近年、相撲界において注目を集めている変化の一つに、「国際化」の流れがあります。その象徴ともいえる動きが、元横綱白鵬である間垣親方による「相撲の新国際組織」構想です。この記事では、その構想の背景や目的、そして今後の展望について紹介します。
■ 元白鵬が描く「新国際組織」とは
2024年6月、元横綱白鵬こと間垣親方が、相撲の新たな国際的な展開を目指す構想を明かしました。「相撲は日本の伝統文化であるだけでなく、世界中にも広めていくべき格闘技である」との思いから、既存の組織に依存しない、自主独立した国際的な相撲団体を立ち上げることを視野に動いているといいます。
この新組織では、日本相撲協会とは別の枠組みで、世界各地に相撲クラブや道場を設立し、各国ごとの相撲代表チームの育成や普及活動を展開していくとのことです。代表チーム同士による国際大会の開催や、若手力士の育成を世界規模で行うことも構想の一部として語られています。
■ 構想の背景にある思い
間垣親方の故郷であるモンゴルでは、相撲はとても人気のあるスポーツです。自身もモンゴルから来日し、日本で修業を積み、現役時代には歴代最多の幕内優勝45回という輝かしい記録を誇る大横綱となりました。そうした経験から、「相撲は日本だけのものではなく、世界の多くの人々に才能と情熱を注ぐ機会をもたらす競技である」と強く感じたと語っています。
また、親方として次世代の人材を育成する役割を担うようになった現在、外国人力士の抱える課題や育成の限界、海外における相撲文化の普及の難しさにも直面した結果、「より自由な発想で相撲を広めるための独立した組織の必要性」を感じたといいます。
■ 世界の相撲熱と現状
実は、世界に目を向けると、相撲は既に一定の人気を集めているスポーツです。主にアマチュア相撲として、欧州、アジア、南米などで大会が開かれており、欧州選手権やワールドゲームズなどの国際大会にも相撲が組み込まれているほどです。特にポーランド、ロシア、アメリカ、ブラジルなどでは相撲協会が存在し、独自に育成や普及活動が行われています。
しかし、こうした国際活動と日本の大相撲とは、組織的な連携や統合がほとんどなく、交流や情報共有が行われてこなかった現実があります。間垣親方による新組織の構想は、こうした国際相撲界と日本の相撲文化を橋渡しする画期的な試みになる可能性を秘めています。
■ 新組織の具体的なビジョン
報道によると、間垣親方は今後10年間で、世界中に50〜100の相撲クラブを設立することを目指しているとのことです。これらは単に稽古場として機能するだけでなく、相撲の伝統・礼儀・心構えといった精神的な側面をも含めた指導を提供し、文化的な教育の場としても活用される見通しです。
さらに、各国に代表チームをつくり、将来的には「相撲ワールドカップ」のような国際大会を恒常的に開く計画もあると言われています。競技規則や階級制などについては、日本の伝統的なスタイルを基本にしながら、各国の事情やアマチュア競技としての統一性も尊重していくとしています。
■ 相撲の新たな挑戦と継承
相撲は千年以上の歴史を持ち、日本の伝統文化として発展してきました。しかし、時代の変化とともに、そのあり方は大きく問われつつあります。若者の関心の多様化、他スポーツとの競争、さらには海外からの関心の高まり。それにどう応えていくかは、相撲界全体の課題です。
間垣親方の構想は、それに対する一つの答えなのかもしれません。相撲の伝統を守りながらも、世界へと開かれた新たな形を模索する。これは決して容易な挑戦ではありませんが、相撲の未来に希望を見出す多くの人々にとって、興味深い第一歩となることでしょう。
■ 今後の展望と私たちの関わり方
新組織の設立はまだ構想段階ではあるものの、その理念に共感する国内外の関係者も多く、一部支援も始まっているとのことです。今後は、スポンサーや自治体、教育機関などとの連携が鍵になると考えられます。また、SNSや動画配信を活用した情報発信によって、より多くの人々が相撲に親しみを持ち、関心を寄せる機会も増えていくでしょう。
私たち一般の相撲ファンにできることは、こうした動きを温かく見守り、時には応援し、そして自分たち自身も新しい形の相撲に触れていくことかもしれません。例えば、海外の相撲大会を観戦したり、現地の相撲道場を訪ねたりすることで、相撲という文化の広がりを肌で感じることができるでしょう。
■ まとめ:伝統と革新の融合へ
元白鵬・間垣親方による「相撲の新国際組織」構想は、単なる競技の枠を超えた文化的運動でもあります。そこには、「相撲を世界と共有し、未来へと継承していきたい」という熱い願いが込められています。
日本の伝統に根ざした相撲が、世界中の人々に感動と学びを与える存在になる未来。その実現は容易ではないかもしれませんが、間垣親方の第一歩は、確かにその方向へ向かって踏み出されています。
相撲がこれからどのように進化し、国境を越えて多くの人々とつながっていくのか。今後の展開から目が離せません。