アメリカ大手玩具チェーン「トイザらス」が実写映画化へ──子ども時代の思い出がスクリーンに蘇る
アメリカをはじめ世界中の子どもたちに長年愛されてきた玩具チェーン「トイザらス(Toys “R” Us)」。その歴史とブランド力に魅せられた映画制作陣が、この象徴的なブランドを実写映画化する計画を進めており、子ども時代の思い出を持つ多くの人々の注目を集めています。
2024年5月下旬、アメリカの主要メディアが「トイザらス」の実写映画化が進行中であることを伝え、日本国内でもYahoo!ニュースなどを通じて話題になりました。かつては世界中に1500店以上を展開していたこの企業は、経済的な困難から一度は米国内での経営撤退を余儀なくされましたが、近年ではブランドの再構築が進められ、新たなステージに踏み出しています。
今回の映画化報道は、トイザらスの復活を象徴する動きであると同時に、観客の感情に深く訴えかける作品となることが期待されています。本記事では、この実写映画化計画の背景、狙い、そして子どもたちや親世代に与えるであろう影響について、詳しく解説していきます。
トイザらスとは?愛され続けた”おもちゃの国”
トイザらスは1948年、アメリカ・ワシントンD.C.でチャールズ・ラザラス氏によって創業されました。当初は子ども向けの家具店としてスタートしましたが、1950年代後半には玩具専門のディスカウントストア業態を確立。次第に業務を拡大し、「子どもたちに夢と冒険を提供するおもちゃのワンダーランド」として人気を博していきました。
象徴的マスコット「キリンのジェフリー(Geoffrey the Giraffe)」や、広い店舗内に溢れる様々なおもちゃ、試遊コーナーやカラフルなポップなど、子どもたちの好奇心と想像力を掻き立てる演出は、訪れるたびにわくわくする体験として多くの人の記憶に残っています。
また、誕生日やクリスマスといった特別な日に連れて行ってもらった経験を持つ人も多く、親子三世代にわたるファミリーの思い出の場ともなっています。
苦境と再生──トイザらスの歩んだ激動の道
そんなトイザらスにも、変革の時は訪れました。テクノロジーの進化と消費者の購買行動の変化により、アマゾンなどの電子商取引が台頭すると、従来の実店舗型販売は苦戦を強いられるようになります。そして2017年には、米国本社が破産申請(チャプター11)を行い、翌年には米国内の店舗の大半を閉鎖すると発表。一時は「トイザらス消滅」のニュースが世界を駆け巡りました。
それでも、ブランドへの愛着は消えることなく、ファンや投資家たちはトイザらスの存続を願い、支援の声を上げました。その後、買収や再構築を経て、トイザらスは新たな形で市場への再参入に動き出します。近年では、小売業大手「メーシーズ」との提携により百貨店内への出店を拡大しており、ブランドの再構築を成し遂げつつあるのが現状です。
実写映画化──ストーリーは?狙いは?
今回発表された映画化計画は、トイザらスを象徴する存在である“ジェフリー”を中心に描かれる可能性が高いと報じられています。映画制作を手掛けるのは、アメリカの映像制作会社「ポップ・カルト・キッズ(Poptcorn Kids)」。同社はインディー映画ながらも感情を揺さぶる作品を制作しており、本作中でもファンタジーと現実を絶妙に交錯させた心温まるドラマが期待されています。
物語の内容については詳細は明かされていませんが、一部報道によれば、ある少年や少女がトイザらスの店内で不思議な冒険に出る──というファミリー向けファンタジー映画になることが予想されています。これは、トイザらスという場所が単なるショッピングスポットではなく、想像力に満ちた「別世界の入り口」であるという認識が根底にあるのでしょう。
また、ジェフリーというキャラクター自体が、子どもたちにとっての「優しい友達」「頼れるナビゲーター」として役割を担い、映画を通じて成長や友情、家族愛といった普遍的なテーマを描き出すと考えられています。
時代を超えて求められる”心に残る体験”
SNSや動画配信サービス、スマートフォンが当たり前の現代において、かつてのように”店に行って、実際に触れて遊びながら選ぶ”という消費体験は減りつつあります。しかし、子どもの成長にとって「実体験」や「リアルな驚き」は今でも大切な要素であり、それらを思い出として記憶に刻む力は、デジタルメディアでは代替できない部分があります。
その点で、トイザらスというブランドが持つポテンシャルは依然として大きいと言えるでしょう。映画化を通じて、こうしたリアルな価値が再認識され、店舗やブランドが持つ「体験の場」としての意義が改めて評価される可能性があります。映画をきっかけに子どもたちが「実際の店でおもちゃを選ぶ喜び」を知るきっかけにもなるでしょう。
日本への波及も期待
今回の映画化はアメリカを舞台にした制作ではありますが、トイザらスは日本においても高い知名度を持っており、かつては休日のレジャーとして多くの家族連れが訪れる場所でもありました。現在では、一時期の勢いに比べて店舗数は限られていますが、今も存在感は健在です。
映画公開が日本でも行われれば、日本のトイザらスにも再び注目が集まり、次世代の親子の間で「店へ行く楽しさ」が再認識される可能性があります。店舗側も、ストーリーと連動したキャンペーンや展示などを展開することにより、新たな顧客体験の創出につなげるチャンスでもあるでしょう。
懐かしさと新しさが融合するエンターテインメント
今後の具体的な公開時期やキャストなど、さらなる情報の発表が待たれますが、トイザらスというブランドにまつわる感情や記憶を丁寧にすくい上げるような作品となれば、世代を超えて多くの人々の心を惹きつけることは間違いありません。
子どもの目線、大人になっても忘れたくない気持ち、そして親としての立場──それぞれの視点から共感できるエンターテインメントになれば、映画館を出たあと「久しぶりにトイザらスに行ってみようか」と思えるような、やさしい余韻を残してくれることでしょう。
トイザらス実写映画──それは単なる企業ブランディングの一環ではなく、私たち一人ひとりの“子ども心”を優しく呼び起こす、一大エンターテインメントプロジェクトの始まりなのかもしれません。