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揺らぐバイデン、迫るトランプ再登板――民主党が迎える決断の夏

米国の大統領選挙が始まる2024年、再び注目を集めるのが現職ジョー・バイデン大統領と、前大統領ドナルド・トランプ氏の対決構図だ。しかし、中でも今、大きな波紋を呼んでいるのが、6月27日(日本時間28日)に行われた第一回討論会でのバイデン大統領のパフォーマンスである。米国メディアの多くが「バイデン氏の精彩を欠いた討論会」と評し、民主党内部からも懸念の声が噴出。世論調査会社のリアル・クリア・ポリティクス(RCP)によると、討論会後の数日でトランプ氏の支持率が急上昇する結果となった。

今回の討論会で明らかになったのは、81歳という年齢を迎えたバイデン大統領の身体的、精神的な衰えではないかという指摘だ。討論冒頭から声がかすれ、話す内容が途切れる場面も複数見られ、言葉をうまくまとめることができない場面が続いた。一方の78歳のトランプ氏は、過去の政権での実績—たとえば経済成長や移民政策—などを積極的にアピールし、力強い発言を続けた。

この討論会後、米民主党内部では「バイデン氏をこのまま候補として維持すべきか」という声が公然と語られ始めている。特に民主党の中道派や若手議員らは、「このままでは勝てない」という危機感を募らせており、代わりの候補者としてカリフォルニア州知事ギャビン・ニューサム氏や、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー氏の名前が浮上している。

ギャビン・ニューサム氏は、現在56歳。2023年にカリフォルニア州知事に再選され、民主党内でも次世代のリーダーとして注目を集めている。特に彼の政治手腕や若々しさは、バイデン氏とのコントラストを際立たせており、討論会直後の報道番組にも出演。「バイデン氏の政策は有効だ」と弁護しつつも、今後の展望を問われる場面では「アメリカ国民が何を必要としているのかを見極めなければならない」と意味深な言葉を残した。

一方、ミシガン州のグレッチェン・ウィットマー氏(52歳)も「ポスト・バイデン」の有力候補と目されている人物だ。2019年に州知事に就任、日本企業との経済連携に積極的な姿勢を示すなど、国際感覚も備えている。さらにパンデミック時には迅速な対応で州内感染を抑え、州民から高い支持を受けた。討論会後には「今は団結の時。誰を候補にするかより、民主主義そのものを守る必要がある」とコメントしている。

さらに今回の討論会で異例だったのは、これまでバイデン支持を明確にしてきたメディアや民主党重鎮からも、懸念と動揺が表面化していることだ。米国内では、「現職大統領が討論会で明確なミスを犯した」との報道が相次ぎ、選挙戦の行方にますます不確実性が漂っている。

これまでバイデン政権は、インフレ抑制法(IRA)や半導体促進法(CHIPS法)、大量のインフラ投資を実現するなど、政策面では着実な実績を重ねてきた。また、国際舞台ではウクライナ支援や中国との関係安定化に努め、世界から一定の評価を得ている。にも関わらず、政権の「顔」である大統領個人への不安が、政策の実効性をかき消し始めているといえる。

一方で、トランプ氏も決して盤石な立場ではない。連邦および州で複数の裁判を抱え、特に2021年1月6日の連邦議会襲撃事件に関する訴追は注視されている。モラルの観点での疑念も消えないままだが、それでも彼の訴える「アメリカ・ファースト」や強硬な移民政策は、多くの保守層の共感を呼び続けている。

2024年の選挙戦は、ただの政策対決ではなく、世代交代とリーダーシップの在り方、そして民主主義の根幹を問う闘いとなる。バイデン大統領擁する民主党は今、進むか留まるかの岐路に立っている。「バイデンでは勝てない」という声が現実味を帯びる中、新たな候補者を立てた場合の時間的猶予は限られている。来月の民主党全国大会で、党としてどのような判断を下すかが注目される。

果たしてアメリカ国民は、再びトランプ氏を選ぶのか。それとも「次のリーダー」を模索する新しい時代の風が吹くのか。今後数週間の動きが、次の4年、ひいてはアメリカの命運を大きく左右することになることは間違いない。