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「母が要介護5に──突然はじまった介護生活と、その過酷なリアル」

母が突然「要介護5」日常は一変──介護生活の始まりとその現実

ある日、母親が突然「要介護5」と認定された——その瞬間から日常は大きく変わりました。介護保険制度において「要介護5」は最も重いランクに位置づけられ、日常生活のあらゆる場面で全面的な介助が必要とされます。身体機能や認知機能が大きく低下し、食事や排泄、移動といった基本的な行動さえも一人ではままならない。そんな状況に直面した家族の戸惑い、悩み、そして葛藤。Yahoo!ニュースの記事で紹介された実例を通して、多くの人が迎えるかもしれない「介護の現実」について今一度考えてみたいと思います。

突然の「要介護5」判定——母の変化と診断

記事で紹介されていた女性(以下、仮にAさんとします)は、母親と二人暮らしをしていました。数年前から母親の認知症の兆候には気づいていたものの、特に大きな問題もなく生活を続けていたといいます。しかし、ある日突然、母親の様子が明らかに変わりました。急な混乱、夜間の徘徊、言葉が通じない、不穏な情動。病院に連れて行くと、「レビー小体型認知症」の診断がくだされ、要介護度は「5」とされたのです。

「まさかここまでとは」とAさんは振り返ります。母親の状態が悪化したのは、まるで坂道を転げ落ちるかのようだったそうです。そのスピードの速さに、心の準備も、体制の準備も間に合わなかったと語ります。

生活が180度変わるという現実

それまでフルタイムで働いていたAさんの生活は一変しました。24時間の見守りが必要となり、トイレの介助や食事の介護、夜中の徘徊対応、服薬管理など、日々のケアはほとんどすべてが手作業。最初は「自分でなんとかしよう」と思い、自宅での介護に挑戦しましたが、日が経つごとに心身ともに追い詰められていったと言います。

母親が突然暴言を吐いたり、怒ったりすることも多くなりました。かつては優しかった母親の変わり果てた姿に、どう対応して良いかわからず、涙する日もあったそうです。介護者が精神的ダメージを受けるということも、介護を経験したことのある人でないとなかなかわからない事実でしょう。

介護保険制度の支援——ありがたさと限界

介護認定を受けたことで、Aさん一家は介護保険を利用することができるようになりました。訪問介護、デイサービス、ショートステイなどの支援を受けつつ、少しずつ生活リズムを整えました。特にデイサービスの存在は大きく、日中だけでも母親を施設で預かってもらえることで、日常生活を立て直す時間が持てたと語ります。

ただし、すべてが順調というわけではありませんでした。介護施設との相性、費用の問題、手続きの煩雑さ、介護サービスが利用できる時間の限界——「制度はあるけれど、制度だけでは回らない現実」を痛感したそうです。

働きながらの介護と、選択の難しさ

Aさんは休職も検討しましたが、長期的な収入の不安から、結局は時短勤務を選択。これにより、日中に母親の世話をしやすくなった反面、収入は当然減少しました。介護離職という問題が取り沙汰されていますが、まさにそのリアルに直面しているといえます。

「キャリアはもう諦めないといけないのか」「支出が増える中、どこで節約するのか」毎日が葛藤の連続です。選択肢はあっても、どれも“ベスト”とは言い切れない。「どこまで母親の面倒を見るのが家族の務めなのか」「どこから他人に委ねて良いのか」曖昧な“ケアの境界線”に立たされることに、心が揺れるとAさんは言います。

地域とのつながりが鍵になる

記事でも紹介されていた通り、Aさんは地域の包括支援センターとの連携を深めることで、少しずつ光明を見出していきました。信頼できるケアマネージャーと出会えたことで、介護プランが明確になり、周辺の支援機関とも繋がりやすくなったそうです。また、同じように家族を介護している人々とのつながりも重要な支えとなりました。

孤独な介護ほど、本人にとって辛いものはありません。支援の輪の中に自ら飛び込む勇気が、介護者自身を救う一歩になるのです。

介護は他人ごとではない

日本は急速な高齢化社会を迎えています。65歳以上の高齢者が4人に1人を占め、認知症患者数も確実に増加しています。現在、運よく介護とは無縁の生活をしていても、5年後、10年後には全く異なる立場にいるかもしれません。自分の親が、配偶者が、自分自身が——誰しもが介護を「自分ごと」として考える時代が到来しています。

介護のハードルを下げる情報の共有を

記事を読んで印象的だったのは、Aさんの「知識がないことの恐ろしさ」という言葉です。介護認定の仕組み、サービスの種類、助成の申請方法、施設の選び方——これらを何も知らない状態で突然介護に直面するのは、まるで荒波の中で漂流するような感覚かもしれません。

だからこそ、日頃から情報を得ておくこと、そして他者と「介護の話題」を共有することが大切です。SNSでもブログでも良い、書籍でも情報誌でも良い。介護についての知識や実体験に接する機会を自分から持つことで、いざその時が来た際の支えになります。

おわりに——「完璧な介護」ではなく「続けられる介護」を

Aさんの体験は、決して特別なものではありません。多くの家庭が、似たような現実に直面しています。介護は始まってしまえば終わりが見えない道のりです。そして、介護者もまた「一人の人間」として生活の中にいることを忘れてはなりません。

完璧を目指す必要はありません。大切なのは、介護する人が無理せず、「続けられる形」を模索すること。時には休み、時には助けを求める勇気を持つこと。それが、自分と家族を守る最良の方法となるのです。

もしあなたが今、介護の入り口に立っているのなら、どうか怖れずに一歩一歩、進んでみてください。支援の手は確かに存在し、同じ境遇の仲間もいます。あなたの介護の道が、できる限り穏やかで、笑顔のあるものでありますように。