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ガソリン法案廃案で問われる「生活者の政治」──税制と国民の声をめぐる現在地

2024年5月末、国会で審議されていた「ガソリン税の暫定税率を下げる法案」(いわゆる“ガソリン法案”)が廃案となる見通しとなり、生活者の負担軽減を期待していた多くの国民にとって残念なニュースとなりました。このような中、国民民主党の玉木雄一郎代表は、自身のTwitter(現X)を通じて「政府は国民の生活の痛みに鈍感だ」と強い言葉で批判しました。この記事では、ガソリン法案をめぐる経緯と玉木氏の発言の背景、そして今回の廃案によって私たちの生活にどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。

ガソリン法案とは何だったのか

今回の「ガソリン法案」は、国民民主党などが提出していた法案で、ガソリン価格の高騰が続く中、従来の「暫定税率」を見直し、ガソリンの価格を抑える措置と位置づけられていました。日本におけるガソリン価格には、いくつかの税金が課されています。例えば、ガソリンには本則税率として1リットル当たり28.7円のガソリン税が課せられており、さらに1970年代の石油危機を背景に一時的に導入された「暫定税率」が今も引き続き適用されているため、その税率は実際には53.8円にも及びます。

この暫定税率は本来、「一時的な措置」として導入されたはずのものですが、50年以上が経った今も続いており、ガソリン価格が高止まりしている要因の一つともされています。国民民主党はこの暫定税率を廃止または引き下げることで、ガソリン価格を1リットルあたり最大で25円程度下げ、生活者や物流業者への経済的な負担を軽減しようという狙いがありました。

玉木代表の発言の背景

玉木雄一郎代表は、一連の動向を受けて「生活を守る一丁目一番地の政策が国会で審議されず廃案にされる。この国は本当に国民の生活を守る気があるのか」とSNSで発言し、今回の結果に強い懸念と失望を示しました。

彼の発言の背景には、物価高が続く中で、特にガソリン価格の上昇が家計を直撃している現実があります。都市部では公共交通網の充実がありますが、地方では車が生活の足という家庭も多く、特に農業や流通、建設など、現場でガソリンを多用する業種にとっては死活問題です。玉木氏のメッセージは、そうした“現場の声”を代弁するかたちで、多くの生活者の共感を呼んでいます。

また、玉木氏は法案提出への詰めが甘かったわけではなく、国民民主党としては継続的に「トリガー条項の発動」や「ガソリン税の見直し」を訴えてきた経緯があります。トリガー条項とは、一定水準以上にガソリン価格が上昇した際に、自動的に税軽減措置が取られる制度です。しかし、東日本大震災後の財政配慮などを理由に、2010年代以降凍結されている状況です。

廃案の影響-私たちへの直結する課題

今回の法案が成立していれば、ガソリン価格は一時的にでも下がり、生活コストの軽減につながる可能性は高かったと見られています。ガソリン代は家庭の交通費だけでなく、物流コストや農機の燃料費などに波及し、最終的には食料品や日用品の価格にも影響します。つまり、ガソリン価格が下がることは、広く国民の生活全体の安定に資することなのです。

また、ガソリンに関わる税制は複雑で、いわゆる「二重課税」といわれる消費税がガソリン税にまで課されているという構造もあることから、より抜本的な改革を求める声は決して少なくありません。ガソリン1リットルにかかる税金の内訳を見れば、国民として税負担の可視化と納得性のある制度設計が必要だという意見には、多くの人がうなずくのではないでしょうか。

海外との比較に学ぶ点

日本におけるガソリン価格は、他の先進国と比べて高い水準にあります。例えばアメリカでは、州によって異なるものの、日本よりも遥かに低い単価でガソリンが販売されています。これは、政府が燃料に対する課税を抑え、産業と生活の基盤として位置付けているためです。

もちろん、エネルギー政策や税制の違いを一概に比較することはできませんが、少なくとも国民の生活に直結する“ガソリン価格”について、もっと議論が深まっても良いのではないかという疑問は残ります。

今後の展望と国民の声

今回、廃案となった「ガソリン法案」ですが、今後、物価高に対する柔軟かつ実効性のある対応策が引き続き求められることは間違いありません。国はガソリン価格を補助金で間接的に抑制する「激変緩和措置」を講じるなど、一定の努力はしています。ですがその補助にも限界があり、そもそもの税制の見直しが行われない限り、根本的な解決にはならないと指摘する声もあります。

同時に、今回の法案廃案を受けて、SNSや各種メディアでは「なにが生活者のための政治なのか?」という問い直しが始まっています。市民一人ひとりが自分の日常生活と政治とのつながりを再認識する機会にもなっています。

まとめ

ガソリン法案の廃案というニュースは、単に「法案が通らなかった」というだけでなく、私たちの生活に直結する課題であることが浮き彫りになりました。日々のニュースの中で、多くの方が「政治は自分たちの暮らしから遠い」と感じるかもしれません。しかし、ガソリン代のように毎日の支出に影響を与える問題は、非常に身近な政治課題です。

今回の件については、賛否があるのと同時に、「生活者が主役となる政治」が真に行われているのかを問い直すきっかけにもなるでしょう。ガソリン法案が廃案となった今、一人ひとりが生活と政治を結びつけ、より良い社会のあり方を考える契機として、今回の出来事を受け止めたいものです。今後も議論が続くことが予想されるガソリン税のあり方について、私たちも日常の中で注目していくことが求められています。