2024年、日本の伝統文化の一つである大相撲の世界に、実に35年ぶりとなる英国出身力士が誕生しようとしています。これは日本国内だけでなく、国際的にも注目される出来事です。長い歴史を持つ大相撲という競技の中にあって、海外からの力士参入は常に話題となってきましたが、今回の英国出身の力士誕生は、その特異性と背景から多くの人々の関心を集めています。
■ 英国出身の若者、スコットランドから大相撲の土俵へ
今回話題となっているのは、スコットランド出身のジェイミー・カースウェルさん(18歳)です。彼はこれから、本格的に日本の相撲部屋に入門し、力士としての第一歩を踏み出します。これが実現すれば、1980年代後半に活躍した英国出身の力士・スコットランド生まれのヘンリー・アームストロングさん以来、約35年ぶりの英国力士となります。
カースウェルさんは幼少期からレスリングやスポーツに親しみ、体格に恵まれた若者でした。その中で相撲に興味を持ち、やがて日本の文化や伝統に惹かれていったといいます。日本語も熱心に学び、日本への移住を決意。今後は茨城県つくば市にある境川部屋に入門し、相撲道に打ち込むことになります。
■ 相撲との出会い、そして日本文化への憧れ
カースウェルさんが相撲に出会ったのは、地元で開催されたアマチュア相撲イベントがきっかけでした。日本から来た指導者が子どもたちに相撲を教えるという体験イベントに参加したことで、その独特の世界観に魅了されたと言います。その後、相撲の歴史や精神を独学で学び、さらにコミュニティを通じて経験を重ねていきました。
英国ではまだ相撲の知名度は高くありませんが、BBCなどの報道機関を通じて、日本文化の一部として認知されており、「サムライ」「禅」「抹茶」といったキーワードと同じように、日本独自の文化としてじわじわと浸透しています。カースウェルさんのように相撲に強い関心を持ち、自らの人生の一部としようという若者が現れたことは、日本にとっても大変喜ばしいことと言えるでしょう。
■ 境川部屋で始まる本格修行、厳しい道のりも覚悟
力士として歩み始めるには、まず部屋に入門し、日々の稽古や生活習慣に適応する必要があります。これは日本人でも相当な覚悟と努力が必要なことですが、外国出身力士にとっては言語や文化の違いもあり、さらにハードルが高くなります。しかしカースウェルさんは、相撲の厳しさや求められる規律を理解した上で、あえてその道を選びました。
境川部屋はこれまでも多くの外国人力士を受け入れてきた実績があり、指導も丁寧であると知られています。師匠である元小結・両国による指導のもとで、相撲の基礎から生活までを学ぶことになります。現在は身長約190センチ、体重130キロ台と、既に相撲取りとして恵まれた体格を持つカースウェルさんですが、ここからさらに筋肉と技術を磨き、本物の力士として育っていく予定です。
■ グローバル化する相撲界、広がる可能性
かつては日本人力士のみで構成されていた大相撲の世界も、今ではモンゴル出身の横綱やロシア、ジョージア、エジプトなど、さまざまな国から来た力士たちが活躍しています。こうした背景には、相撲を取り巻く環境の変化があり、国技としての側面を持ちつつも、国際的なスポーツとして発展していこうという相撲協会の意思が見て取れます。
カースウェルさんのような新たな外国出身力士の登場は、相撲界の多様性に拍車をかけ、世界中に相撲の魅力をさらに広めてくれる可能性を秘めています。そしてそれは、見て楽しむ側の私たちにとっても、新しい視点や物語をもたらしてくれることでしょう。
■ 英国と日本をつなぐ架け橋となる存在へ
今後、カースウェルさんがどのような力士として成長を遂げていくのかは未知数ですが、彼の存在はイギリスと日本、スポーツと文化、伝統と未来をつなぐ架け橋であることは間違いありません。もし高い地位にまで登り詰めれば、それは世界の若者たちに「自分もチャレンジできる」という明確な希望を与えるはずです。
2025年春場所での初土俵を目指してトレーニングを始めたカースウェルさんは、まず体力と技術を身につけ、番付に名前が載ることを目指します。その後は、番付を一段一段登り、関取として名を知られる存在になることが目標です。
■ 最後に
相撲という日本の伝統文化に、英国出身の若者が新たな風を吹き込もうとしています。それは私たちにとって、ただのスポーツニュースではなく、文化や価値観の多様性、そして相互理解の一歩でもあります。カースウェルさんの今後の成長に期待するとともに、改めて相撲という競技の素晴らしさ、そしてそれを受け入れる日本文化の懐の深さに注目していきたいと思います。
彼の挑戦は始まったばかりです。今後の取組や活躍に目が離せません。そして、このニュースが世界中の若者たちへ、新しい夢や可能性を届けるきっかけになれば、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。