2024年4月、市長が公務中に倒れるという出来事が報じられ、日本全国に大きな衝撃を与えました。このニュースは、地域のリーダーである首長たちが日々どれほど多忙なスケジュールをこなしているか、またその過重な労働の中で心身にどれだけの負担をかけているかを改めて考えさせてくれます。いわゆる“地方自治の最前線”に立つ首長の仕事とは一体どのようなもので、なぜそれほどまでに過密な業務となっているのでしょうか。
この記事では、市長が倒れたというニュースをきっかけに、現代の首長が抱える職務の重さ、社会的責任、そして働き方について深掘りし、私たちが何を学び、どのように支えていくべきかを考えていきます。
■ 市長が倒れた事件の背景
この度報じられた市長の倒れてしまったケースでは、職務中に体調を崩し、緊急搬送される事態となりました。幸い命に別状はなかったというものの、療養を余儀なくされ、一時的に公務を離れることとなりました。ニュースの中では、「日々のスケジュールが朝から夜遅くまで詰まっていた」「休暇が取りづらい環境だった」ことが語られ、その業務の過酷さが浮き彫りになっています。
このような状況は、特定の市長一人の問題ではなく、全国の自治体に共通して見られる課題と言われています。特に、人口減少や高齢化が進む地方自治体では、行政の役割がますます広がる一方で、リソースが限られており、首長自らが現場で走り回る場面も少なくありません。
■ 首長の仕事とはどのようなものか
首長とは、都道府県知事や市区町村長など、地方自治体の最高責任者のことを指します。行政全体のかじ取り役となり、政策の企画・決定、予算の編成、市議会などの議会との協議、災害対応、市民からの要望対応、各種イベントへの参加など、その職務内容は多岐に渡ります。一言で言えば、「すべての業務の最終的な責任を負う存在」であり、常に状況を把握し、自ら判断を下さなければならない職種です。
特に、市民との距離が近い市区町村長は、地域の困りごとや課題を最前線で聞く立場にあり、時には個別の市民相談に1件1件対応することもあります。また、災害や緊急事態が発生すれば、真っ先に陣頭指揮を執らねばなりません。双方向の政治が求められる現代において、市長らの役割はかつてよりも遥かに複雑で重みを増しています。
■ なぜこれほどまでに過密なスケジュールになるのか
一般的な首長の1日は、早朝の式典や地域行事から始まり、午前中は市庁舎にて定例の会議や打ち合わせ、昼食も市民団体や来賓との面会を兼ねて行われることが多く、午後も視察や議会対応、関係省庁との折衝などが続きます。夕方には自治体主催のイベントに顔を出し、さらに夜には地元団体の集まりや非公式のミーティングに参加することもしばしばです。
このようなスケジュールでは、1日14～16時間以上も働き続けることが珍しくなく、加えて休日にも地元行事や災害対応のために休めないという状況も生じがちです。
こうした働き方には「トップだから当然」という見方もあるかもしれませんが、働き方改革が叫ばれる現代において、“人が担う仕事”としての限界も明らかになっています。
■ 心身の健康へどう向き合うか
市長を含め公務員も一人の社会人であり、人間です。当然、継続的に過労が続けば、心身ともに疲弊し、集中力の低下やミスの原因になります。何より、市民や自治体のために働く存在が倒れてしまえば、行政サービス自体が停滞し、最終的には地域住民にも影響を与えてしまいます。
そこで重要なのが「組織としてのサポート体制の強化」と「適切な分担」です。たとえば、副市長や部課長がより多くの決裁を担い、首長に集中し過ぎる業務を緩和する体制づくり。また、AIやデジタル技術を活用した業務効率化、外部人材の登用によって首長の負担を減らすことも考えられるでしょう。
さらに、地域住民もまた「市長は万能ではない」「休息も必要な一人の人間だ」という認識を持つことが大切です。ダウンしなければ休めないような構造は、本来であれば避けるべきです。
■ 現代社会における「リーダーシップ」の新しい形
忙しさや責任の重さからか、「リーダーは常に先頭を走り、休まず働くべき」という固定観念が根強く残っているかもしれません。しかし、今求められるのは“倒れないリーダー”であり、“持続可能なリーダーシップ”です。
それは、すべてを自分が背負うのではなく、周囲との連携と信頼に基づいたチーム型の運営に舵を切ること。時には自らも休み、他の信頼できる職員に委ねることが、新しいリーダーとしての資質とも言えるのではないでしょうか。
必要なのは、「がんばる首長像」から「持続可能な工夫をする首長像」へとシフトすること。そして、それを地域住民や職員も共有・共感するような文化を醸成する土壌作りです。
■ 終わりに：持続可能な地域づくりには、「倒れない」体制を
今回の出来事を契機に、改めて私たちは自治体のリーダーたちの働き方について再考する必要があります。地域を導く首長は、まさに未来へのかじ取り役。しかし、どれだけ優秀であっても、一人の人間。倒れてしまっては元も子もありません。
市長一人に頼りすぎる構造を変え、組織全体で支え合う仕組みに転換していくことが、持続可能な地域づくりの第一歩です。そして私たち一人ひとりが、地域リーダーを支えるという視点を持ち、よりよい社会のために声を上げていくこと。その積み重ねが、今後の地方自治の在り方を大きく変えていくことでしょう。
最後に、市長のご快癒を心より願い、今後、すべての地方のリーダーたちが健康かつ健全な形で職務にあたれる社会を目指して、私たちもまた考え、行動していきたいものです。
