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異例の転身を遂げた元スノボ日本代表・大江光──“好き”を極めた先に見えた新しい生き方

元スノーボード日本代表がYouTuber・実業家として異例のセカンドキャリアを構築──「プロスポーツ選手のその後」に新たな道を示した人物とは

2024年6月、日本中の注目を浴びるニュースが飛び込んできた。元スノーボード日本代表のプロアスリートであり、現在はYouTuber、そして株式会社4CYCLE代表取締役という実業家としての顔を持つ大江光(おおえ・ひかる)氏が公開した動画が、SNSやメディアを中心に大きな話題を呼んでいる。

その動画の内容は、自身が拠点とする埼玉県川口市の貸し倉庫が「突然封鎖され使用不能になった」という一報だ。複数の入居者がいるにもかかわらず一方的にシャッターの電源が落とされ、物品の出し入れが不可能になったというショッキングな事態を淡々と、しかし現場からの映像とともに大江氏は報告していた。

この件に関しては、運営側の一部との連絡トラブルや法的手続きの有無など、さまざまな確認事項は残されている。そのため、一方的に誰かを糾弾する前に冷静な事実確認が求められるが、今回世間から強い共感を集めたのは、まさに「その冷静さ」だった。

大江氏は動画の中で怒りや感情を爆発させるのではなく、復旧に向けた実務的な動きを示し、被害に遭った他の入居者にも気を配る姿勢を見せた。視聴者はそこに、「一流アスリートでありながら、人生のステージを切り替えても決してブレない信念とリーダーシップ」を見たのではないだろうか。

スノーボード界からビジネス界へ──異色の転身

大江光氏は、長年にわたり日本のスノーボード界で活躍してきたエリートアスリートだ。その競技人生を通じて海外遠征を幾度となく重ね、日本代表選手として世界の舞台で戦ってきた。一般的に競技者としてのキャリアを終えたアスリートの多くが引退後の進路に悩む中、大江氏はその境界線を軽やかに飛び越えた。

彼のYouTubeチャンネル「ヒカルくん【バイク屋4CYCLE】」は現在、登録者数が40万人を超える人気チャンネルであり、特にバイクのカスタムや整備、商品紹介などを丁寧に分かりやすく発信している。彼の最大の強みは「未経験者でも理解できる噛み砕いた説明」と「視聴者との距離の近さ」にある。これはスポーツ選手としてのキャリアで養った「相手を思いやる力」と「分かち合う姿勢」がベースになっているのは間違いない。

また彼は株式会社4CYCLEというバイク関連の事業も立ち上げ、実店舗とオンライン販売を通じて独自のブランドを築いている。地方の倉庫を拠点にしながらも全国展開を視野に入れ、若者をターゲットとした新たな購買スタイルを提案。そのビジネススタイルは、いわゆる「趣味をそのまま仕事に変えた」アントレプレナーの成功事例として、今や多くのメディアに取り上げられるようになっている。

“好き”を極める──アスリートのセカンドキャリアに希望を灯す存在

特筆すべきは、大江氏が自身の経験を現在の仕事に活かしながら、多くの若者や引退したアスリートたちへの「ロールモデル」となっている点だ。スポーツの世界で切磋琢磨した者たちが、競技を終えた後に社会との接点を見つけるのは容易ではない。しかし、大江氏は「諦めずに自分の“好き”を極め続けることができれば、それを仕事に変えることは可能だ」と、身をもって証明してみせた。

事実、彼のYouTube動画には多くの若者がコメントを寄せており、その一つひとつに対して真摯に向き合い、アドバイスや励ましの言葉を発信している。また、整備や技術だけでなく、「人生の舵をどう取るべきか」「自分らしい働き方とはなにか」といったライフスタイルに関する問いにも率直に語るスタイルは、一見テクニカルな動画コンテンツに“思考と哲学”という深みを与えている。

情報発信の力と、社会との接点を作る“メディア化する個人”

今やプロフェッショナルとは、ただ特定の技術や知識を持っている以上に「そのスキルをいかに人に伝えるか」というコミュニケーション力が求められる時代になった。大江氏のように、YouTubeというメディアを通じて「自己表現」と「社会的な貢献」を両立させる存在は、その象徴と言える。

一人の元アスリートが、自身の能力を掛け合わせ、事業家、メディアクリエイターとして社会的影響力を持つまでになる──これはスポーツ界にとっても、教育現場にとっても刺激的で有意義な事例だ。そして、障害や困難に直面した際、大江氏のように「行動と言葉」を持って前進し続ける姿勢は、どの世代にも深い共感と勇気を与える。

「僕のチャンネルを通じて、一人でも多くの人が“やってみよう”と思えるようにしたい」

大江氏のそんな言葉から感じ取れるのは、競技人生で培った「挑戦者としての心」だろう。シャッターが閉まっても、心まで閉ざしてはいけない。それはまるで、吹雪の中でも前を向き続けたスノーボーダーの姿そのものである。

ビジネスも、エンタメも、人生も雪山のようなものだ。必ずしも滑走路が見えるとは限らない。しかし地形を読み、技術で補い、情熱で加速し続ければ、どこまでも滑ることができる。

大江光という一人の男が見せる、その滑らかな飛翔は、きっとこれから多くの人の背中を押すことになるだろう。