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“常識破り”の真意とは――新庄監督が挑んだ「1試合10投手」の革新采配

2024年、日本プロ野球のペナントレースは例年以上に熱を帯びています。その中でも特に注目を集めているのが、北海道日本ハムファイターズの新庄剛志監督です。彼の型破りとも言える采配や、選手への独特なアプローチは、就任当初から話題を呼んでいましたが、今回の「1試合に10投手をつぎ込む」という大胆な采配は、また新たな注目の的となりました。

この記事では、5月16日にエスコンフィールドで行われたオリックス・バファローズ戦における新庄監督の投手起用について焦点を当て、その背景にある意図やこれまでの文脈、そして今後のファイターズの戦い方への影響などを丁寧に振り返りたいと思います。

新庄監督の奇策 ― 10人の継投劇

この日の日本ハムは、先発の根本悠楓投手を含め、なんと合計10人の投手をマウンドに送り込みました。試合は3時間半を超える激戦となり、最終的には4対3でオリックスが勝利しましたが、日本ハムの粘り強い戦いぶり、そして新庄監督の“前代未聞”とも言える投手起用は、ある種の驚きとともに多くのファンに強い印象を残しました。

通常、プロ野球において1試合で使用される投手の数は3人から5人程度が一般的です。たとえ延長戦となっても、7〜8人ほどにとどまるのが常識とされています。そんな中、10人もの投手を登板させるというのは、極めて異例のこと。それだけに、「なぜここまでの継投策に打って出たのか?」という疑問が多くのファンや専門家の間で広がりました。

1人1殺の極端な継投策

この試合、投手は1イニングまたはワンポイントで次々に交代し、まさに“究極の継投リレー”とも言える流れとなりました。新庄監督は試合後のインタビューで、「選手たちには“今日は節目の試合。だから勝ちにいくぞ”と伝えた」と語っています。いわば、勝利を最優先とした采配だったのです。

この戦術は、打者との相性、調子などを徹底的に考慮したうえでの起用と見られます。特定のバッターに対して極端に強い成績を持つ投手や、ストレート系でぐいぐい押せる右腕を次の左打者にぶつけていくなど、細かな対策が全打席、全イニングごとに組み込まれていたのです。試合中のゲーム感やデータ分析の高度化が進む現代野球において、こうした緻密な運用は、今後の野球界に一石を投じるものとも言えるでしょう。

新庄監督の選択とフィロソフィー

新庄剛志監督といえば、「ビッグボス」の愛称で親しまれ、その華やかなキャラクターと独創的なマネジメントスタイルが特徴です。彼の野球観は、“観る人を楽しませる”というエンターテイメント要素と、“勝つための最善策を模索する”という極めて現実的な思考の融合といえるでしょう。

2022年に監督として就任して以降、新庄監督は次々とこれまでのプロ野球の常識を覆すような発言や戦術・戦略を打ち出し、チームの若返りを図る抜擢起用、ポジション変更など、多方面から注目を集めてきました。

今回の試合も、単なる“話題作り”ではなく、選手たちの個々の成長と勝利の可能性を最大限に引き出すための理にかなった決断だったと言えるでしょう。新庄監督は常々、「選手を成長させたい」「育てながら勝てるチームを作りたい」と発言しており、この継投策もまた、若手投手たちに“実戦の舞台でどれだけ自分を出せるか”を経験させる機会となりました。

チームに生まれる化学反応

こうした継投策が選手たちにもたらす影響は、単なる戦術面にとどまりません。出番が誰にでもあるという空気は、ブルペンに座る投手全員にピリッとした緊張感と連帯感をもたらします。実際、この試合では若手からベテランまで、全員が「どこで出番が来るかわからない」という中で集中力を切らさず準備をしていた様子が印象的でした。

また、投手陣だけでなく打撃陣や内野・外野手も、「自分たちの1点・1守備が勝敗を分ける」との意識が自然と高まることになります。これは、チーム全体にとって非常に良い作用をもたらす集団心理でもあります。

一方で、連日の過度な継投はリスクも伴います。疲労の蓄積、翌日以降の投手不足、ブルペンの負担増など、長期的な視点から見れば慎重さも必要不可欠です。そのバランスをどう取っていくのかが、今後のファイターズにとって重要なポイントとなるでしょう。

ファンの反応と今後への期待

この異例とも言える「1試合10投手」の采配に、ファンの間では様々な反応が見られました。「新庄監督ならでは」「大胆で面白い」「育成を重視しながら勝ちに行っているのがわかる」という好意的な声があれば、「使いすぎでは?」「肩を壊さないか心配」といった冷静な指摘も存在します。

しかし、重要なのは、こうした議論が生まれるほどに、新庄監督の采配が今のプロ野球に一石を投じているということ。選手層の広さや柔軟な起用法が競技力にもつながる現代野球において、こうしたチャレンジは決して無謀ではなく、むしろ新時代の戦略といっても過言ではないのです。

まとめ:変革の先にある“勝てるチーム”へ

就任から3年目を迎えた新庄剛志監督。チームはまだ発展途上にありますが、着実に土台作りが進められている印象があります。今回の継投策はただの“話題性”ではなく、「勝ちながら育成し、それをエンタメとしても魅せる」という彼の理想の野球が詰め込まれていました。

1試合に10人の投手を使うという前代未聞の戦いは、確かに“常識外れ”だったかもしれません。しかし、“常識の外”にこそ、新しい価値が生まれるのもまた事実。ファンとしてこの大胆な手法や信念に触れられることは、プロ野球というスポーツの奥深さと楽しさを再認識する機会と言えるのではないでしょうか。

これからのファイターズ、そして「ビッグボス」新庄剛志監督に、引き続き注目が集まります。奇抜さの裏にある戦略と情熱、そしてチームづくりへの誠意を感じながら、ファン一同でその戦いぶりを見届けていきたいところです。