近年、SNSや各メディアで「デス活（デスカツ）」という新しい言葉が若者の間で注目を集めています。「死」と聞くと多くの方がマイナスなイメージを抱くかもしれませんが、この「デス活」はむしろ死を忌避するものではなく、死と真剣に向き合いながら、今をどう生きるかに焦点を当てた前向きなライフスタイルの一部として注目されています。
今回は、「若者の『デス活』死を前向きに」というYahoo!ニュース（参考元：https://news.yahoo.co.jp/pickup/6542919?source=rss）の特集をもとに、現代の若者が何をきっかけに「死」に向き合い、そこからどのような気づきや生き方を見出しているのかについて考えてみたいと思います。
「デス活」とは？ ― 死を見つめる、生を見直す
「デス活」とは、英語の「Death（死）」と「活動」を組み合わせた造語で、死に対する理解を深めたり、終末期に備えた準備、さらには死について考えることで、今をよりよく生きることを目的とした活動を指します。従来は高齢者が自分の最期を考え、終活の一環として行うものでしたが、この記事では若者世代、とくに20～30代の人々が自発的に「デス活」を行っている実態が紹介されています。
デス活に取り組む若者たちは、エンディングノートを書いたり、墓地や納骨堂を見学したり、自分の葬儀について考えたりすることで、「自分の命の使い方」を再認識しているといいます。このような取り組みは一見するとネガティブにも見えますが、彼らが声を揃えて言うのは、「死と向き合うことで、むしろ今をどう生きるかが鮮明になる」ということ。つまり、死という限りあるものを想定することで、かえって日々の生活や人との関係性、さらには人生の選択に対して誠実になれるという発見が得られているのです。
デス活が広がる背景には何があるのか？
若者たちが「死」について真剣に向き合い始めた背景にはいくつかの要因があります。まずコロナ禍の影響が大きいと言われています。突然の感染症の拡大や著名人の急死などにより、「人はいつか必ず死ぬ」という現実が一層身近に感じられるようになりました。
また、SNSなどのデジタル空間を通じて死に関する考えやストーリーが可視化されたことも大きな要因です。日々目にする訃報や追悼コメント、人々の「最期」を巡るエピソードが、死に対する関心や態度を変化させていると考えられます。
さらに精神的な意味でも、「生きづらさ」や「不安定な社会情勢」に直面する若者たちが、「死をみつめること」によって、現在地を確かめたり、自分なりの生き方を模索する手がかりを求めている傾向もあります。
死をポジティブに捉えるという転換
関心を引くのは、「死」をネガティブなものとしてだけではなく、人生を見つめ直す契機としてポジティブに捉える若者が増えている点です。ある若者は「死を想像すると、やりたくないことを無理に続けるのはもったいないと感じた」と語ります。別の若者は「限りある時間を意識することで、今この瞬間を大切に思えるようになった」といいます。
これはまさに、死を恐れるのではなく、「死を正直に見つめることで生の質を高めていく」姿勢ともいえるでしょう。日本では長らく、死について語ることを「縁起でもない」「不謹慎」として避ける雰囲気がありましたが、そういった風潮に一石を投じる価値のあるムーブメントだと言えます。
デスカフェや体験型のイベントも人気
記事によると、若者の間で「デス活」に関心が高まるにつれ、「デスカフェ」と呼ばれるイベントも人気を集めているとのことです。デスカフェとは、参加者がリラックスした雰囲気の中で死について語り合うイベントで、全国各地で開催されています。宗教的な制約もなく、誰でも気軽に参加できることから、若者や学生の参加も増えているそうです。
また、実際に火葬体験をVRで模擬体験できるイベントや、エンディングノートのワークショップなども行われていて、「死を知る」こと自体が一種の自己成長や癒しの機会として認識されつつあります。これらの体験を通じて、「死ぬときに後悔したくない」「やりたいことを先延ばしにしない」といった価値観を育む若者が増えています。
「今をどう生きるか」の指針として
「デス活」という一見センセーショナルな言葉の背景には、現代を生きる若者たちの深い自己認識と不安、そして希望があります。限りある命だからこそ、自分に正直に、自分自身の価値観を大切に生きていこうとする姿勢がこのムーブメントを支えています。
たとえば、「死ぬまでにやりたいことリスト（バケットリスト）」を作る若者も増えているといいます。これは、死を意識することでむしろ「生」をアクティブにしていく行動の一例です。「自分は何に情熱を持ち、何を残していきたいのか」、それに気づくことで、人間関係やキャリア選択、ライフスタイルに対する見え方も大きく変わってくるのでしょう。
おわりに ― 死は、生を見つめる鏡
「死を見つめる」という行為は決して暗いものではありません。それはむしろ、「生きる意味とは何か」「今をどう生きるべきか」という問いに真摯に向き合うための入り口でもあります。「デス活」に取り組む若者たちは、未知である死を恐れすぎず、真剣に受け止めることで、かえって自分らしい生き方を手にしています。
人生をより充実させたいと思っている方にとって、この「デス活」はひとつの有効なヒントを与えてくれるかもしれません。私たちもまた、自分がどんな人生を送りたいのか、何を大切にしたいのか、そして最後の瞬間をどのように迎えたいのか――そんな問いと向き合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。それこそが、「生を輝かせる」第一歩となるに違いありません。
