災、インフラなど、その影響は多岐にわたります。そのため、都議会議員の選出は、都民一人ひとりの暮らしに直結すると言っても過言ではありません。
■ 投票率47.59%とは？
今回の選挙で注目されたのは、投票率が前回を5ポイント以上上回ったという点です。2021年の投票率は42.39%。今回の47.59%という数字は有権者の約半数にあたりますが、やはり「投票しない約半分」が存在するという事実も重く受け止める必要があります。選挙のたびに課題とされる「投票率の低さ」は、政治参加の意識の高まりと相反する形で、継続的なテーマです。
低投票率の理由には、政治や政策への関心の低さ、候補者への不信感、情報不足、手続きの煩雑さなどが挙げられます。一方で、今回の投票率向上は、2023年以降都政に影響を与えてきたさまざまな社会課題への関心の高まりが要因ともされています。
■ なぜ投票することが大切なのか？
選挙権は、国民一人ひとりに与えられた「政治参加の権利」であると同時に「責任」でもあります。選挙とは、単に候補者を選ぶ行為ではなく、自分自身の将来、社会の在り方、生活環境をどのようにしていきたいかという意思を表す行動です。そして有権者一人ひとりの声が集まって、議会の構成が決まり、それが政策や予算として形になっていくのです。
もし自分の望む社会像があるならば、その思いに近い候補者に一票を投じ、その候補者が議会で活動できるよう支えることが、変化への第一歩になります。逆に、投票に行かなければ、自分の声を政治に届ける機会を失ってしまうことになります。
■ 世代間ギャップと投票率
近年、若年層の投票率の低さが特に指摘されています。総務省の統計によれば、20代を中心とする若年層の投票率は高齢者層に比べて著しく低い傾向にあります。これは「自分には関係ない」という意識や、情報が届きにくいことが主な原因と言われています。しかし、教育、雇用、結婚、出産、子育てなど、若い世代こそ政治の影響を強く受ける場面は多々あります。
その意味でも、今回の都議選で若い世代の政治参加がどれほどあったのかが今後の分析において鍵になります。インターネットやSNSを通じた政策比較のツールも普及しつつある中で、若者世代の意識の変化が今後の選挙にも影を落とす可能性があります。
■ 地域と政治のつながり
都議選は国政選挙とは異なり、より地域に密着した課題を扱います。たとえば、保育所の整備、学校教育の充実、通学路の安全確保、高齢者介護の体制、地域医療の充実、災害への備えなど、その一つひとつが生活に直結しています。そうした問題に真正面から向き合うのが、東京都議会です。
地域コミュニティに住む一人として、「誰が自分たちのまちの代表となるべきか」を選ぶことは、「自分たちの住む場所をどうしたいか」を具体的に考えるきっかけにもなります。政治が遠い存在ではなく、自分ごとであるという認識を持つことが、都政の変化を促す第一歩です。
■ より良い投票率を目指して
改善の余地があるとはいえ、今回の47.59%という数字は、「少しでも多くの人が意識的に一票を行使した」というポジティブな捉え方もできます。一方で、日本では依然として選挙のたびに「半数前後の人が投票に行かない」という現実が続いています。これは一部の意見のみが政治に反映される構造を生み出す原因ともなり得ます。
私たちが次にできることは何でしょうか？
それは、「選挙の情報を知る」「政策を比較する」「周囲と選挙について話す」といった地道で小さな行動から始まります。政治的な立場に偏ることなく、「未来をどうしたいか」「生活をどう良くしたいか」という視点から、自分自身の一票を大切にすることが、結果として社会全体の前進にもつながるのではないでしょうか。
■ おわりに
東京都議会議員選挙の投票率が上昇したことは、都民の参画意識の一端を示す明るい兆しでもあります。一方で、まだ多くの人が「投票に行かない選択」をしている現実も忘れてはなりません。「一票の力で何かが変わるのか？」という疑念はもっともですが、その一票が束になれば確実に政治を動かす力になります。
私たちは日々、教育、医療、福祉、労働、環境、防災など数多くの社会システムと関わって生活しています。だからこそ「私には関係ない」と感じる前に、「私たちの暮らしにどう影響するのか？」を見つめることが求められているのです。
次回の選挙では、今よりも多くの人が「行動する市民」として一歩を踏み出せるような社会になることを願い、自らの姿勢もまた問い直していきましょう。未来は、一人ひとりの手の中にあります。
