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集団食中毒を引き起こす「ウエルシュ菌」の正体とは?釧路の中学校で発生した事例から学ぶ予防と対策

2024年6月現在、日本国内で相次いで発生する食中毒事件の中で、特に注目を集めているのが「ウエルシュ菌」による食中毒の事例です。今回、北海道釧路市の市立中学校2校において、合計106人の生徒がウエルシュ菌を原因とする集団食中毒にかかっていたことが、釧路保健所の調査によって明らかになりました。比較的身近で耳慣れないこの「ウエルシュ菌」による食中毒について、事件の概要と今後の教訓、予防のポイントをまとめ、一般家庭や学校施設などでも役立てられる情報をお届けします。

■ 事件の概要:釧路市の中学校で発生した集団食中毒

2024年6月、北海道釧路市にある市立中学校2校において、給食を食べた生徒ら106人が下痢や腹痛などの症状を訴える食中毒が発生しました。釧路総合振興局保健環境部保健行政室(釧路保健所)の調査によって、原因は「ウエルシュ菌」によるものであることが判明しました。

患者は10代を中心とした生徒や教職員で、症状の報告は給食後数時間から翌日にかけて現れています。幸いなことに、重症者は確認されておらず、すべて軽症だったとのことです。しかし、集団感染という点では見逃せない事案で、保健所は関連する学校給食の調理・配膳や保存の過程についても精査を進めています。

■ ウエルシュ菌とは?身近に潜むリスク

今回の主原因とされる「ウエルシュ菌」とは、土壌や動物、人間の腸内にも存在する常在菌の一種で、空気に触れない嫌気性の環境で増殖する性質があります。

この菌が問題となるのは、加熱調理後の料理が常温で長時間放置された場合などに芽胞(がほう:耐熱性の強い菌のかたまり)として生き残り、冷却が不十分だと再び菌が繁殖してしまう点です。特に、大量調理された料理で冷却・再加熱が不十分な場合には、ウエルシュ菌が爆発的に増殖しやすくなります。

ウエルシュ菌による食中毒は「多くの人が同じタイミングで調理された食事を食べる」ことが多い学校や病院、老人ホーム、企業の社員食堂などで起きやすく、年に数件から十数件が全国で報告されています。

■ 症状と潜伏期間、一過性だが注意が必要

ウエルシュ菌による食中毒の症状は、主に腹痛、下痢、時には軽い吐き気を伴いますが、嘔吐や発熱はあまり見られません。潜伏期間は6~18時間が一般的で、症状は比較的軽く、1~2日で自然に回復することが多いとされています。

しかし、高齢者や乳幼児、また基礎疾患を抱えている方にとっては、脱水や体力の低下を招く可能性もありますので、油断はできません。また、集団発生した場合には、対応や検査、衛生管理の見直しなどで学校や医療機関、行政機関に負担を強いることになります。

■ 学校や家庭でもできる食中毒予防のポイント

今回の事例を受け、改めて私たちが日常生活の中で気をつけるべき食中毒対策を見直すきっかけになります。特に「ウエルシュ菌」は日常的な調理環境に潜みやすいため、以下の点に注意することが大切です。

1. 長時間常温で食品を放置しない
ウエルシュ菌は60℃以下の温度帯で急速に増殖します。作り置きのおかずやカレー、シチューなどを一晩常温で冷ますと、菌が増えやすくなります。調理後はすぐに冷却し、冷蔵庫で保存するようにしましょう。

2. 再加熱はしっかりと
一度調理した料理を翌日や再度食べる際には、中心温度75℃以上で1分以上を目安にしっかり加熱してください。中途半端な加熱では芽胞が残ってしまいます。

3. 清潔な衛生環境を保つ
調理器具や手指、加熱調理前の食材などは常に清潔に保ちましょう。学校給食施設では、調理員の衛生教育やチェック体制の強化も重要です。

4. 大量調理時には特に注意を
大人数分を調理するイベントや家庭でも、ご飯やスープを大きな鍋で作ったまま放置しないでください。浅い容器に小分けして冷却する、冷却装置を導入するなど工夫が求められます。

■ 日常からできる心がけが、食の安全につながる

食中毒というと「生もの」「夏場」が起こしやすいと思われがちですが、ウエルシュ菌のように調理済みの加熱食品が原因となるものも決して少なくありません。学校や施設だけでなく、一般家庭でもこのような知識を持って食の安全に意識を向けることが、将来的な事故の防止につながります。

また、学校給食という場では、小さなミスが多くの生徒の健康に影響するため、衛生管理の徹底は一層重要です。今回の釧路での事例を受けて、全国の学校や給食施設でも再発防止策が取られることが期待されます。

■ 最後に:共に「食の安全」を育てていこう

食事は毎日欠かせない営みであると同時に、健康を守る上で大きな役割を果たしています。家庭でも施設でも、ひとり一人が調理や保存、衛生の基本をしっかり実践することが、多くの人を守ることにつながります。

今回の食中毒によって体調を崩された生徒さん達の早い回復を願うとともに、私たちも「食の安全」の知識と意識を持ち続けることで、安心して食卓を囲める社会づくりに貢献していきましょう。