大相撲で起こった驚きの瞬間――行司が土俵下へ転落、担架で退場
2024年5月22日、夏場所の取組中に発生した予期せぬ事故により、大相撲の行司が土俵から転落し、担架で運ばれるという事態が発生しました。この出来事は、観客・関係者の誰にとっても大きな驚きであり、改めて相撲の土俵上の安全性や関係者の役割の重要性について考える契機となりました。
本記事では、この事故の詳細と背景、相撲界における行司という存在の役割、そして今回の件を通して見えてきた課題などについて、できるだけ分かりやすく紹介していきます。
事故の概要:立行司・式守伊之助が土俵から転落
事故が起きたのは2024年5月22日、東京・両国国技館で行われた大相撲夏場所の取組において。東大関・豊昇龍(ほうしょうりゅう)と西関脇・阿炎(あび)の一番での出来事でした。取り組みは激しい攻防が繰り広げられ、最後は阿炎が豊昇龍を土俵際まで押し込んだタイミングで、行司の式守伊之助(しきもり・いのすけ)がバランスを崩し、土俵下へ転落してしまいました。
式守伊之助は、土俵下の床に頭部を打ったと見られており、すぐに取組が一時中断。医師と関係者が集まり、その場で初期的な処置が施された後、担架で運ばれました。病院に搬送されたとの報道もあり、現在は意識はあり、経過観察中とされています。
相撲の土俵で何が起きたのか?
相撲の取組中、行司は土俵上で力士たちの動きを見極め、公平に勝敗を判定する大切な役割を持ちます。そのため、力士と同じように土俵上に立ち、両者の間に位置して取り組みに臨みます。
この日の豊昇龍と阿炎の取組は、激しい寄り合いとなり、阿炎が勢いよく押し出す場面がありました。その勢いに対応しようとした伊之助が、後方に下がった瞬間にバランスを崩してしまったのです。土俵は高さが約60cmほどあり、足元を外すと予想以上に危険な転落になります。
行司が転落するという事故は過去にも例がありますが、今回のように担架で搬送されるケースは稀であり、観客席にも大きな衝撃が走りました。
式守伊之助とは?行司の最高位に立つ人物
今回転落事故に見舞われた式守伊之助は、行司の中でも最高位にあたる「立行司(たてぎょうじ)」という地位にあります。行司には位階があり、数十年にわたって経験を重ねていくことで段階を上っていきます。頂点に立つ立行司は、取組の進行だけでなく、美しい装束や所作、判定の重みを担う名誉ある存在です。
式守伊之助は、三役や幕内の取組を務める他、千秋楽の結びの一番などの重要な場面を任されてきた実績があります。長年に渡る経験と安定感が支持されており、相撲ファンからの信頼も厚い人物です。
そんな伊之助の突然のアクシデントにより、会場のファンだけでなく、テレビ越しに観戦していた全国の視聴者にも驚きと心配が広がりました。
相撲における安全体制と今後の課題
大相撲の取組は、激しい肉体のぶつかり合いを伴います。力士たちは日々の稽古で身体能力と技術を高めながら、時に命がけで技を繰り出します。一方で、行司や呼出し、審判員などの関係者も土俵近辺で職務にあたっており、時折このような安全に関わるアクシデントに見舞われることがあります。
観客席と土俵との距離が近く、伝統的な設計に基づいた国技館では、安全対策と伝統的演出の狭間で難しいバランスが求められます。
今回の転落事故においても、事前の注意喚起や配置の工夫によって防げた可能性も否定できません。大相撲協会では、今後このようなアクシデントを未然に防ぐため、行司の立ち位置や退避経路の見直し、観客および関係者の安全確保への対策強化を検討していくことが予想されます。
観客の反応とSNSでの声
事故が報じられると同時に、SNSなどネット上では多くの相撲ファンが驚きと心配の声を寄せました。
「伊之助さん大丈夫かな…いつも冷静な所作が印象的だったので心配です」
「力士だけでなく、行司も危険と隣り合わせなんですね」
「無事を祈ります。大事に至らないことを願います」
などと、行司の安否を気遣うコメントが数多く見られました。相撲という競技が、多くの関係者の尽力によって成り立っていることを再認識したファンも多いようで、この出来事を通じて普段あまり注目されない行司の存在に、改めて感謝の気持ちを抱いた方もいたのではないでしょうか。
まとめ:伝統と安全の両立へ向けて
今回の行司・式守伊之助の転落事故は、相撲界にとって見直しを迫る重要な出来事です。力士だけでなく、その場で働く全ての人の安全を守ることは、競技の魅力や品格を維持する上で欠かせません。伝統的な様式美を保ちながらも、最新の安全対策技術を取り入れていくことが、今後の相撲界に求められる姿勢です。
幸い、式守伊之助の容体は安定しており、重傷には至らなかったという報道もあります。今回のアクシデントが、土俵上で働く全ての人々の環境改善へとつながる契機となれば、相撲界全体の前向きな進化にもつながるはずです。
何よりも、関係者一人ひとりの安全が確保されることで、私たち観客はより安心して観戦を楽しむことができます。伝統競技である相撲に宿る熱気と感動を、今後も安心して享受できることを願いながら、式守伊之助の一日も早い回復を祈っています。