もちもち食感と豊富なフレーバーで広がる人気──ベーグル専門店が各地で続々と誕生する理由
近年、全国各地において「ベーグル専門店」が次々と誕生しています。かつては一部のパン屋やカフェで見かける程度だったベーグル。しかし今や、個性あふれる専門店が各地で注目を集め、行列を作る人気ぶりを見せています。「なぜ、今ベーグルなのか」。その背景には、食の多様化や健康志向、そして地元密着型ビジネスの新たな形が見えてきます。
本記事では、ベーグル専門店が台頭する理由、ベーグルという食品の魅力、現代のライフスタイルとの親和性について掘り下げていきます。
ベーグルとは何か？再注目される伝統のパン
ベーグルとは、もともと東欧に起源を持つパンの一種で、ドーナツ型をしており、通常のパンとは少し異なる製法で作られます。生地を一度茹でてから焼くという独特の調理法により、外はパリッと香ばしく、中はもっちりとした食感が特徴です。砂糖や油脂は控えめで、シンプルな材料で作られる点も魅力の一つです。
一方で、日本においてベーグルはある程度の認知を得てきたものの、長らくナショナルチェーンやスーパーの小売パン売場などで細々と扱われてきた存在でした。そんな中、なぜ今、専門店という形で再び脚光を浴びるようになったのでしょうか。
各地に広がるベーグル専門店の波
本格的なベーグルを提供する店舗がここ数年、主に都市部や観光地だけでなく、地方都市や町村にも次々と誕生しています。例えば、秋田県湯沢市の「Brick by Brick」は、築およそ90年の古民家を活用した雰囲気ある店舗で、35種類以上ものベーグルを販売。地元だけでなく、県外からもリピーターが訪れる人気店となっています。
他にも、ベーグルに特化して移動販売を展開する店舗や、地元産の素材を使って独自性を出す店など、多様な形でベーグルの専門店が広がりを見せています。いずれの店舗にも共通するのは「オリジナリティのある商品展開」と「地域とのつながり」です。
原材料とバリエーション──健康志向＋選べる楽しさ
ベーグルはもともと油脂や砂糖の使用が少ないため、パンの中でも比較的ヘルシーな選択肢として知られています。その特性に加え、現代人の高まる健康志向とも相まって、「罪悪感なく楽しめるパン」として支持を集めています。
また、最近の専門店では、プレーンタイプだけでなく、抹茶や黒ごま、チョコレートに栗、さらには季節のフルーツを練り込んだフレーバーまで、そのバリエーションは非常に豊富。トッピングやフィリングにもこだわり、スイーツ系からお食事系まで幅広くラインナップされています。
こうした「選ぶ楽しみ」「自分好みが見つかる喜び」は、現代の消費者にとって大きな魅力となっており、SNSなどを通じてその人気は瞬く間に拡大しています。
テイクアウト文化との相性の良さも追い風に
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大を経て定着した“テイクアウト文化”との親和性の高さも、ベーグル人気を後押しする要因です。手に持って食べやすく、冷めても美味しく、冷凍保存もできるといった点からも、「忙しい朝の食事」から「ちょっとした手土産」まで、幅広いシーンで需要に応えられるのがベーグルの魅力です。
また、最近では冷凍ベーグルの通販も人気を博しており、地方の専門店が全国への発送サービスを行うことで、店舗に行けない遠方客にも対応できるようになっています。
地元に根ざす「地域密着型ビジネス」としてのベーグル店
もう一つ注目すべき点は、ベーグル専門店が「地域に根ざした小さな商い」としても成功している事例が多く存在する点です。地方で空き家や遊休不動産を有効活用し、地場産食材を取り入れることで、商品自体に「ここでしか味わえない価値」を持たせていることが、地域活性の一役を担っているのです。
特に若い世代やUターン・Iターン組が、こだわりの食材と「食による地元再発見」を旗印にベーグル店を起業するケースも増えており、単に食を提供するだけでなく、地域に新しい雇用や交流を生み出すプラットフォームとしての可能性も秘めています。
大手チェーン店とは異なる、小規模でも手作り感あふれる温もりやストーリーが消費者の心をつかみ、リピーターを生み出しています。「1つ300円前後」で買える手軽さも、「ちょっとした贅沢」として日常に喜びを与えてくれる存在として受け入れられているのです。
ベーグルのこれから──さらなる広がりに注目
こうした流れを受け、今後もベーグル専門店はますます増えていくと予想されます。特に、カフェ併設型や雑貨との複合型、さらにはフードフェスやマルシェへの出店など、さまざまな形での展開が進むことでしょう。
また、ベーグルそのものの可能性もまだまだ広がっています。米粉や全粒粉を使ったグルテンフリー志向のベーグルや、ヴィーガン対応のレシピなど、より多様なニーズに応える進化型ベーグルが出てくることも期待されます。
おわりに──日常を彩る「もちもち系」革命
ベーグル専門店の人気は、単なる一過性のブームではありません。そこには「手軽でヘルシー」「選んで楽しい」「地域に根ざす」といった、現代のライフスタイルにマッチした要素が詰まっています。
もちもちとした食感と見た目の可愛らしさ、そしてどこか素朴で懐かしい印象──。ベーグルはこれから、日常の中で多くの人に「小さな幸せ」を提供していく存在として、定番の食文化になっていく可能性を秘めています。
今日の朝ごはんにベーグルを。週末のお出かけに話題の専門店を訪れてみるのもいいかもしれません。これからも、進化し続けるベーグルの世界から目が離せません。
