2024年〇月〇日(※日付は該当日で調整ください)、神奈川県内を走るJR横浜線の沿線で、いわゆる「撮り鉄」とみられる人物が線路内に立ち入ったことで、1100人以上の乗客に影響が出る騒動が発生しました。この事件は、鉄道ファンの一部による過度な行動が社会に与える影響について、あらためて考えさせられるものです。本記事ではこの出来事の概要と、その背景、そして私たち一人ひとりに求められるマナーと責任について取り上げます。
■ 撮り鉄とは?
まず、「撮り鉄」という言葉について簡単に説明します。「撮り鉄」とは、鉄道趣味の一種で、主に走行中の列車や車両を撮影することを楽しむ人々を指す俗称です。鉄道の美しいデザイン、珍しい車両、特別運行の列車などを求めて、全国各地を訪れシャッターチャンスを狙います。中にはプロのカメラマンもいますが、多くは趣味として楽しむ方々です。
鉄道ファンの世界には、「乗り鉄」「音鉄」「模型鉄」などさまざまな分類がありますが、撮り鉄はその中でも最も視覚的に鉄道を楽しむスタイルの一つと言えます。
■ 線路内への立ち入りという重大な違法行為
今回の事件では、横浜線の踏切付近で線路内に人が立ち入っていると通報があり、一時的に列車の運行が停止されました。そして、その結果として上下線でおよそ25分にわたり複数列車が遅延し、1100人以上の利用客に影響が出ることとなりました。
この立ち入りについて、現場で撮影機材を持った男性が目撃されており、警察は「撮り鉄」愛好家の可能性があると見て調査を進めています。
線路内に無断で入る行為は鉄道営業法や軽犯罪法などに違反する立派な犯罪行為です。安全運行を妨げる行動は、無関係な多くの人々にまで影響を及ぼすことにつながります。たった一人の過ちが、大勢の移動を妨げ、そのうえ鉄道会社や職員に多大な迷惑をかけてしまうことになるのです。
■ 撮り鉄文化とマナーのはざま
もちろん、すべての「撮り鉄」が今回のような行為に出るわけではありません。多くの鉄道ファンはマナーを守って撮影を行い、鉄道に深い愛情と敬意を持っています。ローカル線の撮影にあたっては、地元の方々に迷惑をかけないようルールを設け、地域と共生している例も多く見られます。
問題となるのは、一部の「撮り鉄」たちがエスカレートし、他人や社会の迷惑を顧みずに行動してしまうケースです。たとえば、有名な撮影スポットに集まり、通行の妨げになる場所に三脚を立てたり、田畑に無断で立ち入って農作物を荒らすといったトラブルは過去にも報告されています。また、列車を止めてしまうほどのトラブルとなれば、それは単なるルール違反ではなく、重大な社会問題になり得ます。
鉄道趣味というのは本来、鉄道とそれを取り巻く風景、多くの人々の努力や技術などに感動や感謝を持って接するものです。だからこそ、マナーを守ったうえで、皆が安心して楽しめる環境を維持することが大切です。
■ 鉄道会社や地域住民への配慮を
現在、鉄道各社では撮影者に向けてルールの呼びかけや撮影に適したエリアへの誘導を行うなど、モラル向上のための取り組みを進めています。しかしながら、今回のように鉄道の運行に支障を与えるような重大な行為があると、こうした取り組み自体の継続も危ぶまれかねません。
また、撮影地点の近隣に住まう人々にとっても、大勢のカメラマンの集まりや道路の占拠、大きな声やゴミの放置といった行動は大きなストレスになります。地域に理解される鉄道ファンでいることが、趣味を健全に続けていくためには欠かせない側面です。
今回の事件が鉄道ファン全体のイメージを損なってしまうことを懸念する声も少なくありません。一部の行き過ぎた行動が全体の評価を押し下げてしまうことは、他の善良なファンにとっても悲しいことです。
■ ひとりひとりの意識が社会を変える
今回のJR横浜線での騒動は、「たった一人の軽率な行動」が「大勢の人の足を止める」ことになるという現実を改めて認識させる出来事でした。時間通りに行きたいところへ行けるのは、鉄道が安全に定時で運行されているからこそです。
趣味は楽しむものであり、他人へ危害を加えたり迷惑をかけるべきものではありません。鉄道愛が深いからこそルールを守り、関係者・乗客・地域住民すべてへの配慮が求められます。
これからも多くの人が鉄道という素晴らしい文化に触れ、感動を分かち合っていけるように—ひとりひとりが「自分の行動が周囲に与える影響」を常に意識していくことが、私たち全体の責任です。
どのような分野においても、マナーとモラルを守ってこその「趣味」と言えるのではないでしょうか。
今一度、鉄道ファンとして、また社会の一員としての自覚を持ち、心から鉄道の魅力を楽しめるような姿勢を持ちたいものです。