※この記事は、2024年6月時点のYahoo!ニュースに掲載された情報をもとに執筆しています。
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望まない妊娠「自己責任」とされ——支援が届かない現実と、私たちにできること
望まない妊娠に直面したとき、女性たちはどのような選択を迫られるのでしょうか。Yahoo!ニュースによれば、近年、経済的困窮や家庭環境など、様々な事情から妊娠という現実に直面した女性が、社会から自己責任と片づけられてしまい、支援が届かないという事例が少なくありません。今回は、「望まない妊娠」をめぐる日本社会の実情とともに、私たち一人ひとりにできる支援の形について考えます。
■ 孤立する女性たちと支援への壁
ある母子支援団体によれば、望まない妊娠に悩む女性たちは、驚くほど孤独な立場に置かれているといいます。背景には、家庭内での虐待、貧困、DV、あるいは若年での妊娠などがあり、「誰にも相談できない」「自分のせいにされるかもしれない」といった不安が、彼女たちを一層追い詰めています。
実際、出産直前まで誰にも妊娠を知られずにいたり、出産後も適切な医療や行政サービスを受けられなかったりといったケースが報告されています。特に、10代後半から20代前半の若年層においては、妊娠に関する正しい情報が得られず、自分自身でも状況を理解しないまま出産に至るという事例も散見されています。
■ 「自己責任」との向き合い方
こうした現実に対し、世間の一部では「自分の身体なんだから責任を持つべきだ」といった声があがることもあります。しかし、「望まない妊娠」が起きる背景には、本人だけではコントロールできない社会的・経済的要因が複雑に絡んでいるのが実状です。
例えば、避妊に関する情報格差、正確な性教育の不足、経済的に避妊薬が利用できない状況、デートDVのような力関係の中で避妊が不可能だった例など、決して「自己責任」とは言い切れない事情がたくさんあります。誰もが理想的な状況で出産や子育てを選択できるわけではない社会において、「自己責任」という言葉は、時として支援を妨げる壁ともなりえるのです。
■ 十分とはいえない日本の支援体制
日本では、妊娠した女性が自治体や保健所に相談する体制は整備されていますが、実際にその情報にアクセスできているかというと、決してそうとは言えません。また、経済的な支援も限定的であり、出産にかかる費用(平均約50万円)を自己負担しなければならない点、また避妊や中絶にかかる費用が保険適用ではない点も、支援が必要な人ほど大きな壁となっています。
さらに、望まない妊娠に陥った女性が「匿名で出産したい」「一時的に誰かに子どもを預けたい」と望んでも、それを受け入れる制度がないことも問題視されています。最近では「こうのとりゆりかご」などの取り組みが注目されていますが、これはほんの一部で、全国的な対応にはまだ至っていないのが現状です。
■ 社会全体で支える仕組みを
フランスやドイツなどの欧州では、妊娠・出産・育児に関して包括的な支援体制が整えられており、医療機関、教育機関、自治体が連携して妊婦を支えています。これにより、予期しない妊娠に至る前段階からのアプローチが可能となっており、日本の制度とは対照的です。
日本社会においても、女性個人の責任や判断に任せるだけでなく、国全体として「命の選択」に対してどう向き合うのか、長期的な視点で議論していく必要があります。教育、福祉、医療といった各分野を連携させ、予防から対処、さらに育児までの包括的サポートを用意することが求められています。
■ 私たちにできること
では、個人として望まない妊娠の問題とどう向き合っていけば良いのでしょうか。まず第一に、正確な知識を持つことが大切です。性教育や避妊に関する情報は、学校や家庭だけでなく、日常の中で自然に話題にあげることができるような社会的雰囲気づくりが求められています。
また、望まない妊娠を経験した人に対して無意識に「自己責任」と決めつける言動をしていないか、自分自身の言葉や態度を振り返ることも重要な一歩です。「この人は大丈夫だろう」という思い込みではなく、「もしかしたら助けが必要かもしれない」という配慮ある視点を持つことで、孤立する女性たちを一人でも多く支えることにつながります。
最後に、民間の支援団体やNPO、相談窓口に対して寄付やボランティア、情報発信などを通して協力することも、私たちができる一つのアクションです。たとえ小さな力であっても、それがつながれば、社会全体の温度を変える大きな一歩となるはずです。
■ おわりに
「望まない妊娠」を防ぐことはもちろん重要ですが、それ以上に、そうした事態に直面した女性が責められることなく、選択肢を持ち支援を受けられる社会であることが求められています。一人の命がたどる可能性のある道を、社会全体で支える——そのために、まずは私たち自身の意識を変えるところから始めてみませんか。誰もが安心して人生を選べるような社会、その実現に向けて、できることを共に考えていきましょう。