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ベランダにハトの卵──知らないと違法?都市住人が知るべき野鳥との共生ルール

近年、都市部での野生動物との共生について注目が集まっています。その中でも特に身近な存在である「ハト」との関係は、日常生活の中でしばしば問題を引き起こします。2024年6月に報道された「ベランダにハトの卵 処理に10日間」というニュースは、多くの都市住人にとって他人事ではない、非常に現実的な問題を浮き彫りにしました。この記事では、その報道をもとに、ベランダに卵を産んでしまったハトとの向き合い方、関連する法律や処理の方法、さらには予防策についてわかりやすく解説していきます。

■ ベランダに突然現れるハトの巣と卵

報道によれば、ある東京都内のマンションに住む女性が、自宅のベランダでハトの卵を発見したことから、一連の対応に追われることになりました。最初はただの鳥が来ているのかな、という感覚だったものが、日に日にハトの行動が活発になり、ある日、洗濯物を干そうとした際にベランダのプランターの中に二つの卵が置かれているのを見つけたそうです。これにより、そのスペースが「野鳥の産卵地」となったことで、簡単に処分できない事態に発展します。

■ 「鳥獣保護管理法」との関係

ハトの卵がベランダに置かれても、安易に処分したり、巣を撤去することはできません。日本では、野生の鳥獣は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」、通称「鳥獣保護管理法」により保護されており、この中にハトも含まれています。

この法律により、野鳥やその卵、巣などを許可なく傷つけたり移動させる行為は原則禁止されています。そのため、仮に自宅の敷地内であっても、ハトの卵を発見した場合は、自己判断で処分してしまうと違法となる可能性があります。

報道では、住人が区役所に相談した結果、適切な申請手続きと承認を経て、専門業者が卵と巣を撤去するまでに約10日間を要したとのことです。

■ 市区町村の対応と申請手順

では、こうした場合にどのように対応すればよいのでしょうか。実際、ハトがベランダなどに巣を作ってしまった場合には、まず自治体に相談することが基本のステップとなります。各市区町村によって対応の具体的な手順は異なるものの、概ね以下の流れになります。

1. 担当窓口への相談(環境課や生活衛生課など)
2. 状況の確認と聞き取り
3. 必要に応じて「鳥獣捕獲等許可申請書」を提出
4. 許可後、認定業者による撤去作業

このプロセスには、数日から一週間程度を要するケースがほとんどで、さらに専門業者のスケジュールによっては、実際の撤去までに10日以上の時間を要することもあります。住人にとっては、その間、ベランダの利用制限やハトによる糞害への対応など、非常にストレスフルな生活となることが容易に想像されます。

■ ハトの被害と日常生活への影響

ハトは非常に適応力があり、都市部のビルの隙間やベランダ、高架下などに巣を作り繁殖します。問題となるのは、その「糞」です。見た目や匂いの問題だけではなく、乾燥した糞が粉塵となって舞い上がることで、人体に害を及ぼす病原菌が含まれる場合もあります。有名なものとしては、クリプトコッカス症やオウム病などがあり、免疫力の低下した方や高齢者、小児にとっては注意が必要です。

また、ハトによる被害は、卵や巣だけでなく、騒音、洗濯物の汚染、ご近所トラブルなど様々な形で日常生活に影響を与えかねません。

■ ハトの巣作りを防ぐための観点

では、そもそもハトにベランダを「巣作りの場所」と認識させないようにするにはどうすれば良いのでしょうか?日常生活の中で実践できる予防策をいくつか紹介します。

・こまめな清掃と整理整頓
ハトは、静かで人の気配が少なく、かつ物陰になる場所を好んで巣を作ります。ベランダに使っていない植木鉢や段ボール箱、ラックなどを放置している場合は、格好の巣作り候補地となってしまうため、定期的な清掃が重要です。

・侵入防止ネットの設置
ベランダに簡易的な防鳥ネットを設置することで、ハトの侵入を物理的に防ぐことができます。ホームセンターなどで購入可能で、比較的容易に取り付け可能です。

・忌避剤の活用
ハトが嫌がる臭いや味の忌避剤をベランダに設置することで、寄せ付けにくくする対策も有効です。ただし、効果の持続には限りがあるため、定期的な交換や補充が必要です。

・フェイクの鷹やカラスなどの設置
自然界でハトの天敵である猛禽類の模型を設置することで、繁殖地として不安定だと認識させる方法もあります。ただしハトは学習能力が高いため、長期間同じ場所に設置していると効果が薄れることがあります。

■ まとめ:適切な対応と心の余裕を

今回の「ベランダにハトの卵 処理に10日間」という報道は、都市で暮らす私たちがどれほど自然や野生動物と隣り合わせで生活しているかを再認識させてくれます。突然の訪問者である野生のハトに戸惑いながらも、法律に則り、適切な対応を取る姿勢は、他の野生動物問題にも通じる公共意識の高さがうかがえます。

ハトによる被害を未然に防ぐためには、まず「巣を作らせない環境」を整えることが第一であり、それでも難しい場合には、積極的に自治体に相談する姿勢が求められます。

そして最後に、同じような問題に直面している方々への情報共有やコミュニティでの連携も重要です。自然との共生という視点から、法を理解し、心のゆとりを持ちながら、日々の生活を見直していくことが大切なのではないでしょうか。

私たちが快適に、そして調和のとれた暮らしを送るために、野生動物との付き合い方をもう一度、考えてみる良い機会なのかもしれません。