自己肯定感に悩むあなたへ——専門家が語る自己理解と変化のヒント
私たちの心の中には、自分自身をどう見るかという「自己肯定感」が大きな影響を与えています。自己肯定感とは、簡単に言えば「私は私でいい」と思える心の感覚のこと。近年、特にSNSの普及や社会全体の価値観の多様化により、「他人と比べてしまう」「自信が持てない」といった声が増えています。
2024年5月6日、NHK総合の特集「なぜあなたは自分が嫌いなのか」では、自己肯定感に悩む人々の声を取り上げ、精神科医や心理カウンセラーなどの識者がその原因や対処法について解説しました。この記事では、番組で紹介された識者の考えや現代人が自己肯定感を高めるためにできることについて、わかりやすくまとめていきたいと思います。
自己肯定感とは何か？
まず自己肯定感とは、単なる自信や成功体験だけではなく、「ありのままの自分を受け入れる感覚」を指します。何かができた、評価されたなどの“結果”によるものではなく、結果に関わらず「自分には価値がある」と思える基盤が自己肯定感です。
精神科医の高橋祥友氏は、自己肯定感が低い人ほど「失敗を極端に恐れる」「人に迷惑をかけまいと過剰に気を遣う」傾向にあると説明します。その結果、自分の意見が言えなかったり、誰かに頼ることができなかったりと、日常の中で“自分らしさ”を出すことが難しくなってしまいます。
なぜ自己肯定感が低くなるのか？
自己肯定感が低くなる理由は一つではありません。心理学の分野では、育ってきた家庭環境、学校や職場での人間関係、また過去の経験やトラウマが深く関係していると考えられています。
一例として、幼い頃に「○○しないとダメ」「期待通りにできないと意味がない」といった言葉を繰り返し聞かされてきた人は、自分の行動や存在そのものに「条件」が必要だと感じてしまいがちです。つまり、「○○できる自分でなければ価値がない」と思い込んでしまい、何らかの失敗や他人との比較によって自己否定の感情が湧き上がってしまうのです。
また、現代ではSNSなどを通じて常に他人の「成功」や「充実した生活」を目にする機会が多くなり、「自分は遅れている」「自分なんて何も持っていない」と感じやすい傾向もあります。
自己肯定感を高めるためにできること
では、どうすれば自己肯定感を少しでも高めることができるのでしょうか？識者たちはいくつかの鍵となるアプローチを紹介していました。
1. 自分を「否定する言葉」に気づく
心理カウンセラーの山田千紗さんは、「自己肯定感が低い人は、無意識のうちに“自分責め”をしている」と指摘します。たとえば、「自分はダメだ」「こんなこともできない」といった心の声に気づいたときは、まずそのネガティブな言葉を自覚しましょう。
自覚するだけでも「自分の思考パターン」に気づく第一歩になります。そして、その後に「本当にそう考える必要があるのか？」「それを友達が言われたらどう感じるか？」と問い直すことが大切です。
2. 完璧を求めすぎない
自己肯定感が低い人ほど“完璧主義”に陥りがちです。でも、覚えておいてほしいのは、「完璧」である必要など一切ないということ。人間には失敗がつきもので、むしろ失敗こそが成長のきっかけになります。
精神科医の高橋氏も、「小さな失敗や欠点をゆるし、自分を人間らしい存在として見ることで、自己肯定感は取り戻せる」と述べています。他人に寛容であるように、自分にも寛容になってみませんか？
3. 「できたこと」を見つける習慣
自己肯定感を高めるには、「良いところを見つける」習慣が非常に効果的です。その日の終わりに、「今日はこんなことができた」「あのとき、ちゃんと自分の意見を言えた」といった小さな成功を思い出し、紙に書き出すのもおすすめです。
これを毎日続けていると、自分でも気づかなかった長所や努力に目を向けられるようになっていきます。習慣は力になります。最初は難しくても、一歩ずつ自分を認めるトレーニングを積み重ねていきましょう。
4. 他人と比べない
もちろん、誰かと自分を比べてしまうこと自体は悪いことではありません。ただし、「だから自分はダメだ」とする発想になったとき、自己肯定感は揺らいでしまいます。
大切なのは、「他人と比べて劣っている」と感じるのではなく、「人それぞれに違いがある」と理解すること。ある人にはある人の強みがあり、あなたにはあなたならではの魅力があります。自分のペースで進むことが尊重されていいのです。
心のケアも大切、ひとりで抱え込まないで
もし自己否定の感情が続き、日常生活にも支障を来すようになっている場合は、専門のカウンセラーや精神科医に相談することもぜひ検討してほしいと識者たちは話しています。
カウンセリングを受けることは、決して「弱さ」ではありません。自分を大切にする最初の一歩として、必要なサポートを受けることはとても自然で価値あることです。
まとめ：自己肯定感は「育てる」もの
自己肯定感は、生まれつきではなく「後から育てる」ことができると専門家たちは口をそろえます。落ち込んでいるとき、うまくいかないと感じるとき、誰かとくらべて自信を失いそうなとき、まずは自分自身に少しだけ優しくなってみることから始めてみませんか？
「ダメ」な自分を否定するのではなく、「そういう時もある」と受け入れる視点を持てると、少しずつ心が軽くなり、ありのままの自分に価値を見いだせるようになっていきます。
あなたはあなたで、すでに十分に価値のある存在です。このことを忘れずに、一日一日を大切に過ごしていきましょう。
