賞与の給与化とは?
「賞与の給与化」とは、企業が従業員に支給してきたボーナス(賞与)を、毎月の基本給など固定給に組み込み、年収を月給ベースで安定支給する仕組みに変更することを指します。近年、企業の経営環境の変化や人材確保競争の激化にともない、こうした取り組みを進める企業が増えています。
賞与と給与の違い
賞与は企業の業績や個人評価によって金額が変動する「変動報酬」であり、通常は年2回(夏・冬)支給されるのが一般的です。一方、給与は働いた時間や成果に対して毎月支払われる固定報酬です。「給与化」するということは、元々は成果に連動していた変動要素を、安定した収入とすることを意味します。
「賞与の給与化」のメリット
- 家計の安定:毎月の収入が増えることで、生活設計やローン返済の計画が立てやすくなります。
- 企業側の支出の平準化:賞与の支給時期にかかる資金負担を緩和し、年間を通して経営計画を立てやすくなります。
- 社員満足度の向上:安定した収入を希望する社員にとっては、毎月の給与増加という形で直接的なメリットが感じられます。
「賞与の給与化」のデメリット
- 業績連動のインセンティブ消失:賞与の原型である成果に対する報酬がなくなることにより、社員のモチベーションが下がる恐れもあります。
- 柔軟性の低下:年によって業績に応じた報酬調整がしづらくなり、企業側の人件費コントロールが難しくなる可能性があります。
- 社会保険料の増加:給与額が上がることで社会保険料や税金も上がり、結果的には手取りが減る場合もあります。
導入する際の注意点
制度導入にあたっては、企業ごとの経営戦略や社員構成、業種による適性をしっかり見極める必要があります。また、従業員との丁寧な対話を通した合意形成が不可欠です。一方的に変えるのではなく、なぜ改定するのか、どのような影響があるのかを明確に伝えることが、円滑な移行のカギを握ります。
変わる働き方と企業文化
少子高齢化や働き方の多様化が進む中、報酬制度の柔軟性も問われる時代です。成果主義に偏重せず、生活の安定や長期雇用への帰属意識を重視する趣旨で「賞与の給与化」は注目されています。しかし「画一的な正解」はありません。会社の価値観と社員の納得感の両立を目指すことが大切です。
まとめ
「賞与の給与化」には確かにメリットとデメリットが存在します。従業員にとって生活設計のしやすい安定収入となる一方、業績連動によるモチベーションの要素が薄れる可能性もあります。企業としては、自社の経営方針と社員の希望を踏まえたうえで、慎重に検討していくべきトピックといえるでしょう。