近年、子供の近視が急速に広がり、多くの保護者が子供の視力低下に対して不安を抱えている状況にあります。屋外での遊び時間の減少やスマートフォン、タブレットといったデジタル機器の普及により、小さな子供でも長時間近くを見る生活スタイルになっていることが大きな要因とされています。そのような中、近視の進行を抑える手段として“目薬”の有効性が注目を集めています。
この記事では、Yahoo!ニュースで取り上げられた「子供の近視の進行抑制 目薬の効果」という話題をもとに、近視の基礎知識を交えながら、今注目されている治療法、特に目薬による予防効果について詳しくご紹介します。近視が進行するメカニズムや、保護者ができる日常生活での工夫などにも触れながら、子供の健やかな視力の維持を目指すためのヒントをお届けします。
■ 目の成長とともに進行する子供の近視とは?
子供の近視は、特に学童期に急速に進行することがあります。近視とは、本来網膜にピントが合う光が、目の奥の網膜より手前で像を結んでしまうことで、遠くが見えづらくなる屈折異常です。この原因は、眼軸とよばれる目の奥行きが伸びてしまうことによって引き起こされます。眼軸が一度伸びてしまうと元には戻らないため、進行を予防し、スピードを抑えることがとても重要になります。
■ コロナ禍で加速した子供の近視問題
新型コロナウイルス感染症の流行により、子供達の生活スタイルも大きく変化しました。オンライン学習や自宅で過ごす時間の増加により、これまで以上に長時間近くを見る作業が増加しました。外で遊ぶ時間が減少したことも相まって、近視が進む傾向がさらに顕著になったと報告されています。
このような背景から、視力に関する関心は高まっており、中でも「医療的な予防手段」の一つとして注目されているのが、「アトロピン点眼薬」の使用です。
■ 近視の進行を抑制する目薬「アトロピン」とは?
アトロピンはもともと瞳孔を開かせたり、眼の調整力を弱める作用を持つ薬として使われてきました。強い濃度のものは眼科での検査時に使用されることもありますが、近年では「極めて低濃度のアトロピン点眼薬」が注目されています。具体的には、0.01%という非常に薄い濃度のアトロピンを、子供の目に毎晩一滴点眼することで近視の進行を抑える研究成果が報告されているのです。
厚生労働省によると、すでにアトロピン点眼薬については臨床研究が進められており、日本でも薬事承認に向けた動きが出てきています。実際に各地の眼科医院では、医師の指導のもと、治験などに参加できるケースもあるようです。海外では台湾やシンガポールなどを中心に、低濃度アトロピンの活用が進んでおり、その有効性について科学的な裏付けも蓄積されつつあります。
■ 安全性は?副作用に対する懸念
ご家庭で子供に使用する薬となると、やはり気になるのが安全性です。一般的に高濃度のアトロピンはまぶしさ(光に対する過敏)や手元が見えにくくなるピント調整困難など副作用もあることが知られていますが、0.01%濃度ではそのような副作用は大幅に軽減されているとされています。使用中に赤みや目のかゆみを訴える子供もごく少数いますが、多くの場合、それほど目立った副作用がなく、安全に使えるケースが大半です。
ただし、どのような薬であっても個人差がありますので、必ず医師の診察のうえで使用することが必要です。特に成長期の子供にとっては、医療専門家による継続的な観察が欠かせません。
■ 親ができる近視予防の工夫も大切
目薬による治療も効果が期待されつつありますが、日常生活での意識が最も基本的な近視予防策となります。以下に、家庭で意識したいポイントをいくつかご紹介します。
– 屋外での遊び時間を意識して確保する:太陽の光を適度に浴びることが、近視の進行予防に良い影響を与えると報告されています。
– スマートフォンやタブレットの使用時間を管理する:画面を長時間見続けることは眼精疲労を招き、近視悪化のリスクを高めます。
– 読書や机での学習時は姿勢と明るさに注意する:目と本の距離は30センチ程度を保ち、暗すぎず明るすぎない環境を整えましょう。
– 定期的な目の休憩を促す:「20-20-20ルール」として、20分近くを見たら、20フィート(約6メートル)先を20秒間見るとよいとされています。
■ 今後の展望:薬事承認と普及への期待
現在、日本国内では医療機関の一部でのみ治験や自主的な使用が進められており、保険適用外での自費診療となっています。しかし、近視の進行抑制に対する社会的関心が高まっていることから、薬事承認を含む制度上の進展が今後期待されています。保険適用された場合、多くのご家庭でも医師の指導のもとでより手軽に治療が受けられる可能性が広がります。
また、眼科医院でも今後このような治療への対応が進んでいくことが予想されるため、子供の視力に不安を感じた際には、早めに専門医へ相談することが大切です。
■ まとめ:子供の視力を守るために、できることから
子供の近視は「進行性の病気」として捉える必要があり、単なるメガネ対応では根本的な予防には至りません。日々の生活の中でできる工夫に加えて、科学的エビデンスにもとづいた医療的アプローチが進化している今こそ、家庭と医療が連携して、子供の視力を大切に守っていくことが求められます。
目薬という新たな選択肢は、これからの近視予防に大きな役割を果たすと期待されています。子供たちが健やかに毎日の生活を楽しめるよう、一人ひとりが目と向き合い、今できる予防を始めてみませんか。