立憲原口氏「古古古米は人間食べず」発言が物議──食料支援の在り方を考える
2024年7月初旬、立憲民主党の原口一博衆議院議員が、国会内の会合で「（ウクライナ避難民に提供された）古古古米は人間の食べるものではない」旨の発言をしたことが、大きな波紋を呼んでいます。この発言は、SNSや各種メディアを通じて瞬く間に広まり、国内外のさまざまな意見を巻き起こしました。一方で、この一件は単なる失言騒動にとどまらず、日本の食料支援の実態や支援物資の管理体制にまで光を当てる契機となっています。
本記事では、原口議員の発言の経緯と背景、そしてこの問題を通して私たちが考えるべき「食料支援の姿」について詳しく掘り下げていきます。
発言の背景と問題提起
発端は、2022年から続くウクライナ情勢に関連して、日本政府が同国からの避難民に一部で提供したとされる古米、さらに期間が経過した「古古古米」に関する議論でした。原口氏は国会内での会合にて「人間が食べるものではない」と発言。これに対し、支援活動の関係者らからは「人道支援の精神に反する」「物資提供の現場を知らない発言」との批判が上がりました。
一方、原口氏は「提供された米が劣化しており、健康を害する恐れがある」とし、安全性に懸念があった点を強調。発言は避難民への尊厳を守るためであったと釈明しています。
「古古古米」とは？背景にある食糧管理の課題
一般的に、「古米」とは収穫から1年、またはそれ以上経過した米のことを指します。さらに古くなると「古古米」「古古古米」と呼ばれる場合がありますが、これらは正式な分類ではなく、時間経過を分かりやすく伝える俗称です。
米は保存状態によって品質に大きく差が出ます。適切に管理された真空保存などであれば、数年経っても美味しく食べられることもありますが、高温多湿な環境下で保管されれば風味や栄養価、さらには安全性にまで悪影響が出る可能性があります。
日本の備蓄米制度では、「加工、家畜用」「飼料用」「人道支援」など用途に応じた管理・運用がされており、その基準内で人道支援に適すると判断された米が使用されています。しかしながら、万が一保存管理が不十分で品質が低下していたのであれば、それは制度の改善が求められる重要な指摘とも言えます。
批判の的となった言葉選び
本件で強く批判が集まったのは、情報提供において「人間が食べるものではない」といった表現でした。支援を受ける人々の尊厳を損ねる可能性がある言葉のチョイスは、慎重さが求められるものです。政治家であるという立場上、社会的影響の大きさを踏まえた発言が求められるのは言うまでもありません。
一方で、発言の意図が「食の安全性を守る」「劣化した食糧が意図せず支援に用いられている実態を問い直す」ことにあるのだとすれば、その根底には「より良い支援のあり方」を模索する想いがあったとも考えられます。
それだけに、今回の件は「社会問題への指摘が表現次第で受け取り方が全く変わる」好例ともいえます。伝えたいメッセージへの共感を得るには、表現の丁寧さが決定的に重要であるという教訓にもなりました。
私たちが考えるべき「食料支援の形」
ウクライナ危機や日本国内の災害支援を通じて、食料の支援は今や非常に重要な人道課題となっています。この中で私たちが考えなければならないのは、「物資の量」や「保存性」のみならず、「質」や「尊厳」といった、人間の営みの根幹に関わる問題です。
人道的観点から考えると、支援先の人々にも「おいしい食事を受け取る権利」があります。災害支援などの非常時だからこそ、少しでも普通に近い形で食事を提供する配慮が求められます。もちろん、全ての食糧を新米でまかなうことは難しいかもしれません。しかし、安全性や最低限の品質確保は当然の前提であり、受け取り手に対する配慮、敬意が不可欠です。
これからの支援とは「上から与えるもの」ではなく、「共に支え合うもの」であるべきです。そのためには、食糧支援に対するわかりやすい情報公開や、関係者との連携強化、保存・流通体制の見直しが重要になるでしょう。
発言を「支援見直しへの第一歩」とする意義
今回の原口議員の発言を巡る論争は、言葉選びや表現に対する課題だけでなく、支援の根本的なあり方にまで及ぶ重要なテーマを内包しています。言い回しが適切でなかったことは確かかもしれませんが、その主張の中にある「提供物資の安全性を確保したい」「支援の質も量も充実させたい」という考えそのものには、見直す価値があると感じられます。
日本には、備蓄制度や支援物資提供に関する多くのルールと資源があります。それを最大限に活かして、「誰一人として取り残さない支援」が実現できる社会が望まれています。
まとめ──「遠くの誰か」ではなく、「誰かの明日」のために
食料支援に限らず、すべての支援活動には「受け取る人」がいてこそ成立します。その受け手にとって、尊厳を持って丁寧に届けられた支援は、単なる「物資以上の価値」を持ちます。それが励みとなり、生きる糧となり、未来の一歩を踏み出す力になるからです。
今回の報道は、私たち自身が「どのような支援が本当に必要なのか」を考える契機になりました。そして、「表現の仕方」ひとつで誤解を生み、本質が伝わらなくなる恐ろしさも、再認識すべき教訓だったのではないでしょうか。
今後の議論が前向きな支援の改善につながり、すべての人が安全かつ尊厳ある食と生活を営むことができる社会が実現することを、心から願います。
