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制度から外れたふるさと──南幌町除外に揺れる地域の声と再起への決意

ふるさと納税除外に対する地元の声──町長「残念」ににじむ思い

ふるさと納税制度は、地域活性化と地方自治体の財源確保の一助として、日本全国の多くの自治体に利用されてきました。納税者にとっては寄付先を自由に選ぶことで地域応援の気持ちを表す手段となり、地域にとってはその魅力や特産品をアピールしながら財源を確保する重要なツールとなっています。しかし、制度開始から10年以上が経過し、近年では制度の運用を巡って様々な課題や見直しが行われる中、一定の基準に応じない自治体が制度の対象外とされるケースも見受けられるようになっています。

2024年6月、北海道の小さな町・南幌町が「ふるさと納税制度」からの除外対象となったことが発表されました。これを受けて、南幌町の細田君代町長は「大変残念であり、地域の実情を理解してほしかった」と無念の思いを語りました。

南幌町が除外となった主な理由は、返礼品の基準に関連しています。ふるさと納税制度のルールでは、寄付金額に見合わない高額な返礼品や地場産品でない商品が提供されている場合、制度の趣旨から外れるとして、一定の基準に基づきペナルティが課されることとなっています。こうした基準の厳格化は、制度の健全性や公平性を守るために施行されてきたものですが、その一方で地方の実情との乖離も指摘されています。

南幌町では地元産の人気商品「南幌キャベツキムチ」の詰め合わせセットを返礼品として設定していました。ところが、総務省の指摘によれば、その生産や加工における一部が地元以外の地域に依存している可能性があるとのことで、これが「地場産品」要件に抵触すると判断されたようです。

細田町長は、「これまでふるさと納税によって町の魅力をPRでき、町民の自信にもつながっていた」と語り、制度からの除外が町にとって精神的にも経済的にも痛手であることを強調しました。特に南幌町のような小規模自治体にとって、ふるさと納税は単なる財政支援以上の意味を持ちます。移住促進や観光資源の磨き上げ、若者の雇用確保など、ふるさと納税を契機とした好循環が生まれ始めていただけに、その効果が断たれる落胆は大きいものです。

一方で、制度の健全化という視点も無視できません。過去には返礼品競争が過熱し、趣旨から逸れた豪華商品が多く出回ったため、制度全体の信頼性に疑問が呈される場面もありました。こうした背景から、総務省は2019年に制度の見直しを強化し、返礼品は「寄付額の3割以下」、「地場産品に限る」といったルールを明確化しました。これにより地方間の競争が抑制され、本来の「地域応援」という理念に立ち返る動きが進んでいます。

ただし、現場での対応には幅があり、地域によっては地場産品の定義をめぐる解釈に違いが生じる場合もあります。南幌町のキムチも、原材料は町内で生産されたキャベツであり、町にとっては間違いなく地元の誇りであり、生活に根差した商品です。その一部加工が外部で行われていたという事実だけで地場産品ではないとする判断に、町としては納得できない思いもにじみ出ています。

こうした事例が意味するのは、制度運用の「一律化」だけでなく、地元の特徴や事情に即した「柔軟性」の必要性です。地域によっては農産品の加工体制や物流網の制約から、一定の工程を町外で行わざるを得ない事情も少なくありません。そのような場合でも地域が持つ本来の魅力や努力が公平に評価される仕組みが望まれます。

細田町長は、今回の決定に対して改善策を講じ、再び制度対象に復帰できるよう努力を続けると述べています。町としても今後、返礼品の内容や加工方法などを総点検し、国の基準に適合する形で再申請を行う方針です。また、町民や寄付者への説明責任を果たしながら、地域の魅力を発信しつづける意志を堅くされています。

ふるさと納税制度は寄付者、自治体双方にとって価値ある制度となり得ますが、持続可能な制度運用のためには「対話」と「理解」が必要です。単なる数字や書面上の基準に止まるのではなく、地域の熱意や、そこに生きる人々の思いに真摯に耳を傾けることで、よりよい制度改革が成されることを期待します。

私たち寄付者にできることもまた、制度の背景を理解し、応援したい地域やその取り組みを自らの判断で選ぶことにあります。南幌町のように、ふるさとを想い、一生懸命地域づくりに取り組んでいる自治体がある限り、その努力が報われる仕組み、そしてそれを支える民意の存在が何よりも大切なのではないでしょうか。

南幌町の今後の対応と、制度の健全な発展に向けた全国の取り組みに注目しながら、ふるさと納税制度がより多くの人にとって親しみやすく、誠実な形で発展することを願ってやみません。