世界経済フォーラム(WEF)が発表した2024年の「ジェンダー・ギャップ指数(Global Gender Gap Index)」に関する調査において、日本は対象となる148カ国中118位という結果となりました。この結果は、前年の125位からわずかに順位を上げたものの、依然として先進国では最下位級の水準にとどまっています。本記事では、今回の調査結果の背景を整理しつつ、日本における男女平等の現状と今後の課題についてわかりやすく解説します。
■ ジェンダー・ギャップ指数とは?
まず初めに、ジェンダー・ギャップ指数とは何かをご説明しましょう。ジェンダー・ギャップ指数は、世界経済フォーラム(WEF)が2006年から毎年公表しているもので、男女間の「格差」を測定することを目的としています。
調査は主に以下の4分野に分けて評価されます。
1. 経済参加と機会(労働力参加率、所得格差、管理職比率など)
2. 教育到達度(基礎教育から高等教育の就学率など)
3. 健康と生存(出生時の性比、平均寿命など)
4. 政治的エンパワーメント(国会議員や閣僚の女性比率など)
これらの指標に基づいて、男女の平等性を0〜1の値でスコア化し、スコアが1に近いほど格差が小さく、男女平等が実現されていることを示します。
■ 日本のスコアと順位
2024年の調査で、日本のスコアは0.647で、全体の118位となりました。参考までに、主要先進国の順位をみると、例えばドイツは7位、フランスが15位、アメリカが43位、韓国が105位であり、日本の順位はこれらの国々に比べて低い水準にとどまっています。
特に日本は「政治的エンパワーメント」と「経済参加と機会」のスコアが顕著に低いことが、全体の順位を押し下げている大きな要因とされています。
■ なぜ日本の順位が低いのか?
日本における男女平等の取り組みや女性活躍推進政策は、近年数多く実施されてきましたが、実際には数字としてなかなか成果が現れていないという現実もあります。
1. 政治分野での女性進出の遅れ
とりわけ政治分野における女性の進出は依然として限定的です。2023年時点において、衆議院の女性議員比率は約10%にとどまっており、これはOECD加盟国の中でも下位に位置します。閣僚経験者にも男性が多く、地方自治体レベルでも女性首長は少数派です。
2. 管理職・役員層での女性比率の低さ
企業に目を向けても、女性管理職や役員の数はまだまだ十分とは言えません。政府は「2020年までに女性管理職の比率を30%に」という目標を掲げていましたが、実現には至らず、その後も目標達成の時期が延長されている状況です。
実際、日本の上場企業における女性役員の割合は1割にも満たない企業が多数を占めています。制度の整備は進んできたものの、実際の意識や文化的背景において変革が伴っていないことが問題視されています。
3. 男女間の賃金格差
同じ仕事をしていても、女性の方が男性よりも賃金が低い傾向があります。厚生労働省の調査によれば、女性の平均賃金は男性の約75%程度であり、これも先進国の中では低い水準です。正社員・非正規雇用の比率や、キャリアアップの機会の差など複合的な要因が絡んでいます。
■ ポジティブな変化も
一方で、決して暗いニュースばかりではありません。ここ数年、社会全体でジェンダー平等に対する意識が高まり、少しずつではありますが前向きな変化も見られます。
例えば企業の中には、自主的に女性役員を積極的に登用したり、育児休業制度を男女ともに利用しやすい形で整備したりする動きが拡大しています。また、若い世代では「ジェンダーにとらわれない働き方」への関心が高く、学生時代からそのような価値観を身につけているケースも珍しくありません。
さらに、各種メディアやSNSなどでジェンダー問題が大きく取り上げられるようになり、社会全体での議論が活発化していることも変化の一環といえるでしょう。
■ これから求められること
日本がこれからジェンダー・ギャップを縮小し、より平等な社会を実現していくためには、以下のようなアプローチが必要です。
1. 制度だけでなく文化的・意識的改革
法律や制度の整備はもちろん重要ですが、それだけでは十分とは言えません。根本的な意識改革が求められます。例えば「男性が働き手、女性が家庭を支えるべき」といった固定観念の見直し、高校や大学といった教育の場におけるジェンダー教育の徹底が求められます。
2. 育児・介護と仕事の両立支援
男女にかかわらず子育てや介護をしながら働ける環境整備も重要です。育児休業の取得を義務的に推進したり、在宅勤務制度を柔軟に活用できるようにすることで、ライフステージに応じた多様な働き方が可能になります。
3. 女性のリーダーを育成・支援する仕組み
女性がリーダーシップを発揮するためには、教育や研修の機会を充実させることが不可欠です。企業や自治体においても、積極的に女性を登用できる環境・仕組みを構築することが鍵となるでしょう。
■ 世界のベストパフォーマーに学ぶ
なお、今回の調査で上位にランクインした国々はアイスランド(1位)、ノルウェー、フィンランド、ニュージーランドなど北欧諸国が中心です。これらの国々では、非常に高い水準でジェンダー平等が達成されており、その要因として政治の意思決定における男女比率のバランス、育児とキャリアの両立の支援制度、意識の啓蒙などが挙げられます。
これらの国々の事例から学び、日本が置かれている現状に応じた取り組みを実行することで、将来的にはより高いスコアを獲得することも不可能ではありません。
■ さいごに
日本が2024年のジェンダー・ギャップ指数で118位という結果となった背景には、複雑で長期的な課題が横たわっています。一方で、社会全体の意識が変化しつつある今こそ、制度・文化・意識の各側面から改革を進める絶好のチャンスでもあります。
ジェンダー平等は、女性のためだけでなく、すべての人々にとってより良い社会を築くために欠かせない価値です。こうした調査結果をきっかけに、私たち一人ひとりが日々の選択や行動を改めて見直し、より包括的な社会を目指していきたいものです。