フィギュアスケート界を牽引してきた実力派選手のひとり、樋口新葉(ひぐち わかば)選手が、2024-2025年シーズンをもって現役引退する意向を明らかにしました。この発表は日本のフィギュアスケート界にとって大きな節目となるニュースであり、多くのファンや関係者の胸にさまざまな感情を呼び起こしています。
本記事では、樋口新葉選手のこれまでの歩みや引退までの思い、そしてフィギュアスケート界に与えた影響についてふれながら、彼女の魅力と功績を振り返ります。
■ 十代から頭角を現した樋口新葉選手
1990年代後半から2000年代初頭にかけて生まれた「ポスト・浅田真央世代」の中でもひと際注目を集めた存在が、樋口新葉選手です。
2001年1月2日、東京都に生まれた彼女は幼少期からフィギュアスケートに親しみ、その並外れた身体能力と音楽表現のセンスで頭角を現します。ジュニア時代から国内外で活躍し、2015年には世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得するなど、早くから「次世代のエース」として期待されてきました。
■ 数々の国際大会で輝いた功績
樋口選手の強みは、スピードと迫力のあるジャンプ、そして楽曲に合わせたダイナミックな表現力です。国内外の大会でもその技術と表現力で高評価を受け、特にフリー演技での強さが印象的でした。
2017年に世界選手権で5位に入賞し、日本女子選手の枠を2枠から3枠に増やす重要な役割を果たしたことも記憶に新しい出来事です。オリンピック代表こそ自身の思い通りには実現しなかった時期もありましたが、それでも彼女の演技は多くの観客に印象深く残りました。
■ 北京五輪出場とその思い
一時期は怪我に悩まされることもありましたが、2022年の北京オリンピックでは待望の五輪代表として出場し、団体戦と個人戦の両方に出場しました。特に団体戦の演技では、緊張の中で持てる力を出し切り、日本代表のメダル獲得に貢献しました。
多くのファンが、そのひたむきな姿勢と思いを込めた演技に感動の涙を流したといいます。樋口選手にとっても五輪出場という大舞台は、競技人生における大きな節目であり、達成感とともに次のステージを模索するきっかけにもなったようです。
■ 選手としての成熟と葛藤
近年、樋口選手は自らの演技スタイルやこれからのキャリアに関して真摯に向き合い、自己表現と技術とのバランス、そして次世代スケーターの台頭に対してどう自分が振る舞うべきか葛藤も経験してきました。
同世代である坂本花織選手や宮原知子選手たちと切磋琢磨する中で、樋口選手は「自分らしさ」という軸を大切にし、常に前向きな挑戦をし続けてきました。その姿は後輩スケーターたちにとっても大きな刺激になっていたことでしょう。
■ 来季限りでの引退を表明
そして、2024年6月に行われたインタビューにおいて、樋口新葉選手は「来シーズンを最後のシーズンとしたい」と述べ、2024-2025シーズンをもって現役を退く意向を明らかにしました。
「最後は自分が納得いく形で終えたい。感謝の気持ちで滑れるような一年にしたい」と語る彼女の口調からは、これまでの競技人生に向き合ってきた真摯な思いや、ファンや支えてくれた人たちへの感謝の気持ちがにじみ出ていました。
この発表を受けて、SNSやファンフォーラムでは惜しむ声とともに、「最後まで応援する」「有終の美を飾ってほしい」といった応援の声が多く寄せられています。
■ 樋口新葉が示したもの
フィギュアスケートという競技は、技術だけでなく精神力・芸術性・継続力など、多くの要素が求められる総合的なスポーツです。そこにおいて樋口選手が示し続けてくれたものは、まさにその「バランスの取れた努力の美しさ」でした。
大きな舞台での成功もあれば、思うようにいかないシーズンもある。それでも彼女は常に前を向いてそれを乗り越えてきました。その姿勢は、アスリートに限らず、さまざまな分野で挑戦する私たちにとっても大きな励ましになります。
■ 最後のシーズンに向けて
樋口選手の引退が予定されている2024-2025年シーズンは、間違いなく注目の的となることでしょう。どの大会でどんな演技を見せてくれるのか、ファンならずとも楽しみにしている方も多いはずです。
彼女のこれまでのキャリアを集大成するシーズンとして、悔いのない滑りができるよう、またその感動が多くの人々に届くよう、温かく見守りたいものです。
■ おわりに
樋口新葉選手のこれまでの活躍は、日本のフィギュアスケート史にしっかりと刻まれています。まだ20代という若さながら、たくさんの試練を乗り越え、常に前向きにチャレンジし続けてきた彼女の姿勢は、多くの人の記憶に残ることでしょう。
そして、引退を表明した今、これまでとはまた違った視点で「樋口新葉」という選手を応援できる時間が残されています。その限られた時間だからこそ、一演技一演技を大切にしながら、惜しみない拍手を送りたい。そんな思いでいっぱいです。
新たな人生のステージへと歩み出そうとしている樋口新葉選手に、心からの敬意と感謝を込めて——。
今後の彼女の活躍と幸せを願いつつ、最後のシーズンも全力で応援していきましょう。