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天下一品、都内閉店ラッシュの真相──「こってり」が直面する時代の転換点

かつてラーメンファンの間で絶大な人気を誇っていた「天下一品」が、ここ数年で都内の複数店舗を閉店するという現象が続いています。「こってり」という独特のスープで有名な天下一品は、関西発祥の人気ラーメンチェーンであり、その味を求めて長年にわたり多くのラーメンファンの支持を受けてきました。しかし今、なぜ首都・東京という巨大で多様なグルメマーケットで、天下一品が相次ぐ閉店を余儀なくされているのでしょうか。

本記事では、天下一品の都内店舗閉店の背景にある「理由」と、時代や消費者ニーズの変化にどう向き合っているかを探っていきます。

天下一品とは – 「こってり」の代名詞

まずは天下一品の成り立ちについて簡単におさらいしましょう。

天下一品は1971年、京都の屋台で創業したラーメンチェーンで、創業者・木村勉氏が開発した“ドロッとした超濃厚なスープ”が最大の特徴です。この「こってりスープ」は、鶏ガラや野菜を何時間も煮込んで作られるもので、一度食べるとクセになる濃厚さを誇ります。

関西を中心に地元で着実に人気を伸ばした後、徐々に全国展開をはかり、2000年代に入ってからは東京にも多数の店舗を構えるようになりました。業界内では異色の存在とされ、高い知名度を誇るブランドに成長しました。

それでは、なぜそんな人気チェーンが東京で閉店ラッシュを迎えているのでしょうか?

急増する閉店~都内で起こる異変

近年、天下一品の東京エリアでの店舗が次々と閉店しています。たとえば阿佐ヶ谷、五反田、神楽坂、原宿など、かつては多くのファンを抱えながらも閉店に至る店舗が続出しています。

Yahoo!ニュースの記事によると、2024年に入ってからだけでも複数の店舗が静かに営業終了の告知をするケースが見られ、ファンの間では「またひとつ好きな店が消えた」とSNSに投稿されるなど、寂しさや戸惑いの声が多く上がっています。

背景にある三つの要因

専門家の分析や実際の関係者への取材からは、閉店の背景にはいくつかの要因が重なっていることが見えてきます。

① 都市部のテナント賃料の高騰
東京の一等地では、店舗賃料の高騰が続いています。人気エリアであればあるほど家賃が高く、その負担は年々増しています。ラーメン業界は価格設定に限界がある業種でもあり、高額なコストを簡単に価格に転嫁するのは難しい現状です。

天下一品の場合、「こってり」という一食の満足度が非常に高いスタイルのため、リピーターを多く抱える半面、1日の回転数がそれほど多くないという構造的な問題があります。高コスト・低回転率では持続的な経営が難しく、結果として閉店に至るケースがあるのです。

② 消費者ニーズの変化
最近のラーメントレンドは、あっさりとした味や、健康志向を取り入れたジャンルへとシフトしています。ヘルシー志向や低カロリー、グルテンフリーといった食の多様化が進む中、こってり濃厚なスープは「たまに食べたいもの」としての位置づけに変わりつつあります。

つまり、天下一品のスープは「常に食べたい味」から「時々食べたくなる味」へ変化しており、日常的に通うリピーターが減ってしまった可能性があります。

③ 店舗ごとの経営スタンス(直営 vs フランチャイズ)
天下一品の店舗は、直営とフランチャイズ(FC)の2種類に分類されます。FC店舗の場合、オーナーの判断で営業継続が決まるため、人手不足や収益性、地域特性などが重なると閉店が検討されやすいのです。都内の多くの店舗はFCであったため、こうした個別事情が閉店ラッシュの一因にもなっています。

「閉店=失敗」ではない。ブランドの今後に向けた転換期

天下一品の閉店ニュースは一見ネガティブなイメージを抱かれがちですが、全体のブランド力が落ちているわけではありません。実際、地方都市では根強い人気を保っていたり、新たな取り組みを模索していたりする店舗もあります。

たとえば、東京・高円寺の店舗などでは、限定のメニューやセット商品、若年層向けのサービスなど、顧客層の変化への対応が見られます。また、天下一品の一部店舗では、Uber Eatsなどのデリバリーサービスを導入することで、コロナ禍以降の生活様式にも適応しています。

このように、天下一品はブランドとして沈みゆくのではなく、むしろ時代や地域特性に応じた柔軟なスタイルへの転換期にあると見ることもできるのです。

飲食業界全体にも通じる変化の波

天下一品の一連の動きは、ラーメン業界だけでなく、飲食業界全体にとっても重要な問いを投げかけています。

・都市部における高コスト構造への対応
・多様化する消費者ニーズへの柔軟な対応
・直営とFCのバランスの在り方
・継続可能な事業モデルの再構築

特にポスト・コロナ時代の飲食業界では、デリバリーやサブスクリプション、ポップアップ・ストアといったより柔軟な経営モデルが注目され始めています。天下一品もまた、そこに新たな道筋を見出そうとしている段階といえるでしょう。

おわりに – ファンとしての応援のかたち

かつては東京中に「こってり」の看板が点在し、天下一品マニアたちは食べ歩きをすることでその味を楽しんでいました。店舗が減ってしまうのは寂しいですが、それは終わりではなく、新しい形での再出発なのかもしれません。

飲食店にとって、変化に柔軟に対応することは生存戦略そのものです。私たち消費者としても、単なる「流行り」ではなく、「大好きな味」、「他にはない魅力」を見つめ直し、応援し続けることが求められているのかもしれません。

今後、また都内に新しい形で天下一品が戻ってくる日を楽しみにしつつ、私たちもその味と歴史を大切にしていきたいですね。