2024年度、“ガソリン暫定税率”の廃止が検討されている――。このニュースは多くのドライバーや関係業界に大きな影響をもたらす可能性があり、全国的な関心を集めています。長らく日本の軽油・ガソリン価格に影響を与えてきた暫定税率が、ついに見直されるかもしれないというこの動向には、経済的な影響だけでなく、私たちの暮らしやこれからのエネルギー政策の方向性をも考えさせられる要素が詰まっています。
本記事では、ガソリン暫定税率とは何か、その歴史や現在の税制上の仕組み、廃止に向けた政府の動き、そして廃止された場合の私たちへの影響について、わかりやすく解説していきます。
■ ガソリン暫定税率とは？
日本でガソリンを購入する際、商品の価格には多くの税金が含まれています。そのうちの一部が「揮発油税」と「地方揮発油税」と呼ばれるもので、これに対して一時的に上乗せされていたのが、いわゆる「暫定税率」です。この暫定税率は、実は「一時的」な措置として導入されたはずの税金なのです。
ガソリン税の暫定上乗せ分は、1974年のオイルショック以降、道路整備などを目的に設けられたもの。具体的には、揮発油税（国税）と地方揮発油税（地方税）にそれぞれ25.1円、5.2円を上乗せし、合計でリッターあたり約53.8円が税金として課されています。この上乗せ分だけで実に30円以上が該当するのです。
つまり、私たちがガソリンスタンドで支払う金額の中で、実際の原価よりもかなりの部分が税金に相当しているということになります。このように、ガソリン暫定税率は、消費者の生活と密接に関わっているのです。
■ なぜ今、廃止が検討されているのか？
最新の報道によると、現在、政府与党内でこのガソリン暫定税率の「今年度限りでの廃止」が検討されているとされています。その背景には、昨今の物価高騰、燃料価格の上昇、そしてそれによる家計負担増大があります。
とりわけ、2020年代に入って以降、新型コロナウイルスの影響や国際情勢の不安定化などが重なり、原油価格は激しく変動してきました。そこに円安が加わり、日本国内においてはガソリン価格がリッターあたり180円を超えることも珍しくなくなりました。
こうした状況が続く中で、「一時的」な措置だった暫定税率を見直し、国民生活の支援策の一環として税負担を軽減することが、現実的な選択肢として浮上しているのです。
■ 廃止されたらどうなる？私たちへの影響
もしガソリンの暫定税率が完全に廃止された場合、ガソリン価格は大きく下がる可能性があります。先述したとおり、暫定税率分だけでリッターあたり30円程度の税金が課されているため、これがなくなればその分がダイレクトに価格に反映されるとされています。
例えば、現在リッター180円で販売されているガソリンが、暫定税率の撤廃によって150円に近づくとすれば、多くの家庭が持つ自動車にとって、月間・年間の燃料コストが大幅に軽減されることになります。特に地方に住む人々にとって、車は生活の足として不可欠な存在であり、この点で歓迎する声が多いのも納得です。
また、物流業界や運送業界など燃料を大量に使用する業種にとっても、コスト削減という面で非常に大きなメリットとなるでしょう。このように、暫定税率の廃止は、個人の家計だけでなく、広く日本経済全体にも波及する影響力を持っています。
■ 一方で考慮すべき課題もある
しかしながら、単純に「税が下がる」ということで一概に歓迎だけすべきではないという意見もあります。暫定税率によって得られていた税収は、年間で約2兆円近くにもなるとされ、その多くは道路整備、交通インフラの維持といった目的に使われています。
この税収が失われることになれば、どのように不足分を補填していくかが大きな課題となります。財源が確保できなければ、インフラ整備や公共サービスが滞る可能性も否定できません。
また、温室効果ガスの削減や環境政策との整合性についても検討が求められます。国際的には再生可能エネルギーや電気自動車への移行が進められており、こうした中で化石燃料の使用を助長すると見なされる政策には慎重さが求められる場面もあるでしょう。
■ 政府としての今後の方針は？
現在のところ、政府与党内で検討されているのは、あくまでも「2024年度限りでの廃止」という方向性です。これが正式に決定されるには、税制改正大綱や予算案などを通じた議論が必要です。今後の国会審議を経て、その去就は定まるとみられています。
とはいえ、このような報道が出るということ自体が、国民生活への被害を軽減するために政府がより柔軟な対応を検討し始めていることを物語っています。選挙や景気回復といった要素に加え、物価高対策の一環として税制を見直すことは、国民の目線に立った政策といえるでしょう。
■ 今後の動きに注目
ガソリン暫定税率の廃止が現実のものとなるのか、それとも延長されるのか――。その行方はまだ見えませんが、私たちにとって非常に大きな問題であることは間違いありません。ガソリン価格は日々の生活に直結する指数であり、その変動が家計や企業活動に与えるインパクトは計り知れないものがあります。
今のところはまだ「検討段階」にありますが、報道されている通りであれば、近い将来、ガソリン価格が大幅に変動する可能性があります。このため、個人としても、企業としても、今後の政府の発表や法改正の動向に注目し、できる準備をしておく必要があるでしょう。
■ まとめ
ガソリン暫定税率の廃止に向けた政府の動きは、日本経済、そして私たちの生活に密接に関わるものです。物価高が続く中で、生活支援の一手としてこの税制が見直されることは、多くの国民にとって歓迎すべきことかもしれません。
ただし、その一方で、国の税収のあり方、公共インフラの維持、環境政策とのバランスといった多面的な課題も忘れてはなりません。感情的な判断ではなく、私たちはこれからも暮らしの中で「どうあるべきか」を考え続ける姿勢が求められています。
今後も政府や報道機関から新しい情報が発信されるでしょう。私たち一人ひとりがその動向に関心を持ち、正確な情報をもとに日々の選択をしていくことが大切です。
