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麻生太郎氏が示唆した「連立再編」─揺れる自公関係と維新との接近が意味するもの

2024年6月、政界においてひときわ注目を集める人事が話題となっている──自民党の麻生太郎副総裁が日本維新の会代表・馬場伸幸氏との会談で、公明党をめぐる与党連携の「再編成」を示唆する発言をしたと報じられたのだ。これは今後の日本政界における与党体制、さらには衆議院選挙の戦略を根本から揺さぶる可能性を持つ発言であり、多くの政治関係者やメディア関係者を巻き込んで波紋を呼んでいる。

会談は6月10日、自民党本部近くで行われたとされ、そこで語られた内容には、「今の自民・公明の協力関係がうまくいっていない。もしかすると再編成するかもしれない」旨の発言が含まれていたという。これを受け、日本維新の会関係者からは「自公連立の見直しが具体化する予兆ではないか」との見方も出ている。一方、公明党からは即座に真っ向から否定する発言があり、火種はなおくすぶり続けている。

この動きの背後には、長年にわたる政界の力学と、それぞれの政党が持つ思惑が絡みあっている。中心人物の一人である麻生太郎氏は現在、自民党の副総裁を務める大物政治家であり、日本政界に影響力を持つ重鎮の一人だ。福岡県出身で、父は政治家、祖父は元首相・吉田茂という政治家の家系に生まれ、政界入りから今日に至るまで、麻生氏は一貫してタフな外交手腕と鋭い発言力で知られてきた。2008年には内閣総理大臣を務め、その後は財務大臣、副総理として長年にわたり安倍晋三元首相を支えてきた。長期政権の中で培われた官僚機構との太いパイプと政策立案能力は、現在でも党内外に強い影響を及ぼしている。

一方、今回の会談相手である日本維新の会代表・馬場伸幸氏は、改革路線を掲げる若手~中堅の政治家として注目を集めている。大阪府堺市出身で、大阪維新の会発足当初から活動しており、維新の地方行政改革を主導した人物の一人である。2021年の総選挙では維新が大躍進を遂げ、馬場氏はその立役者の一人とされている。2022年には代表に就任、以降は「第3極」の政党として与野党の狭間から政策提案を積極的に行い、政界内で存在感を急速に高めている。特に岸田政権以降の自民・公明連携の揺らぎを絶好の「チャンス」と捉える戦略的発言が目立っており、今回の麻生氏との会談もその布石の一つと見る向きがある。

自民党と公明党の連携は、1999年の連立合意を機に20年以上続く関係であり、選挙協力や法案成立において互いに大きな役割を果たしてきた。特に公明党の持つ組織票は、自民党が都市部選挙区で安定的に勝利を重ねる上で必要不可欠な力であった。しかしここ数年、この関係に変化が見られる。公明党が重視する「子育て支援」や「平和主義」といった価値観と、自民党内の保守派の主張との間に意見の隔たりが生じ始め、政策面での調整に時間がかかる場面が増えていると言われる。

さらに、岸田政権の不透明な政権運営や、派閥関連の不祥事問題に対して公明党が批判的な立場をとることもあり、両党の間に「信頼関係の亀裂」が入りつつあるとも指摘されてきた。特に、直近の衆議院東京28区(新設)の候補者調整では、自民党と公明党の対立が表面化し、異例の「調整決裂」という事態にまで発展した。

そうした中での今回の「麻生・馬場会談」は、それ自体が自民党内での一つの「サイン」となっている。つまり、万が一公明党との連携が困難になる事態を想定し、日本維新の会との連携を模索するという形で、「連立再編」ないし「将来的な政界再編」のシナリオを現実味ある形としてにおわせる動きである。

とはいえ、維新側にも慎重な構えはある。党関係者の一人は匿名を条件に、「あくまで連携に向けた情報交換の段階であり、現時点で連立入りを協議しているわけではない」と語っており、実際に自民・維新・公明の力学がどのように変化するかはなお不透明だ。また、維新はその主張として「徹底した行政改革と既得権打破」を掲げているため、自民党との全面的な政策一致には課題も多い。特に、防衛費増額や大規模な経済対策、憲法改正などの課題では、党内でも意見が分かれることがある。

さらに、公明党側も当然黙ってはいない。北側一雄副代表や斉藤鉄夫幹事長らは、「自公連携は今後も続けていく」という立場を強く打ち出しており、自民党内で一部の声が浮上したとしても、簡単に破綻するようなものではないと反論している。信頼と実績に基づいた協力関係を盾に、自公の結束を守る構えを示している。

総じて言えるのは、これからの日本政治は「三極構造」と呼ばれる新たな形に変化する可能性を秘めているということだ。従来は自民・立憲民主の「与党対野党」の図式で語られることが多かったが、日本維新の会の存在感が増すことで、政局が多極化し、各政策で柔軟な連携が生まれる「ポリティカル・フュージョン(政治的融合)」の時代が来るという見方もある。

麻生太郎氏や馬場伸幸氏のような、それぞれの立場で長年にわたり政治の最前線で活動してきた人物の存在は、まさにこうした流動的な時代の象徴とも言える。変化の時代において、それぞれの政治家がどのような立ち位置を取るのか──それが次なる選挙、日本の未来の行方を大きく左右することになるだろう。

これからの数か月、日本の政界は新たな再編の道を歩むのか。それとも、かつてと変わらぬ連携を守り続けるのか──目が離せない展開が続いていく。