多様性と包摂(インクルージョン)の時代、注目される「生理休暇」
近年、女性の就業率が向上し、多様性と女性のエンパワーメントが求められる時代となっています。これに伴い、企業における働き方改革やウェルビーイングを重視した取り組みが広がっています。その中でも、注目を集めているのが「生理休暇」制度の刷新です。
生理休暇とは?
生理休暇は、身体的・精神的に不調を感じる女性が利用できる休暇制度です。日本では労働基準法第68条に基づき、女性労働者が生理日の就業が困難な場合に取得できると定められています。
しかしながら、制度としては存在していても、実際に職場で活用されるケースは少ないという課題が長年指摘されてきました。「周囲の目が気になる」「言い出しづらい」「実際には取得しにくい雰囲気がある」──そんな声を背景に、多くの女性が制度を利用できずに過ごしてきたのです。
制度の見直しが進む理由
企業が生理休暇制度の見直しに取り組む背景には、大きく3つの理由があります。
- 1. 女性活躍推進とウェルビーイング:従業員の健康と幸福を尊重する風土を作ることが、企業の持続可能性につながるとの考え方が浸透しています。
- 2. 働き方改革の一環:柔軟な働き方を支援するために、時間単位の取得や有給制度と連動した運用の導入が進んでいます。
- 3. 社会的な機運:生理に対する偏見やタブーをなくす動きや、SNSを通じた発信の拡大により、透明性とオープンな議論を求める声が増加しています。
具体的な取り組み事例
例えば、IT企業やスタートアップ企業を中心に、従業員が申請理由を伝える必要がない仕組みや、専用の休暇名称を整備するなど、利用しやすさを重視した制度設計が進んでいます。時間単位、有給への切り替え、在宅勤務との併用といった柔軟な運用で、従業員が自分の体調に応じて無理なく働ける環境が整えられています。
生理に対する意識改革も必要
制度だけでなく、生理への理解・配慮が職場全体に浸透することが重要です。そのためには、経営層や人事部門だけでなく、全社員への意識向上施策が求められます。社内研修やE-learningの導入、従業員アンケートの実施などが有効であり、メンタルヘルスと同様に、オープンに話せる空気づくりが鍵になります。
これからの企業に求められる姿勢
企業にとって、従業員一人ひとりの健康を尊重する姿勢は不可欠です。生理休暇の見直しは、単なる制度の刷新にとどまらず、企業文化そのものを変える大きなチャンスでもあります。性別に関係なく、すべての従業員が働きやすさを感じ、成長できる職場環境づくりが、未来の企業の競争力を高める基盤になることでしょう。
最後に
生理休暇の制度拡充は、「人にやさしい職場づくり」がいかに社員の定着率や生産性に影響を与えるか、という観点でもきわめて重要です。今後、制度の活用を促進するとともに、生理をきちんと語れる社会を育てていくことが、私たち一人ひとりに求められています。