暑い季節には、手軽に水分補給ができるスポーツドリンクを口にする機会が増えます。熱中症対策としても推奨されることが多いスポーツドリンクですが、実はその飲み方によっては健康に悪影響を及ぼす恐れがあることをご存じでしょうか?特に問題視されているのが「ペットボトル症候群」と呼ばれる症状です。
今回は、スポーツドリンクの特性とペットボトル症候群の関係、そして正しい水分補給の方法について分かりやすく解説します。暑くなるこれからの季節に向けて、スポーツドリンクとの上手な付き合い方を一緒に学んでいきましょう。
スポーツドリンクとは何か?
スポーツドリンクとは、運動中に失われる水分や電解質(ナトリウムやカリウム)を効率的に補給できるように設計された飲料です。一般的に、砂糖やブドウ糖、塩分、ビタミンなどが含まれており、すばやく体に吸収されやすいという特徴があります。また、味がやや甘めで飲みやすいことも人気の理由の一つです。
スポーツや屋外での作業時には、ただの水よりも適度な塩分や糖分を含んだスポーツドリンクの方が、体への吸収が早く脱水症状を防ぎやすいと言われています。熱中症予防としても推奨されることが多く、特に夏にはコンビニやスーパーなどでよく売れる商品の一つとなっています。
しかし、便利で体に良さそうなイメージのあるスポーツドリンクにも落とし穴が存在します。それが「ペットボトル症候群」と呼ばれる症状です。
ペットボトル症候群とは?
ペットボトル症候群とは、医学的には「ソフトドリンクケトアシドーシス(清涼飲料水性ケトアシドーシス)」と呼ばれる病気のことで、糖分を多く含んだ清涼飲料水を日常的に多く摂取することによって起こる急性の病態です。
この症候群の主な原因は、清涼飲料水に含まれる大量の糖分。スポーツドリンクや炭酸飲料、ジュースなどには想像以上の糖分が含まれており、例えば500mlのペットボトル1本で角砂糖にすると約8〜10個分にもなると言われています。
糖分を過剰に摂取すると、血糖値が一気に上がります。それにより身体はインスリンを分泌して血糖値を下げようとしますが、糖に対する代謝がうまくいかないと、血液中にケトン体が増加し、最終的には体が酸性に傾いてしまう「ケトアシドーシス」という状態に陥ります。
特に、暑さによりのどの渇きを感じやすい夏場に、清涼飲料水を「水代わり」に頻繁に飲んでいると、この症状が起きやすくなるのです。
症状としては、喉の渇き、頻尿、嘔吐、倦怠感、体重減少などがあり、重症化すると意識障害や昏睡状態に陥ることもあります。症状が進んでから気づくことが多いため、早期発見と普段からの予防が重要です。
若者や働き盛りの世代にも増加中
かつては糖尿病をもつ高齢者などに多く見られたペットボトル症候群ですが、近年では体に不調を感じにくい若者や働き盛りの世代にも増加傾向にあります。
朝から晩まで仕事や学業に追われ、つい喉が渇いて手軽に飲めるペットボトル飲料に頼ってしまうという生活習慣が原因とされます。また、ダイエット中の人が「食事の代わりにカロリー補給としてスポーツドリンクを選ぶ」といったケースも問題となることがあります。
「のどが渇いたらスポーツドリンク」「スポーツをしてないのに何となく飲んでいる」「いつでもバッグに1本常備している」という習慣には注意が必要です。無意識のうちに1日1リットル以上もの糖分を摂取しているというケースも現実にあります。
子どもや高齢者も要注意
免疫力や代謝機能が未発達な子どもや、代謝が落ちている高齢者にとっても、ペットボトル症候群は見過ごせないリスクです。甘さに親しみを感じやすい子どもは、ジュースやスポーツドリンクを好みやすく、つい摂取量が増えがちです。大人が気を付けて管理してあげることで、子どもの健康を守ることができます。
また、高齢者の場合、水分補給が難しい、脱水に気づきにくいという問題から、糖分を含んだ飲料を与えてしまうことがあるため、医療・福祉関係者の間でも注意が呼びかけられています。
健康的な水分補給のポイント
では、どのようにすればペットボトル症候群を予防できるのでしょうか?以下のポイントを意識することで、より健康的な水分補給を心がけることができます。
1. 清涼飲料水を水代わりにしない
スポーツドリンクはあくまで「運動時」や「大量の発汗時」に適した飲料です。日常の水分補給には、基本的に「水」や「お茶」を選びましょう。コーヒーやアルコールは利尿作用があるため、水分補給としては不適切な場合もあります。
2. ラベルに注目して糖分を確認
ペットボトル裏面の栄養成分表示を確認し、糖質の量に注意を払いましょう。例えば、100mlあたり5gの糖分が含まれている場合、500mlのボトルでは25g程度の糖分となります。これは角砂糖約7個分に相当します。
3. 飲み残しに注意する
時間をかけてダラダラ飲むことで、摂取量が増えるだけでなく、虫歯のリスクも高くなります。飲み残しを常に持ち歩くような習慣はできるだけ避け、飲むときは適量を心がけましょう。
4. ノンシュガータイプや薄めて飲む工夫を
最近では、糖分を控えたスポーツドリンクや、パウダータイプの製品を自分で調整して薄く作ることが可能な商品も増えています。こうした工夫でリスクを減らすことが可能です。
5. 気になる症状があれば医師の診断を受ける
強い喉の渇きや体重減少、倦怠感など、「いつもと違うな」と感じたときは、医療機関での受診をおすすめします。早期発見・早期対応が重症化を防ぎます。
まとめ
スポーツドリンクは、正しく飲めば身体にとってとても役立つ飲料です。しかし、飲み方を誤ると「ペットボトル症候群」という深刻な健康被害を引き起こす可能性もあります。
とくに夏場はつい水分補給に清涼飲料水を選びがちですが、「飲み方」と「量」に注意を払うことが大切です。日々の生活の中で無意識に摂っている糖分に少しだけ目を向け、バランスの取れた水分補給を心がけましょう。
家族や友人、職場でもこの話題を共有することで、より多くの人が健康的な夏を過ごすことができるはずです。スポーツドリンクと上手に付き合い、この夏を元気に乗り越えましょう。