2024年6月18日、北海道各地で猛烈な豪雨が観測され、特に札幌市を中心に1時間に120ミリという記録的な大雨が降りました。これは、気象庁が定義する「非常に激しい雨」（1時間に50～80ミリ程度）をはるかに上回る「猛烈な雨」（1時間に80ミリ以上）にあたり、一般的な都市部では傘の使用がほとんど無意味になるほどの激しい降雨が一気に襲った状況です。
このような局地的な豪雨は、近年全国的な気象傾向として注目されており、北海道のような比較的冷涼で湿潤な気候の地域においても、亜熱帯的な降雨パターンが出現することが増えつつあります。今回の雨も、低気圧や前線の急速な発達、暖かく湿った空気の流入による大気の不安定化が主な原因とみられ、気象庁は早い段階から土砂災害や冠水への警戒を呼びかけていました。
札幌市清田区や厚別区など一部の地域では、短時間に道路が冠水し車両の通行が困難になる事態が起こりました。地元住民からは「道路が川のようになった」「一時的に自宅の前の排水溝から水が溢れた」という声も聞かれ、急な雨への対応がいかに難しいかを物語っています。また、インフラへの影響も出ており、一部の列車が運行見合わせになったほか、市内の数カ所で信号機の一時停止や交通混乱も報告されました。
幸いにも、現時点で大規模な人的被害は報告されていませんが、今後の降雨の推移如何では土砂災害などの二次災害にも十分な注意が求められます。特に北海道では、地形的に急斜面が多く、短時間に大量の雨が降ると地盤の緩みによる崖崩れや地滑りのリスクが一気に高まります。気象庁をはじめとした関係機関は、引き続き情報の収集と注意喚起を強化しており、住民にも最新の気象情報に耳を傾けるよう強く呼びかけています。
このような豪雨は、地球温暖化や気候変動との関連性も指摘されており、これまで「安心できる」と思われていた地域でも同様の気象リスクが存在することを改めて示しています。日本列島は南北に長いため地域差が大きいものの、全国的に見ても「これまでに経験したことのないような雨」が多くの地域で報告されるようになっています。豪雨がもたらす影響は、冠水や土砂災害にとどまらず、生活インフラへの影響、さらには農業や観光といった地元の経済活動にも波及します。
特に北海道では、6月という初夏のほんの入り口段階でこれだけの雨が降るということは、今後本格化する梅雨期や夏本番に向けても非常に警戒が必要であることを示唆しています。例年梅雨の影響が比較的少ないとされる北海道でさえこのような現象が起こるということは、全国的な備えの見直しや対策の強化が求められているとも言えるでしょう。
また、今回の件を受けて、防災の在り方にも注目が集まっています。近年、防災情報はテレビやラジオ、携帯アプリ、SNSなど多様なメディアで提供されており、自ら情報を取捨選択するスキルがますます重要になっています。今回も、気象庁や自治体の発信する情報に基づいて早めの避難行動をとったことで、大きな被害を避けられた地域も多くありました。「いつもの雨だから大丈夫」といった過信が大きな被害を招くことは、これまでの多くの災害でも証明されています。
その点では、小さなお子さんや高齢の方がいる家庭では、日常的に災害時の対応マニュアルを家族間で共有しておくことや、避難所の場所やルートを確認しておくことなど、具体的な準備が重要です。非常用の荷物をあらかじめ準備しておく「防災バッグ」も、定期的に中身を見直し、懐中電灯やバッテリー、水や食品の賞味期限などを確認することが勧められます。
さらに行政においても、都市排水システムの見直しやインフラの強靭化といった中長期的な取り組みに加え、緊急時の情報伝達手段の充実といった即効的な施策も求められます。北海道ほどの人口・面積を持つ道内では、都市部と郊外では状況が大きく異なるため、地域ごとの特性に応じた初動体制や防災教育も欠かせません。
今回の大雨によって、自然の力の大きさと、それに対する備えの重要性を多くの人が再認識する機会となりました。突発的な気象現象に対しては完全な予防は難しいものの、日頃からの危機意識と適切な知識が被害を最小限に抑える大きな力となります。
北海道で起きたこの事例から、私たちはどのように日常生活の中に防災を取り込んでいくべきかを考え直し、未来の災害リスクに備える必要があります。個々人が主体的に行動すること、それが社会全体のレジリエンスを高める第一歩と言えるでしょう。
今後も気象情報を注視しながら、万が一に備えた行動を心がけましょう。備えあれば憂いなし。突然の自然災害に臆することなく、安全で安心な日々を送るために、私たち一人ひとりが小さな準備から始めていきたいものです。
