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『ときめきメモリアル』友情を裏切る“仕様”だった?―30年越しに修正された「親友の彼女」バグが問いかける倫理と感情

1994年にコナミから発売された恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』は、今なお多くのファンに愛され続けている名作です。その影響力は大きく、以後の恋愛ゲームの礎を築いたといっても過言ではありません。とりわけ、『ときメモ』の魅力として語られるのは、その緻密な人物描写と恋愛イベントの豊富さ、そしてプレイヤーの選択によって結末が大きく左右されるマルチエンディング形式です。

そんな伝説的作品の一部エピソードが、2024年4月14日付のYahoo!ニュースで改めて注目を集めました。タイトルは「ときメモ修正 親友彼女奪う不具合」というもので、長年ファンにとって半ば“都市伝説”のように語られてきたゲーム内の不具合が、ついに制作者自身の手によって修正されたという内容です。

今回はその内容について詳しくご紹介するとともに、ゲームにおける倫理観や友情、恋愛の線引きについて改めて深く考察していきたいと思います。

■ 親友から“彼女を奪う”仕様がバグだった?

『ときめきメモリアル』のゲーム内では、プレーヤーが複数の女の子たちとの交流を経て、最終的に告白されるか、あるいは振られるかという結末を迎えます。プレイヤーは自由度高く行動を選択できるため、誰とでも仲良くなれる一方で、現実さながらにある種の“トラブル”も起こりえます。

その中で、プレイヤーの親友キャラである早乙女好雄が非常に大事な役割を果たします。彼はゲームのほぼ全編にわたりプレーヤーを支えてくれ、攻略対象となるヒロインたちについてさりげなく情報をくれるなど、まさに「親友」の名にふさわしい存在です。

しかし、長年プレイヤーの間で「なぜか好雄の彼女を奪える」という現象が報告されていました。たとえば、ゲーム終盤で好雄と付き合っていたはずのヒロインが、プレイヤーのもとに告白してくるという展開。これまでこの現象は「そういう仕様」という認識のもとで受け入れられてきました。けれども今回、コナミがこの問題に対して「不具合であり修正した」と明らかにしたことで、大きな話題となったのです。

■ 制作陣による謝罪と修正の意味

コナミの報告によると、この“親友の彼女が自分に告白してくる”という展開は、そもそも想定されたゲーム仕様ではなかったとのこと。ヒロインのステータス管理やフラグ設定の一部に不備があり、好雄と恋愛関係になっていたはずのヒロインが、何らかの形でプレイヤー側にも恋愛感情を持っていると認識されてしまう、という仕組みだったそうです。

本来であれば、好雄と付き合っているヒロインは、一定の条件を満たすことでプレイヤーからのアプローチができなくなる、もしくは告白されることがなくなるというのが正しい動作のはずでした。この間違いはプレイヤーに対してゲーム内での道徳的葛藤を与え、ともすれば“親友の信頼を裏切る”といった行為にも移りかねません。

制作チームは公式に謝罪し、最新の移植版やリメイク版ではこの不具合を修正済みであると発表しました。この誠実な対応に、多くのファンやゲーム業界関係者から「25年以上経っても真摯に向き合う姿勢が素晴らしい」と称賛の声が上がっています。

■ ゲームだから許される? 倫理観を試されたプレイヤー

この話題は単なるバグ修正にとどまらず、ゲームという仮想空間におけるプレイヤーの倫理観を問い直す格好の材料ともなりました。というのも、「システムが許すならば、親友の彼女を奪ってもいいのか?」という根本的な問いに繋がるからです。

現実では到底許されない行為が、ゲームの中でなら可能であるということ。そういった緊張感を楽しむ側面がゲームにはある一方で、多くのプレイヤーが好雄に対して良心の呵責を抱えながらも「どうしてもそのヒロインが好きだった」と葛藤を語っていたりします。これは、実在しないキャラクターに対しても心の中で道徳心が作用する、というゲームならではの現象です。

実際、SNS上でも「たとえ惹かれていても好雄のことを思って身を引いた」「一度親友の彼女にアプローチしてしまって後悔した」といったコメントが多数見受けられました。つまり、多くのプレイヤーはこの“不具合”の存在に気付きながらも、自分なりの答えを出していたのです。

■ 修正後に求められるゲームの在り方

今回の修正により、『ときめきメモリアル』はより倫理的なゲームバランスへと一歩前進したと言えるでしょう。もちろん、ゲームは娯楽であるべきで、現実と同じような道徳観をそのまま適用させる必要はありません。しかし、20年以上愛される作品として、その中に描かれる人間関係もまた、プレイヤーに強い影響を与える存在です。

今後、恋愛シミュレーションゲームがさらに深化していく中で、開発者は「どこにリアルを追求し、どこにファンタジーを残すのか」という線引きにより一層気を配る必要があるのかもしれません。そしてプレイヤー側も、ストーリーや登場人物への理解を深めたうえで、より豊かなプレイ体験を楽しむことができるでしょう。

■ 最後に:友情と恋愛、どちらも大事にしたい『ときメモ』の教訓

今回の「好雄の彼女を奪うバグ」からわかったのは、恋愛ゲームであっても、ただ恋愛だけが物語の主軸ではないということ。ときには友情や信頼といったテーマが、恋愛以上にプレイヤーの心を動かすのです。

『ときめきメモリアル』における好雄の存在は、ただの情報キャラ以上のものがありました。寄り道をした時に聞かせてくれる言葉、悩んだ時にそっと後押ししてくれる態度。そうした細やかな描写があったからこそ、多くのプレイヤーが「彼の気持ちに報いたい」と自然と感じるようになったのでしょう。

ゲームとはいえ、そこに描かれる人間関係が深ければ深いほど、“選ぶ”ことの尊さや難しさが際立ちます。そんな道徳的ジレンマも含めて、やはり『ときメモ』は、ただの恋愛ゲームを超えた名作だったと言えるでしょう。今回のバグ修正は、作品に込められた“友情の重み”を再認識させる良い機会となったのではないでしょうか。

長く愛され続ける名作には、それなりの理由があります。『ときめきメモリアル』は、その世界の中で生きるキャラクターたちが確かな感情と関係を持っていたからこそ、今もなお語り継がれているのです。新たな修正を経て、生まれ変わった『ときメモ』がこれからも多くのプレイヤーにプレイされ、さらに多くの“ときめき”を提供してくれることを期待しています。