「ファミマ なぜパンを『白く』した」——この言葉に、思わず二度見した方も多いのではないでしょうか。毎日のように私たちの手に取られるコンビニパン。その見た目や味にどのような工夫が施されているのか、普段意識することは少ないかもしれません。しかし、企業は日々、少しでもおいしく、手に取りやすい商品を目指して、細かな改良を積み重ねています。
今回は、大手コンビニチェーンのファミリーマートが、自社のパンの「色」に着目し、「白く」するという大胆かつ繊細な商品改良に踏み切った背景とその狙いについて掘り下げてみたいと思います。
白くなったファミマのパン、その背景とは？
ファミリーマートが2024年春に実施したのは、「パンの白色化」という一見シンプルに思えるリニューアルです。しかし、そこに込められた企業の思いやマーケティングの戦略は、非常に奥深いものでした。
パンといえば、少し茶色がかった焼き色が付いているのが一般的な印象かもしれません。実際、パン職人にとって「きれいな焼き色」はおいしさの象徴でもあります。しかし、近年、消費者の嗜好は変化しています。特にコンビニで人気の菓子パン・惣菜パンに関して、ファミリーマートではある変化を感じ取っていました。
それが、「見た目の白さに対するニーズ」です。
ファミリーマートが実施した消費者調査によると、白くてふんわりしたパンに「やさしそう」「柔らかそう」といったポジティブなイメージを持つ人が多かったとのこと。これにより、「見た目から伝わる柔らかさ」「清潔感のある見た目」が今の消費者に求められていることが見えてきたのです。
また、SNSとの相性も見逃せません。パンが白くなることで写真映えが良くなり、おしゃれな朝食やランチとしてSNSに投稿される機会が増える可能性もあります。個人の発信力が大きな影響を持つ今の時代、このような「ビジュアル重視」な商品戦略は非常に合理的です。
技術と工夫の賜物：白くても“おいしい”パン
見た目を変える、特にパンを白く仕上げるというのは、簡単なことではありません。というのも、パンは焼成の段階で表面に自然と焼き色が付きます。この焼き色が香ばしさを出す要素でもあるため、ただ白くするだけでは「味が落ちた」「パンとしての魅力が減った」と感じられてしまうリスクもあるのです。
そこでファミリーマートは、白くしながらもふんわり感や味のバランスを保つための試行錯誤を重ねました。記事では、パンの生地を改良し、焼成方法も工夫したことが紹介されています。例えば、製造時の温度管理や発酵時間の調整など、いくつもの工程にわたる緻密な技術により、「白いけれどおいしいパン」が実現されたのです。
“ちぎりパン”などの商品がよりリッチな見た目になり、クリームやチョコの充填量の見直しも行われたことで、見た目と味の両方で消費者満足度を高める工夫が盛り込まれています。
白いパンは、時代の流行を映し出す鏡
改めて振り返ると、この「白くする」というリニューアルは、現代の消費者心理、特に「安心感」や「クリーンさ」、「高級感」などを重視する流れを象徴しているかのようです。
コロナ禍を経験し、衛生意識が高まったことで、人々はより清潔感のある商品に目を向けやすくなりました。また、SNSやインスタ映えといった文化が定着して以降、「写真に残したくなる」「人に見せたくなる」商品が人気を集めるようになっています。
白いパンは、こうした新しい時代のニーズに応える象徴的な商品とも言えるでしょう。
ファミリーマートは「パン食のNO.1コンビニ」を目指しており、今回のリニューアルもその一環として位置付けられています。単なる見た目の変化だけではなく、素材や製造工程まで見直すことで、ブランド価値を高め、差別化を図っている姿勢は、多くの消費者にとっても信頼感を与えるものではないでしょうか。
変化を恐れず“ちょっといい日常”を提案する
今回の白パン開発には、「いつもの日常にちょっとした贅沢感を」という企業メッセージも感じられます。普段の昼食やおやつに、ほんの少しの特別感をプラスする——そんな思いが、「白いパン」というビジュアルに込められているようです。
また、白く柔らかそうなパンは、年代を問わず好まれやすく、小さな子どもや高齢者にとっても親しみやすい商品です。つまり、より多くの人に“手に取りたい”と思わせる魔法のような見た目を持っているのです。
まとめ：変わる食の在り方と企業の挑戦
ファミリーマートの「白いパン」の取り組みは、単なる商品のリニューアルにとどまりません。それは、変わり行く消費者のニーズと向き合い、日々の生活に寄り添うための企業努力の現れです。
今後、ファミリーマートに限らず、他のコンビニやパンメーカーでも同様の「見た目と味の共存」を追求した商品開発が進むことでしょう。私たち消費者も、こうした背景を少し意識して、新しいパンを手に取ってみると、より深く味わい、楽しむことができるかもしれません。
最後に、次にコンビニでパンの棚を眺めるときは、少し目線を変えて見てください。「白くリニューアルされたパン」が、これまでと違う時間をあなたに与えてくれるかもしれませんよ。
