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デザイン家電で世界を魅了する──「カドー」創業者・鈴木太郎が描く日本発グローバルブランドの未来

日本のものづくりと世界への挑戦──「カドー」創業者、鈴木太郎氏が描く未来とは

日本の製造業が停滞にあえぐ中、“デザイン家電”という新たなジャンルで世界と勝負を挑んでいる一人の起業家が注目を集めている。「カドー(cado)」の創業者で代表取締役社長を務める鈴木太郎(すずき・たろう)氏だ。氏が目指すのは、単なる機能性だけでなく「美しさ」も兼ね備えた家電製品で、世界市場に打って出ることだ。本記事では、経済メディアMatogrossoとのインタビューなどをもとに、鈴木氏のこれまでの経歴と挑戦を辿りながら、日本発のグローバルブランドを目指すそのビジョンに迫る。

かつてのキャリア──広告畑からものづくりの世界へ

鈴木太郎氏は東京都出身。大学卒業後、大手広告代理店に入社し、20代をビジネスマンとして広告・販促の最前線で過ごした。さまざまな商品やブランドのマーケティングを手がけるうちに、「どうして日本のプロダクトは世界で主張が弱いのか?」という疑問を持つようになったという。

転機が訪れたのは2000年代初頭。当時、日本の家電業界は機能性を追求する製品開発にこだわり、デザインやユーザー視点への配慮が後回しにされていた。これに対し、鈴木氏は「生活空間になじむ美しいプロダクトこそ、次の時代に求められるものではないか」と確信。自身が理想とする製品を作るため、2011年に家電ブランド「カドー」を設立する。

英語で「贈り物」の意味を持つ“cadeau(カドー)”は、名前からして日本語離れしている。最初の製品として、鈴木氏がこだわったのは“空気清浄機”。無機質な白い箱状のものが多かった当時の製品群に対し、カドーの初号機となる「LEAF(リーフ)」シリーズは、円筒形の洗練されたフォルムを採用。インテリアとしての存在感と高性能を見事に融合させ、日本国内外で話題を呼んだ。

“デザイン×テクノロジー”で新たな市場を開く

上質なデザインと高性能にこだわった製品は、欧州やアジアでも支持を集めている。空気清浄機に続き、加湿器や除湿機、さらにはポータブル扇風機やアロマディフューザーまで、カドーの製品ラインは拡大。そして2023年、鈴木氏が新たに世に送り出したのが、話題の“電動モビリティ”である。

「モビリティが街の風景を変える」と語る鈴木氏が手がけたのは、小型の電動バイク「モトクロス」。この製品は、折り畳み可能でありながら航続距離40キロメートルという高性能を備え、街乗りからレジャーまで幅広く利用できる点で注目を集めた。

さらに、2024年春には“ドライヤー”にも進出。新製品「バランスドライヤー」は、従来のドライヤーにありがちな音の大きさや重量感を見直し、独自のモーター技術と熱制御技術で、静音性と速乾性を両立。しかもそのデザインは、インテリアとしてそのまま置ける端正な佇まいだ。「日常で使いたくなる家電は、何か特別なストーリーを持っていなければならない」と鈴木氏は言う。

世界に挑む“ジャパン・プレミアム”という哲学

鈴木氏の強みは、マーケティング出身でありながら、物づくりの現場にも深く入りこむバランス感覚だ。彼が好んで口にする言葉が「ジャパン・プレミアム」。これは、日本的な丁寧なものづくりと美意識を武器に、海外のハイエンド市場を目指すという発想だ。

実際、カドー製品の多くはアメリカ、ドイツ、フランスといった成熟市場でも評価されている。現地のデザインショーや展示会では、日本ブランドとは思えぬスタイリッシュなデザインと高性能が話題を呼び、日本発の“ニッチラグジュアリーブランド”として着実に地歩を固めている。

特に、欧州ではエコ意識の高まりと個人主義的な価値観の拡大により、「自分のスタイルを表現するための家電」が注目されている。カドーの製品は、まさにそのトレンドに合致したプロダクトとして受け入れられているという。

「機能性にだけ注目しても人は感動しない。デザインと物語、それを支える技術があって初めて人は心を動かされる」と語る鈴木氏。その言葉には、広告時代に培った「人の心を動かす」センスと、長年にわたるプロダクト開発で得た職人気質とが融合している。

今後の展望──“カドー2.0”と次世代のエコ家電

現在、カドーは単に“おしゃれな家電”を提供するブランドにとどまらず、新しいライフスタイルそのものを提案する“ライフスタイルカンパニー”を目指している。その一環として、2025年以降に発表予定の新シリーズでは、「環境負荷を最大限に抑えながら、生活の質を向上させる家電」を目指している。

この新シリーズでは、再生プラスチックの採用や、スマートフォンとの連携によるエネルギー最適化機能なども検討中という。鈴木氏が語る「日本の美意識 × グリーンテック」の融合は、新しい“日本の輸出戦略”となる可能性すら秘めている。

一方で、国内の製造業が苦しむ中、鈴木氏のように「高付加価値」「デザイン重視」で世界市場を切り開こうとする取り組みは、日本の中小企業やスタートアップにも多くの示唆を与えている。

「つくる人・つたえる人が一つになって初めて“製品”になる。それが、世界で戦うための本質だと思います」

今や、家電という枠を超えたブランドへと進化しつつある「カドー」。その中心には、異業種から転身し、情熱と美意識で時代の風を読み切る起業家、鈴木太郎氏がいる。日本人が忘れかけていた“美しいものを世界に発信する力”。それを再び呼び起こそうとする鈴木氏の挑戦に、今後もますます注目が集まるだろう。