ロックスター、役者、慈善家──多面的な顔を持つ世界的ミュージシャン、ジョニー・デップと、そのもとに再結集した伝説のロックバンド「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」。2023年6月の来日公演をめぐり、思わぬ困難に見舞われながらもファンの前に立ち続けた彼の姿は、まさに“本物”のスターと呼ぶにふさわしいものでした。そして、その来日公演を追ったスペシャル映像『ジョニー・デップ:ハリウッド・ヴァンパイアーズ来日ライブの裏側』が、2024年6月25日からディズニープラスで独占配信されることが発表されました。公私ともに浮き沈みの激しかった彼が、再び“音楽”という原点に立ち返り、真摯にファンと向き合う姿は、多くの人の心を打つに違いありません。
ハリウッド・ヴァンパイアーズ──その名の由来は、1970年代、ロサンゼルスの有名なナイトクラブ「レインボー・バー&グリル」に設けられた伝説的なセレブの集まり「ハリウッド・ヴァンパイアー・クラブ」にちなんで命名されました。その精神を現代に受け継ぐ形で結成されたのが、ジョニー・デップ(ギター・ボーカル)、アリス・クーパー(ボーカル)、ジョー・ペリー(ギター/エアロスミス)が中心となるスーパーバンド「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」なのです。
特筆すべきは、この超豪華バンドにおいて、ジョニー・デップが単なるゲストではなく、音楽性の中核を担っているという点です。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどを通して”演技”のイメージが強い彼ですが、実は10代の頃からギターに親しみ、もともとはミュージシャン志望だったことはファンの間ではよく知られています。事実、彼が俳優として名を上げる前の1980年代、バンド活動をしていたこと、さらにはオアシスやボブ・ディランなどの作品に密かに参加していたこともあります。
そんな音楽に対する深い愛情を込めて、彼はハリウッド・ヴァンパイアーズで数多くの楽曲制作にも携わり、パフォーマンスも決して俳優のおまけとは言えないクオリティを発揮しています。言うなれば、彼自身の人生において音楽は“最初の夢”であり、現在は俳優業を経たうえで“原点回帰”とも言える重要なステージになっているのです。
その集大成の一つが、2023年6月の日本公演でした。3年越しの来日ツアー、本来ならばすでに2020年に行われる予定だったこの公演は、コロナ禍の影響ですべて延期に。本格的な“初来日”となった2023年は、バンドとファン、それぞれにとって特別な意味を持つ瞬間となりました。
しかし、そこには華やかな表舞台の裏での苦闘もありました。来日直前、ジョニー・デップはヨーロッパツアー中に足首を負傷。“足首骨折”という医者の診断を受け、ライブ出演が危ぶまれる状態になったのです。にもかかわらず、彼は「日本のファンと約束したから」と、松葉杖を携えながらステージに立ち続けました。その姿は、プロ意識のみならず、ファンへの深い思いに裏打ちされたものでした。
今回のディズニープラス配信映像では、その来日ツアーをステージ上だけでなく、バックステージやリハーサル風景、他メンバーとのやり取りなど、濃密に記録。ジョニー・デップ自身が出演・監修したこのスペシャル映像は、単なるライブドキュメンタリーではなく、むしろ“彼のもう一つの人生”を体現した音楽活動の集大成とも言える仕上がりになっています。
共演者のアリス・クーパーは、言わずと知れたロック界の重鎮。「ショックロック」の創始者として知られた彼は、長年にわたりエンターテインメント性と音楽性を融合させたステージで世界中を魅了してきました。そんな彼が「ジョニーは本物のロックンローラーだ」と語った言葉は、単なる社交辞令ではなく、音楽家としての実力と情熱を間近で感じた者ならではの賞賛でしょう。
また、ジョー・ペリーも、エアロスミスの一員として長年ハードロック界を牽引してきた伝説的ギタリスト。彼もまたジョニーを深く信頼しており、「ステージに立つ姿は紛れもなくアーティストそのもの」と語っています。
ジョニー・デップ自身については、近年さまざまな報道によりメディアに取り上げられる機会が増えましたが、今回の来日ドキュメンタリーでの姿は、そのどれとも異なります。華やかな俳優業の裏で、一人の音楽家として懸命にステージを創造する男の素顔。そこにはゴシップでは決して伝えられない誠実さ、ひたむきさ、人間味が詰まっています。
なお、ジョニー・デップは近年、監督としても作品制作に取り組んでおり、映画『Modì(モディ)』では20年以上ぶりにメガホンを取ることが話題になりました。俳優、音楽家、そして映画監督──その多才さはとどまるところを知らず、今後ますますの活躍を期待せずにはいられません。
“本物”のアーティストとは何か?──その問いに対する一つの答えが、今回のディズニープラスで展開される映像作品に込められているように感じます。輝きの裏にある苦悩と努力を知ったとき、ステージ上でのあの一音一音が、観る者の心にまっすぐに響くでしょう。
2023年のハリウッド・ヴァンパイアーズ来日公演、そしてそれを追ったジョニー・デップによる密着ドキュメンタリー。これは映画でもない音楽ライブでもない、“リアルな旅路”を映し出す伝記なのです──一人の男が、自らのアイデンティティと向き合い、そしてステージで再生してゆく壮大な物語。
『ジョニー・デップ:ハリウッド・ヴァンパイアーズ来日ライブの裏側』は、2024年6月25日(火)よりディズニープラス「スター」で独占配信開始。音楽の真実を、その目で、その耳で、ぜひ確かめてください。