北海道・砂川市に拠点を置くライフスタイルブランド「SHIRO(シロ)」が、いま大きな注目を集めています。化粧品業界において独自の立ち位置を築き、自然素材を生かした「実感できるものづくり」で多くのファンを獲得してきたこのブランドは、今や年30万人もの人が本社併設の工場を訪れるまでになりました。北海道の地方都市から、なぜこれほど多くの人々を惹きつけているのでしょうか。その理由を紐解いていきます。
SHIROとはどんなブランドか?
SHIROは2009年に北海道で誕生した自然派のライフスタイルブランドです。スキンケア・コスメ・フレグランスなどの美容製品や雑貨を手がけており、原料となる素材選びから商品開発、販売に至るまで一貫して自社で行っているのが特徴です。
特にこだわっているのは「素材」を生かす哲学。ブランドスタート当初から、酒かす、がごめ昆布、生姜、ゆずなど、自然由来の原料を用い、それぞれの素材が持つ本来の力を引き出すレシピ開発に取り組んできました。「強く美しい肌づくりは、肌本来の力を引き出すことから始まる」という理念のもと、シンプルながらも効果実感にこだわった商品が多くの消費者に支持されています。
ヒット製品のひとつには、がごめ昆布エキスを主成分とした保湿クリームや、美しい香りが長時間続くことが特徴の「サボン」のフレグランスミストなどがあります。これらはSNS上でも話題となり、「自然素材」「高保湿」「癒される香り」といったキーワードで多くの共感を呼びました。
本社工場が観光スポットへ
そんなSHIROの人気を象徴しているのが、本社工場に併設された「みんなの工場」。2023年に本社を東京都から創業地である北海道・砂川市に移転した際に設立されたこの場所は、地元の素材や文化、人々とのつながりを重視するSHIROの姿勢を体現する施設です。
「みんなの工場」では、SHIROの商品が作られている過程をガラス越しに見ることができるほか、工場直営のカフェやショップも併設されています。工場見学や体験型イベントが定期的に開催されており、親子連れや観光客が訪れる人気のスポットとなっています。ここではSHIROの製品に使われている素材原産地にちなんだ食事メニューも提供されており、まさにブランドの世界観を五感で味わうことができる場所です。
こうした体験コンテンツが大きな魅力となり、2023年度だけで30万人以上が訪れたとされています。北海道の人口を考えると、驚異的な集客規模です。単なる工場ではなく、「来て・見て・感じて・体験できる商品開発の場」という新しい価値を提供していることが、SHIROの革新性を象徴しています。
地元愛とサステナビリティを両立
SHIROの魅力は自然素材だけではありません。創業者であり代表の今井浩恵氏はかねてより「地域社会との共生」を大切にしており、本社を再び北海道に戻した理由も、地元に根ざした企業活動を強化するためだと語っています。
例えば、契約農家から直接仕入れた素材を使うことで、地域の産業とも連携。また、製造副産物を再利用した製品開発にも取り組んでおり、廃棄を最小限に抑える環境配慮型のモノづくりを実践しています。
また工場内のカフェでは、製造工程で破棄される予定だった素材(例:レモンの皮など)をスイーツやドリンクに活用。訪れた人が美味しさだけでなく、循環型社会への関心を自然に持つきっかけにもなるよう工夫されています。
「人にも地球にも優しく」――そんな理念を体現する取り組みが、SDGsの観点からも高く評価されています。
ブランドに共感するファンの存在
現代は「モノがあふれる時代」と言われ、本当に良いもの・意味のあるものが求められています。SHIROの人気の背景には、「誠実なものづくり」と「透明性」があります。全ての製品にどんな素材が使われているのか、なぜそれを選定したのか、どのように製造されたのかをしっかりと情報発信している点が、消費者の信頼を勝ち得ている理由のひとつです。
たとえば、SHIROの公式サイトでは、産地や原料などの詳細な説明はもちろん、生産に関わった人々の姿までも紹介されており、それを見ることで、購入者は製品の背景にあるストーリーに思いを寄せることができるのです。
また、SNSやイベントなどを通じたファンとの対話にも力を入れており、「ただ商品を売る」のではなく、「一緒に暮らしを豊かにしていく仲間」としての関係構築がなされている点も特筆すべきポイントです。
地方発ブランドが全国・世界へ
SHIROのような地方発のブランドが全国・そして世界中にファンを持っていることは、多くの人々に希望を与えてくれます。都市部に頼らずとも、自分たちが大切にしているもの・信じている価値を地元から発信することで、多くの共感を呼び、世界の舞台でも評価されるという事例は、今後のローカル経済にも大きな示唆を与えてくれます。
まさに砂川市の「みんなの工場」が象徴するように、観光・地場産業・ものづくりが融合した新しい地域活性の形が、ここ北海道から生まれているのかもしれません。
SHIROがなぜ人気なのか――それは単なる美容ブランドの枠を超え、「暮らしそのものを大切にし、より良い形へと導いていきたい」というメッセージが、製品づくりから工場運営、地域連携まで一貫して貫かれているからにほかなりません。
今後も「良い素材」「誠実な開発」「持続可能な社会づくり」という軸のもと、SHIROはさらなる進化を遂げていくことでしょう。そしてその過程で、私たち一人ひとりの「美しさ」や「豊かさ」について、改めて向き合う機会を与えてくれる存在であり続けるに違いありません。