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選択的夫婦別姓はなぜ進まない?止まった国会と動き出す社会

現在、夫婦別姓に関する法整備の議論が再び注目を集めています。「夫婦別姓 今国会で不成立の公算大」というニュースが報じられた通り、2024年6月時点での通常国会では、選択的夫婦別姓制度の導入を巡る法案成立の見通しが厳しい状況にあります。本記事では、夫婦別姓制度をめぐる現状や背景、国会議論の動向、そして市民や世論の声について詳しくまとめ、今後の展望を考えていきたいと思います。

選択的夫婦別姓とは何か?

まず、選択的夫婦別姓制度とは、結婚した夫婦が同一の姓を名乗るか、それぞれが婚姻前の姓を名乗るかを選択できる仕組みです。現在の日本の民法では、婚姻後、夫または妻のいずれかの姓を選んで夫婦同姓とする必要があります。そのため現状では、多くの場合、女性側が改姓を行うこととなり、社会的なアイデンティティやキャリア形成、書類の変更手続きなどでさまざまな不便が生じています。

これに対し、選択的夫婦別姓制度が導入されれば、結婚しても自分の姓をそのまま使用することが可能になり、夫婦が別の姓を持つことができるようになります。これは、個人の尊厳や多様な家族のあり方を尊重する制度として、多くの支持を集めてきました。

今国会での議論と法案の行方

今回の通常国会では、与党内の一部議員を中心に、選択的夫婦別姓制度の導入に向けた議論が進められる期待が高まっていました。しかし、報道によれば、自民党内では制度導入に否定的な意見も根強く、党内での意見集約が難航しているため、法案の提出には至っておらず、今国会での成立は見送りとなる公算が大きいとされています。

この背景には、選択的夫婦別姓に対して「家族の一体感を損なう」などの懸念を抱く声が一部にあることも挙げられます。こうした中で、合意形成や制度設計に向けた丁寧な議論が求められています。

一方で与党内でも前向きな議員は存在しており、自民党内の「選択的夫婦別姓を実現する議員連盟(選択的夫婦別姓議連)」では制度の必要性を訴え続けてきました。野党側は制度導入に積極的で、立憲民主党などは法案を独自に提出してきましたが、与野党の足並みがそろわない限り、立法に向けたハードルは依然として高い状況です。

世論の動きと国民の関心

選択的夫婦別姓制度については、近年、一般市民の間でも関心が高まり、賛否をめぐる議論が活発になっています。各種世論調査では、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する国民は年々増加している傾向にあります。特に若年層や都市部、共働きを前提とした家庭を持つ人々の間では、「夫婦でも名前を変えたくない」「キャリア上の不利益を被るから」という理由で、制度の導入に肯定的な意見が多数を占めています。

実際、結婚後に改姓することによって起こる影響は小さくありません。免許証や銀行口座、勤務先での各種手続き、SNSや電子署名など現代的な環境下では「名前の一致」が求められる手続きが多数存在します。これらが改姓によって煩雑になることは、特に仕事や社会活動を積極的に行う女性にとって大きなストレス源になることがあります。

また、選択的夫婦別姓制度の場合、「必ず別姓にしなければならない」というものではなく、「どちらかを選べる」制度であるため、伝統的な家族観を尊重したい家庭に対しても配慮されたものとなっています。つまり、多様な価値観を受け入れつつ、個人の選択を尊重するという趣旨が、多くの人に共感されているのです。

司法判断と法整備の関係

2015年には、夫婦同姓を義務づける民法が憲法に違反するか否かを問う訴訟が最高裁で審理され「違憲ではない」という判決が下されていますが、その一方で、「国会で制度について議論する必要がある」との付記意見が複数の裁判官から示されました。つまり、制度の是非は立法府の裁量に委ねられているという見方が強く、司法判断だけで解決できる問題ではないことが明確になったのです。

このような背景から、今後制度導入の行方を左右するのは、やはり政党間の議論と国会での意思決定になります。制度の導入には、法整備を通じて国民の生活に直結するルールを変えていく必要があります。だからこそ、議論の場である国会において、幅広い意見を反映した上での真摯な対話が求められています。

今後の展望と私たちにできること

選択的夫婦別姓制度の導入が今国会で見送りとなったことで、すぐに法改正が進むことは難しいかもしれません。しかしながら、制度導入に向けた市民の関心は高まっており、今後数年のうちに何らかの動きがある可能性は十分にあります。また、地方自治体レベルでもパートナーシップ制度や事実婚への配慮といった試みが広がっており、社会全体として多様性を受け入れる空気が少しずつ広がりつつあることも事実です。

私たち一人ひとりができることとしては、まずこの問題について知識を深め、多角的な視点で考えることです。そして、自身や家族のライフスタイルや価値観に照らして、どのような制度がより良い社会の在り方に繋がるのかを考えるきっかけにしていくことが大切です。

まとめ

夫婦別姓に関する法整備は、日本社会における家族観や個人の在り方に深く関わる問題です。今国会での制度導入は難しいとの見通しが立てられたものの、この問題は決して終わったわけではありません。むしろ、これからの日本がどんな社会を目指すべきか、私たち一人ひとりに突きつけられる問いでもあります。

選択的夫婦別姓制度の導入は、多様な生き方を認め合うきっかけの一つです。今後さらに理解を深め、尊重し合える社会を築くための対話が進むことを期待したいと思います。