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兵庫県庁で若手職員の離職が加速──問われる地方行政の職場改革と持続可能性

近年、地方自治体における行政の信頼性や職場環境が注目される中、兵庫県庁での職員離れが加速していることが報じられ、大きな反響を呼んでいます。特に若手職員を中心に早期退職や転職を決断するケースが増加しており、それは単なる一時的な現象ではなく、より深刻で構造的な問題を孕んでいるといえるでしょう。

「県庁離れが進んでいる」との報道が指し示すのは、人手不足や定員割れといった表面的な問題だけではありません。その背後には、働き方に対する価値観の変化、職場を取り巻く風土、組織運営の在り方など、多岐にわたる原因が横たわっています。

以下では、今回報じられた兵庫県庁の「職員離れ」の実態と、それに至る要因、そして今後の地方自治体に求められる対応や改善策について考察していきます。

兵庫県庁で何が起きているのか?

今回の報道によると、兵庫県庁では令和4年度、定年前に自己都合退職した職員数が計91人に達し、少なくとも過去10年間で最多となったことが明らかになっています。中でも目立つのが若手~中堅職員の離職で、20代・30代を中心に、いわゆる“出世コース”にいた人でさえ県庁を離れる選択をしている現状です。

同報道によると、県庁には「職場に愛想が尽きた」「頑張りが報われない」といった職員のコメントもあり、単なる待遇の不満にとどまらず、組織文化や職場風土への根深い不信感が背景にあることもうかがわれます。

そのような職員の声は、決して一部の例外ではなく、県庁全体として無視できない傾向であり、今後の行政運営にも確実に影響を与える恐れがあります。

離職者が口にする理由の根幹

実際の離職理由として、報道では以下のような声が寄せられています。

・民間企業に比べてキャリア形成の自由度が低い。
・上層部の意見が強く、現場の意見が通りにくい。
・評価制度が曖昧で、努力が報われにくい。
・長時間労働が未だに根強く残っており、ワークライフバランスが取れない。

これらは、民間企業ではすでに改善・改革が進められてきた課題でもありますが、多くの地方自治体では構造的な問題として依然残っていると言われています。

特に、公務員という仕事の特性上、一度配属された部署からの異動希望が通りにくかったり、非常にヒエラルキーが強く、柔軟な働き方を実現しにくいという点が、若手世代からの離れにつながっていると考えられます。

自治体が抱える慢性的な人材難

兵庫県庁に限らず、全国的に地方自治体は人材確保に苦戦しています。国や企業からの出向者に頼らざるを得ない自治体もあり、業務効率化を目的としたデジタル化の推進さえも、現場の人手不足で思うように進められないケースが多いのが現状です。

また、行政サービスの質を支えるのは、最終的には「人」であり、行政の信頼性や満足度にも直結するだけに、この離職傾向に端を発する人材難は、住民にも直接的な影響を与えることになります。

「働き方改革」の自治体版が求められる

では、兵庫県庁、ひいては全国の地方自治体は、今後どのような方向で改革を進めるべきなのでしょうか。

まず重要なのは、「働きたくなる職場」であるための制度・風土の見直しでしょう。職員一人ひとりが意欲を持って働ける環境を整えるためには、以下のような取り組みが求められます。

1. 柔軟な評価制度の導入
能力や貢献度を正当に評価する制度を確立し、努力が成果として報われる環境づくりが必要です。年功序列型ではなく、成果やスキルに基づいた人事制度への転換が求められます。

2. 部署異動の透明性とキャリア支援
希望するキャリアパスを描けるよう、職員と行政が対話を重ねる仕組みを導入し、部署異動等が一方的にならないよう配慮する必要があります。

3. 働き方の多様性とワークライフバランスの推進
テレワークやフレックスタイム制の活用、残業時間の管理強化など、現代のライフスタイルに合った働き方改革が求められています。

4. メンタルケアや職場相談環境の整備
上司・部下の信頼関係や相談体制を確立し、メンタルヘルスにも配慮した働きやすい職場づくりが不可欠です。

「安定」だけでは選ばれない公務員という職業

かつては「公務員=安定した職業」というイメージから、多くの志望者を集めていた自治体職員の職ですが、現在ではその価値観も大きく変わろうとしています。若い世代にとっては、安定だけでなく「やりがい」や「成長できる環境」「自分の価値を認めてもらえる職場」といった点が、仕事選びの重要な要素となってきています。

そうした中では、公務員という職種もまた、民間企業と同じように、自身の職場環境を見直し、時代に適応していかなければ、優秀な人材の流出を止めることはできません。

県民と向き合うための持続可能な職場づくりを

兵庫県庁で起きている「離職の加速」は、おそらく氷山の一角であり、全国各地の地方自治体でも近い将来、同様の課題に直面することが予想されます。

自治体の役割は、地域住民の生活を支え、未来を築くこと。そうした使命を果たすためには、そこで働く職員が安心して働ける環境が不可欠です。

今回の報道は、私たち一人ひとりが「公務とは何か」「どんな地域社会をつくっていきたいか」を見つめ直すきっかけでもあります。公務員として働く方々の声に耳を傾け、その声をもとに変革と改善を進めることが、より良い社会への第一歩なのではないでしょうか。