現代社会において、私たちは日常的に膨大な情報に触れながら暮らしています。インターネットやSNSの普及により、誰もが情報の発信者となり、同時に受け手にもなっています。このような環境の中で、選挙のたびに問題となるのが「デマ」の存在です。特に選挙期間中は、候補者や政党に対する誤情報・誤解を招く情報が拡散されやすく、それらに惑わされることが、投票行動に大きな影響を与えることも少なくありません。
この記事では、参議院選挙を例に、「デマに惑わされないためにはどうすれば良いのか」という視点から、私たち有権者が意識すべき情報リテラシーについて考えてみたいと思います。
なぜ選挙とデマは結び付いてしまうのか
選挙は、私たちの暮らしや社会の方向性に対して大きな影響を与える一大イベントです。その影響力の大きさゆえに、政策の違いばかりでなく、対立候補との比較、過去の実績、発言、人物像までが取り沙汰されます。このような状況では、意図的か無意識かを問わず、事実に基づかない情報や誇張された内容が広まりやすくなります。
こうしたデマは、インターネットを通じて瞬時に拡散され、多くの人が目にすることになります。特にSNSでは、感情的な表現や断定的な言葉が注目を集めやすく、それがさらに拡散のスピードを加速させてしまいます。ある程度信頼されていたり、共感されやすい人物がデマをシェアしてしまうことで、「目にしたから正しい」と信じてしまう人も増えてしまいます。
デマによる影響とそのリスク
参院選のような全国的な選挙において、デマに基づいた判断が行われてしまうと、私たちの代表として国政に参加する人々が、事実と異なる情報に基づく評価を受けてしまいます。それは候補者にとっても不利益となるだけでなく、最終的には有権者自身が望む未来を選択できない危険性ともなります。
たとえば、「あの候補者は不正をしたらしい」「この政党はとんでもないことを提案しているらしい」というような情報は、事実でないにもかかわらず一部の画像や切り取られた言葉だけで信じられてしまうことがあります。一度広まったデマは、訂正されてもなかなか打ち消すことができません。このような事態を避けるためにも、私たち一人ひとりが「情報を見極める力」を持つことが大切です。
情報リテラシーを高めるには
では、私たちはどのようにして情報に惑わされず、冷静に選挙に臨むことができるのでしょうか。ポイントは大きく分けて以下の4つです。
1. 情報の出所を確認する
まず重要なのは、「誰がその情報を発信しているのか」を確認することです。信頼できるメディアや公的な機関、候補者の公式サイトなどが情報源であれば、基本的に信頼性は高いと言えるでしょう。反対に、出典が書かれていなかったり、知らない個人の発信だったりする場合は、必ず複数の情報と照らし合わせることが重要です。
2. 感情を煽る情報には要注意
「怒り」や「恐怖」「驚き」など強い感情を引き起こす情報は、特に注意が必要です。これは、人間が本能的に強い感情を伴う情報に反応しやすいためで、拡散力も高まりがちです。しかし、そうした感情に流されて判断をしてしまうと、本質的な政策や理念に目を向ける余裕がなくなってしまいます。情報を見た時に「これは本当に事実だろうか」と一歩立ち止まって考える習慣を持つことが重要です。
3. ファクトチェックサービスの活用
近年では、インターネット上の情報の真偽を検証するファクトチェックサービスが複数存在しています。これらは、政治家の発言やSNSで話題となった情報などについて、事実かどうかを公平な立場から検証・発信しています。日本国内にも複数のファクトチェック団体が存在しており、選挙期間中には特に活動が活発になります。情報に疑問を持った時には、これらのサービスを活用することもひとつの手です。
4. 自らも発信者であることを意識する
SNSなどで情報を共有する私たちは、「情報の中継者」であるだけでなく、ある意味で「発信者」でもあります。自分が発信した内容が、他人の見方や判断に影響を与える可能性があることを忘れてはなりません。もし疑問のある情報を目にしても、安易に拡散せず、出典を確認することや、正しい情報に差し替えて発信するように心がけましょう。
健全な民主主義のために
選挙とは、国民一人ひとりが意思表示を行う大切な機会です。その判断材料となる情報が、正確で多面的なものでなければ、私たちが描く理想の社会に近づくことはできません。逆に、デマや誤情報によって判断を誤れば、思い描いていた未来とはかけ離れた方向へと社会が進んでしまうかもしれません。
健全な民主主義を支えるためには、政治に関する意見を持つことだけでなく、その背景となる情報が信頼に足るものであるかを見極める姿勢が求められます。選挙は「誰を選ぶか」も大事ですが、「どの情報に基づいて選ぶのか」も同じくらい大事だということを、ぜひ多くの人に知っていただきたいと思います。
まとめ
参議院選挙を含め、選挙は一人ひとりが社会の未来をつくるために行う、最も身近で大切な行動の一つです。しかし、その判断を誤らせる「デマ」は至るところに存在し、ときに真実と見分けがつきにくい形で私たちの目に触れます。
だからこそ、私たちは情報の真偽を見極める力を意識的に養う必要があります。信頼できる情報源を確認し、感情を煽られる情報には冷静に対応し、自らも正しい情報の発信を心がける——そんな一人ひとりの行動が、正しい選挙、ひいては健全な民主社会を支える土台となるのではないでしょうか。
一票が持つ力を信じ、誤情報に流されることなく、自分の意思で正しい選択をする。そんな姿勢で選挙という大切な機会に向き合っていきましょう。