国内最大級の同人誌即売会「コミックマーケット(通称:コミケ)」は、毎年数万人、時には数十万人にも及ぶ来場者を迎えるイベントです。多様なジャンルの作品が集まり、熱気あふれる空間は多くの人々にとって夢のような場ですが、一方で切実な課題も浮かび上がっています。それが、いわゆる「激臭問題」です。
“激臭問題”とは?
夏場に開催されるコミケでは、参加者が朝から晩まで会場内を移動し続け、気温や湿度の影響も伴って、汗や体臭の問題が顕著になります。とりわけ、会場が密閉された空間であることが多く、参加者数も膨大であるため、強烈な臭いが立ち込めることがあります。
この問題はSNSなどで毎年のように話題となり、「コミケ行ったら鼻の中が焼けた」「更衣室が強烈だった」など、ネット上には体験談が溢れています。そうした中、“臭い”への対策として活動しているのが「防衛隊」と呼ばれる有志のボランティアグループです。
「防衛隊」の活動内容
防衛隊は、特定の団体や運営から指名されたわけではなく、臭いに敏感な人々や周囲に配慮したい人たちが自主的に集まったボランティアです。活動の主な内容は以下の通りです。
- 消臭スプレーや制汗剤の無料配布
- 空気清浄機の持ち込みによる空間改善
- 啓発パンフレットの配布やマナー向上の呼びかけ
- X(旧Twitter)等での注意喚起やノウハウの共有
彼らは、単に臭いを嫌がっているのではなく、「他人に不快な思いをさせない」というマナーや思いやりの精神を広めることを目的としています。ある防衛隊メンバーは「作品に対する熱意を損なうことなく、快適な環境を作ることは十分に可能」と語りました。
なぜ臭い対策が難しいのか
臭いの問題は非常にデリケートで、体質や生活スタイルに左右される面が大きいため、指摘しにくい課題でもあります。また「オタク=臭い」というステレオタイプな偏見と結びつけられることもあり、一部の人には過剰に捉えられる傾向もあります。
しかし、自分自身では気づかない臭いというのは決して珍しいことではありません。対策の基本は、体を清潔に保ち、イベント前にはシャワーを浴び、適切な衣服の選択や制汗剤の使用を意識することです。それと同時に、防衛隊のような活動が広まることで、臭いへの気づきや対処が自然と根付いてくることが期待されます。
マナーとモラルで作る快適空間
防衛隊の活動は一種の市民活動ともいえます。自分だけでなく、周囲の人のことも考えて行動するという意識は、規模の大きなイベントだけでなく、日常生活でも求められる資質ではないでしょうか。
コミケという特別な空間を、皆が楽しく・快適に過ごせる場にするためにも、臭い問題への配慮は今後さらに重要になっていくでしょう。今や「防衛隊」のような存在こそ、真の“縁の下の力持ち”なのかもしれません。